労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  西日本旅客鉄道(福知山駅訓告処分等) 
事件番号  中労委平成22年(不再)第62号 
再審査申立人  国鉄労働組合(「国労」)の組合員X 
再審査被申立人  西日本旅客鉄道株式会社(「会社」) 
命令年月日  平成24年3月7日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   会社のXに対する次の行為が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
① 18年度から20年度までの就業時間中の国労バッジの着用(本件バッジ着用)を理由として、19年3月29日付け、20年3月31日付けおよび21年3月27日付けで訓告に付したこと(「本件訓告」)。
② 本件訓告に伴い19年6月29日、20年6月30日および21年6月30日支給の夏季手当を減額して支給したこと(「本件夏季手当減額」)。
③ 「勤務成績が良好でない人」に該当することを理由として、19年12月10日支給の年末手当(「本件年末手当」)を減額して支給したこと(本件年末手当減額)。
④ 勤務成績が不良であることを理由として、19年4月1日、20年4月1日および21年4月1日の定期昇給の仕事給昇給の評価をD評価としたこと(本件定期昇給D評価)。
 初審京都府労委は、本件救済申立てを棄却したところ、Xは再審査を申し立てた。  
命令主文  再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 本件訓告および本件夏季手当減額(本件訓告処分等)は、労働組合法第7条第1号、第3号および第4号の不当労働行為に当たるか。
ア 職務専念義務や就業時間中の組合活動禁止を定めた就業規則上の規定は一般的に合理性を有し、組合員が就業時間中に組合活動として組合バッジを着用する行為は、原則として正当性を否定され得る。ただし、やむを得ない組合活動として必要性が認められ、かつ、使用者の業務を阻害するおそれのない行動もあり得ないわけではなく、認めるべき特段の事情が存在する場合には、正当性を否定すべきではない。また、就業規則上の服装の整正の規定についても、使用者が経営上の抽象的な必要性に基づき従業員の服装の規制を行うことは合理性が認められるが、同規定に抵触するようにみえる組合バッジ着用行為も、やむを得ない組合活動として必要性が認められ、かつ、服装整正の規律違反を問うことが不合理であると認めるべき特段の事情が存在する場合には、例外的に、同規定に違反するものとして正当性を否定すべきではない。
イ 会社における職務専念義務や服装整正に関する就業規則が上記のような一般的な合理性に加えて、国鉄改革の経緯から特別の経営上の必要性を有していたこと、本件バッジ着用行為は、個人の考え方に基づく個人の活動や独自の意思表示行為としての性格が強く、組合活動としての保護の必要性が乏しいことを併せ考慮すれば、本件バッジ着用行為について、上記会社の就業規則の規定に違反するものとして正当性を否定すべきでない特段の事情を認めることはできない。従って、本件バッジ着用は労働組合の正当な行為とみることはできない。
 会社が組合バッジ着用の違反に対する処分量定を厳重注意から訓告に加重に変更したことには相応の経営上の合理性・必要性が認められ、変更手続も慎重に行われている。また、具体的な処分の運用に当たっては、著しい不利益にならないよう配慮をした取扱いを行っており、さらに、組合バッジ着用違反を繰り返しても、漸次処分を加重するなどの措置もとっていない。以上のことからすれば、本件バッジ着用行為に対して、会社が本件訓告等に付したことは、相当性の範囲を超えたものとは言えない。また、本件訓告等は、Xら反執行部活動を行う少数グループを弱体化させるために行ったものとも認められない。また、さらに過去に行った救済申立てを理由とするものでないことも明らかである。
 以上を総合すれば、本件訓告処分等は不当労働行為に当たらない。
2 Xに対する年末手当の減額(本件年末手当減額)や定期昇給の仕事給昇給の評価を低評価としたこと(本件定期昇給D評価)は、労働組合法第7条第1号、第3号および第4号の不当労働行為に当たるか。
 本件年末手当減額や本件定期昇給D評価となった理由として、会社が挙げた本件バッジ着用行為、信号業務の取扱い、知識不足などの事由にはいずれも相応の理由がある。本件バッジ着用行為は、上記のとおり、正当な組合活動として保護すべき必要性は乏しく、また、仮にXが反執行部活動を行っていたとしても、Xのそのような組合活動の故をもって、会社がXに対し不利益を与えたり、Xのそのような組合活動に対し介入したとの事情はうかがえない。さらに、別件救済申立ては、不当労働行為には当たらないとされ、確定している。
 以上を総合すれば、本件年末手当減額および本件定期昇給D評価は不当労働行為に当たらない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
京労委平成20年(不)第3号 棄却 平成22年11月2日
 
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