労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  松蔭学園 
事件番号  都労委平成17年(不)第22号、18年(不)第36号、19年(不)第18号、20年(不)第24号、21年(不)第17号 
申立人  松蔭学園教職員組合、X1、X2、X3 
被申立人  学校法人松蔭学園 
命令年月日  平成22年12月7日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人は、同法人に対し申立人X1ら3名に係る平成7年度から14年度までの給与引上げ及び一時金支給差別の是正並びに是正差額の支払(年5分の金員付加)を命じた中労委の平成19年8月1日付け救済命令が21年2月12日に確定した後、15年度から20年度までの給与及び一時金についても同命令を踏まえて計算した是正後の額と既に支払った額との差額を同年9月4日に支払った。しかし、法人はその際、付加金を差額に算入しておらず、また、一時金の額については年間支給月数を15~17年度は4.1か月、18~20年度は4.0か月として算出していた。さらに、法人は17年度末、19年度末でそれぞれ定年退職したX2及びX3に対して支給した退職金について、上記命令による是正後の給与に基づく退職金額との差額を支払っていなかった。
 本件は、(1) X1ら3名に対し、15年度から20年度までの間の給与及び賞与の支給に当たって、非組合員よりも不利益に取り扱っているか否か、(2) X2ら2名の退職金について、法人が同人らの給与が是正される以前の給与に基づいて支払い、是正後の給与に基づいた退職金との差額を支払わないことは不利益取扱いに当たるか、が争われた事案である。
  東京都労委は、法人に対し(1) X1ら3名に係る給与の差額についての年5分の割合による付加金の支払い、(2) 同3名の賞与に係る差額及びこれについての付加金の支払い、(3) X2ら2名の退職金について是正給与額に基づき再計算した額と既に支給した額との差額及びこれについての付加金の支払い、(4) 文書の交付、(5) 履行報告を命じた。
命令主文  1 被申立人学校法人松蔭学園は、申立人X2、同X3及び同X1の給与及び賞与について、次の措置を採らなければならない。
(1) X2の平成15年度ないし17年度の給与、X3の15年度ないし19年度の給与及びX1の15年度ないし20年度の給与について、「表」記載の給与月額と同人らに既に支払った給与額との差額に年5分の割合による金員を付加した金額から、被申立人学園が同人らに対して行った仮支給及び差額支給の金額を仮支給及び差額支給の日を基準として控除した上で支払うこと。
(2) X2の15年度ないし17年度の賞与、X3の15年度ないし19年度の賞与及びX1の15年度ないし20年度の賞与について、各年度とも「表」記載の給与月額を基に、年間賞与月数を4.3か月支給したものとして取り扱い、既に支給された賞与との各差額及び各差額に対する年5分の割合による金員を支払うこと。
2 被申立人学園は、申立人X2及び同X3の退職金について、それぞれ是正された「表」記載の給与月額に基づいて再計算した退職金と、既に支給した退職金との差額及びこれに対する年5分の割合による金員を支払わなければならない。
3 被申立人学園は、申立人らに対し、本命令受領の日から1週間以内に、以下の内容の文書を交付しなければならない。
平成 年 月  日
松蔭学園教職員組合
執行委員長 X1 殿
X2 殿
X3 殿
X1 殿
学校法人松蔭学園
理事長 A

 平成15年度ないし20年度の間において、当学園が貴組合の組合員X2氏、同X3氏及び同X1に対し、低額な給与を支給し、賞与を支給せず又は低額な賞与を支給したこと、並びにX2氏及びX3氏に対し、低額な退職金を支給し、これを是正しなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は交付した日を記載すること。)

4 被申立人学園は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。

「表」 (略) 
判断の要旨  1 給与に係る差別の有無について
 本件労使は、昭和55年の組合結成以来、常に対立した関係にあるということができ、17年7月の東京地裁での和解後も法人が組合ないし組合員を一貫して嫌悪していることの現れといえる事実がみられる。法人が19年8月1日付けの中労委命令が確定する前に申立人X1ら3名に対して支払った給与の額と同命令の確定後、その内容を踏まえて是正した給与の額との差額は、上記のとおり、組合員を嫌悪するが故の差別に基づくものというほかない。したがって、法人がX1らに対して非組合員と比較して低額の給与を支給したことは、組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるといわざるを得ない。
2 賞与に係る差別の有無について
 15年度から19年度までの間、非組合員の年間賞与の平均月数は4.6か月から4.1か月の間であったことから、非組合員には多少の多寡はあるものの、概ね4.3か月の賞与が支給されていたと推認することができる。一方、組合員については、一部是正措置が採られた結果の4.1か月ないし4.0か月であるので、0.2か月分ないし0.3か月分の格差が認められる。この格差は、組合員の勤務成績が平均を下回っていることについて、法人が具体的な主張も疎明も行っていないことからすれば、前記1のとおり、組合ないし組合員を一貫して嫌悪していたが故の差別に基づくものと考えざるを得ない。20年度のX1の賞与についても同様に、年間0.3か月の差別を受けていたと考えるのが相当である。
3 X2及びX3の退職金について
 X2及びX3が、組合員に対する差別がなかったとした場合の給与額を基礎として計算された退職金と実際に支給された退職金との差額を支給されず、その後も是正されなかったことは、前記1の不当労働行為意思に基づくものと考えざるを得ないから、同人らが組合員であることを理由とした不利益取扱いに該当することは明らかである。
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成23年(不再)第2号 棄却 平成24年1月18日
 
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