概要情報
事件名 |
日本ヒルトン外1社 |
事件番号 |
中労委平成23年(不再)第7号・第8号 |
再審査申立人 |
第7号 千代田ユニオン(「組合」)、X1 |
再審査申立人 |
第8号 日本ヒルトン株式会社(「会社」) |
再審査被申立人 |
第8号 千代田ユニオン(「組合」)、X1 |
再審査被申立人 |
第7号 日本ヒルトン株式会社(「会社」)
有限会社春秋サービス(「職業紹介会社」) |
命令年月日 |
平成24年3月7日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、①会社及び職業紹介会社が、会社に配膳人として日々雇用されていた組合員Xの勤務日数(時間数)を減少させたこと(「本件勤務日数(時間数)の減少」)、②会社が、本件勤務日数(時間数)減少に関する団体交渉(「本件団体交渉」)において不誠実な対応をとったこと、③会社が、組合員Xの審問中の言動等から同人を採用できないと記載した書面を初審東京都労働委員会(「東京都労委」)に提出したこと等が不当労働行為であるとして、申立てのあった事件である。
2 初審東京都労委は、上記②について、本件団体交渉における会社の対応は労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、組合員Xの勤務日数時間数)に関する誠実団体交渉の実施、この点に関する文書交付等を命じ、上記①③については申立てを棄却したところ、組合らと会社は、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。
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命令主文 |
本件再審査申立を棄却する。
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判断の要旨 |
1 組合員Xとの関係において、会社は労組法第7条の使用者に当たるが、職業紹介会社は使用者には当たらない。
配膳人である組合員Xと会社の関係は形式的には日々雇用契約の形態であるが、実態としては約5年間にわたって労働関係が継続していたといえるから、会社は組合員Xの雇用主に当たる。また、その時々の就労責任者は、会社に常態的に雇用される従業員としての立場で配膳人の採用や勤務シフトを決定していたといえる。したがって、会社は、組合員X及び各就労責任者の労働契約上の雇用主であり、組合員Xの勤務日数(時間数)の減少に関して、上記就労責任者が組合員Xの採用や勤務シフトを決定しているのであるから、会社は、組合員Xとの関係において労組法第7条の使用者に当たる。
他方、職業紹介会社は、本件勤務日数(時間数)の減少に対して、職業紹介の範囲を超えて、現実的かつ具体的な支配力を及ぼしているとは認められないから、労組法第7条の使用者に当たらない。
2 本件勤務日数(時間数)の減少は、会社による労組法第7条第1号の不当労働行為には当たらない。
組合員Xの勤務日数は、17年11月から18年8月までの時期とそれ以降の時期を比較すると、18年9月以降勤務日数が著しく減少しており、同組合員には不利益が存在する。
会社は19年4月には組合員Xの組合加入の事実を認識していたものであるが、19年4月から12月までの間の勤務日数(勤務時間数)はそれ以前より増加していることから、この時期において、組合員Xの組合加入や組合活動を理由として、組合員Xの勤務日数(時間数)を減少させたと認めることはできない。
20年1月以降の組合員Xの著しい勤務日数(時間数)の減少については、本件団体交渉が継続していた時期であり、当時の就労責任者と組合員Xの間に何らかの確執があったことが窺えるものの、組合員Xがこの時期に具体的な組合活動を行っていたとの証拠等はなく、本件勤務日数(時間数)の減少における不利益が組合員Xの組合活動等を理由とするものとまでみることはできない。
よって、本件勤務日数(時間数)の減少は、労組法第7条第1号に当たらない。
3 本件団体交渉における会社の対応は、労組法第7条第2号の不誠実な団体交渉に当たる。
本件団体交渉が継続している中で、組合員Xの勤務日数(時間数)は更に減少し改善されていなかったところ、会社は、その理由について「業務成績の悪化による全社的な経費の見直しを行っている」と回答するばかりであって、具体的な説明を行わず、組合の資料要求にもかかわらず関連資料を提示しなかった。このような会社の対応は、本件勤務日数(時間数)の減少に関する理由や改善策について真摯な姿勢で必要な説明や関連資料の提出を行ったとはいえず、誠実団体交渉義務を尽くしたとはいえない。
よって、本件団体交渉における会社の対応は、労組法第7条第2号に当たる。
4 本件補充申立書における主張は、労組法第7条第4号の不当労働行為に当たらない。
組合らは、会社が再審査での補充申立書において、「初審の手続において、組合員Xがホテルの宴会等に従事する配膳人としての適格性がないことが明らかになった以上、会社としても、組合員Xを今後就労させることには応じがたい」と主張したことが報復的不利益取扱いであると主張するが、会社の当該主張をもって、組合員Xが労働委員会の調査又は審問の場で、「証拠を提示し、若しくは発言をしたこと」への報復とみることはできない。
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掲載文献 |
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