労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  松蔭学園 
事件番号  中労委平成23年(不再)第2号 
再審査申立人  学校法人松蔭学園(「学園」) 
再審査被申立人  松蔭学園教職員組合(「組合」) 
命令年月日  平成24年1月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   学園の次の行為が不当労働行為であるとして、組合が救済申立てを行った事件である。
① X1、X2及びX3に対し、平成15年度から20年度までの間、非組合員と比べて低額の給与を支給したこと。
② X1、X2及びX3に対し、平成15年度から20年度までの間、非組合員と比べて低い支給月数により、賞与を支給したこと。
③ X1及びX2に対し、平成21年9月4日に是正される以前の給与月額に基づいて退職金を支払い、是正後の給与月額に基づいた退職金との差額を支払わなかったこと。
 初審東京都労委は、①~③のいずれも不当労働行為に当たるとして、給与、賞与及び退職金について、本来支給されるべき額と既払額との差額に年5分の割合による金員を付加して支払うよう命じたところ、学園は、再審査を申し立てた。  
命令主文   中央労働委員会は、本件再審査申立てには理由がないものの、初審命令交付後の事情変更にかんがみ、初審命令主文を変更し、本件再審査申立てを棄却した。  
判断の要旨  1 給与について
 平成15年度ないし20年度の給与の支給において、X1ら3名は大きな不利益を受けていたことが認められるが、同人らの勤務成績が非組合員に比べて劣っていたとは認められず、この大きな不利益の理由は、学園が組合や組合員を一貫して嫌悪していたからであると考えられる。そうすると、学園が、X1ら3名に対し、平成15年度から20年度までの間、非組合員と比べて低額の給与を支給したことは、同人らが組合の組合員であったことを理由とする不利益取扱いであるといえ、これを労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとした初審命令は相当である。
2 賞与について
 学園が、X1ら3名に対し、平成21年9月4日の是正時点で支払っていた賞与の支給月数は、本来支給されるべき月数と比べて、すべての年度で下回っており、多い年度では0.7か月分(約27万円~28万円)の格差が生じていた。そして、本来支給されるべき月数の年度平均と比べても、平成15年度ないし17年度は0.3か月分(約11~12万円)、平成18年度ないし20年度は0.4か月分(約16~17万円)低い賞与が支給されていた。したがって、X1ら3名に対しては、非組合員と比べて、相当程度低い賞与が支給されていたものといわざるを得ない。
 X1ら3名の勤務成績が非組合員と比べて劣っていたとは認められないこと、本件労使関係が厳しく対立し、学園が組合や組合員を嫌悪していたと認められることにかんがみれば、学園が、X1ら3名に対し、平成15年度から20年度までの間、本来支給されるべき支給月数より相当程度低い支給月数により賞与を支給していたことは、同人らが組合の組合員であることを理由とする不利益取扱いであると考えざるを得ず、これを労働組合法第7条第1号の不当労働行為であるとした初審命令は結論において相当である。
3 退職金について
 X1及びX2は、給与の差別がなければ、平成21年9月4日に是正された後の給与月額に基づき算出された退職金を受け取るはずであったところ、学園は、是正前の給与月額に基づいて退職金を支払い、その後も是正後の給与月額に基づいた退職金との差額を支払わなかった。本件労使関係が厳しく対立し、学園が組合や組合員を嫌悪していたと認められることにかんがみれば、これは、学園の不当労働行為意思に基づくものと考えざるを得ず、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当する。
 なお、労働委員会が、退職金について、是正後の給与月額に基づき算出された額と支払済みの額との差額相当額のバックペイを、原状回復措置として命じることは、その裁量権の範囲内に属するものであり、何ら問題となるものではない。
4 救済方法について
 当委員会も、本件の不当労働行為に対して、初審命令が命じた救済は適切であると思料する。ただし、初審命令交付後の平成23年1月19日、学園が初審命令が命じたとおりに賞与及び退職金の差額部分について支給を行ったため、本件においては、給与だけではなく、賞与及び退職金についても、事実上、年5分の割合により付加して支払う金員に係る部分を除いて精算が終了しているといえる。したがって、賞与及び退職金については、それぞれ、初審命令が支払を命じた額から、平成23年1月19日の支給額を、同日を基準として控除した上で支払うことを命じるものとする。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成17年(不)第22号、18年(不)第36号、19年(不)第18号、20年(不)第24号、21年(不)第17号 全部救済 平成22年12月7日
 
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