労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本ヒルトン 
事件番号  都労委平成20年(不)第67号 
申立人  千代田ユニオン、X2 
被申立人  日本ヒルトン株式会社、有限会社春秋サービス 
命令年月日  平成22年12月21日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   申立人組合の組合員である申立人X2は、被申立人会社Y2の紹介を受けて、被申立人会社Yに配膳人として日々雇用されている。本件は、(1) X2の勤務日数ないし勤務時間数が減少したことが不利益取扱いに、(2) 組合とYとの団体交渉におけるYの対応が不誠実な団体交渉に、(3) 本件申立てに係る審問においてなされたX2の質問に対応してYが「ご報告」と題する書証を提出したことが報復的不利益取扱いに、それぞれ当たるか否かが争われた事件である。
 東京都労委は、Yに対し(1) 誠実団交応諾、(2) 文書交付、(3) 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。
命令主文  1 被申立人日本ヒルトン株式会社は、申立人千代田ユニオンが、申立人X2の勤務日数ないし勤務時間数に関する団体交渉を申し入れたときは、必要な資料を提示するなどして、誠実に応じなければならない。
2 被申立人日本ヒルトン株式会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。
年  月  日
千代田ユニオン
委員長 A 殿
日本ヒルトン株式会社
代表取締役 B

 当社が、貴組合員X2氏の勤務日数等に関する団体交渉に誠実に応じなかったことは、不当労働行為であると東京都労働委員会において認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 被申立人日本ヒルトン株式会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。
判断の要旨  1 申立人X2の勤務日数(時間数)が減少したことは不利益取扱いに当たるか。
 平成18年9月から19年12月までについては、17年11月から18年8月までの期間と比べると勤務日数が減少しているが、これは宴会数の増減によるものともみられ、X2に対する意図的な不利益取扱いがあったとまでいうことはできない。また、被申立人会社YやY2が、申立人組合がX2の勤務日数が減少し始めたとしている18年9月頃にX2の組合加入を察知していたとか、同人の組合員としての活動を知り、これを嫌っていたなどとみることはできない。
 20年1月以降については、Yの就労責任者AがX2の配膳人としての適性に疑問をもって同人の紹介の優先順位を下げたことは十分考えられ、また、X2が組合員であることを理由にAが勤務日数を減らしたとの証左は見当たらない。さらに、Yは団体交渉の中でX2の勤務日数を改善したいとの意向を示し、20年6月頃にはY2の常務Bに対して要請しており、そのような中で紹介会社である同社がX2の組合加入及び組合活動を嫌って同人の勤務日数を減らす動機も考え難い。
 以上によれば、X2の勤務日数の減少が合理的な理由に基づくものであるか否かについては明らかではないものの、それが同人の組合加入ないし組合活動を理由とするものであるとは認められないから、その余について判断するまでもなく、不当労働行為に当たるということはできない。
2 団体交渉におけるYの対応は、不誠実な団体交渉に当たるか。
 X2の勤務シフトを組んでいたのは、YがY2から紹介を受けて常勤的な形態で雇用している就労責任者であり、Yはその業務に積極的に関与していない実態があるとしても、就労責任者に対して指揮監督権限を有している。また、Yの宴会サービス支配人Cは特定の配膳人を紹介から外すようにY2に要望することもあり、Yの宴会サービス部門は配膳人の採用について一定の支配力を有しているとみられる。したがって、X2の勤務シフトの決定について、Yは使用者として団体交渉に応ずべき立場にあったというべきである。
 Yは、X2の勤務日数が減少した原因について、組合の求めにもかかわらず、業務成績悪化を示す具体的資料やシフト区分別の勤務実績の資料を示さなかった。経営状況に関するについては、内容を工夫したり、取扱いについて組合と何らかの合意を図るなどして経営に悪影響が及ばない形で資料を提示することは十分可能であり、配膳人の勤務実績については同社が算出できないことが事実であったとしても何らかの根拠資料を提示することは可能であったというべきである。
 したがって、自らの主張を根拠づける資料を提示しなかったYの交渉態度は、誠実さを欠いていたと評価されてもやむを得ない。
3 「ご報告」の提出は、報復的な不利益取扱いに当たるか。
 YがX2を採用することができない旨を記載した「ご報告」の提出は、同人の「Y2から紹介があれば、私の就労を拒まないか」との質問に係る事態を仮定した場合におけるYの対応について記載した書証を提出したにとどまるものであり、報復的不利益取扱いに当たるとまでいうことはできない。
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成23年(不再)第7号・第8号 棄却 平成24年3月7日
 
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