労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  吉富建設外1者 
事件番号  中労委平成23年(不再)第4号 
再審査申立人  吉富建設株式会社(「会社」) 
再審査被申立人  北摂地域労働組合(「組合」) 
命令年月日  平成23年12月7日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   組合が会社に対し、飲食店Aに就労していた組合員3名に対する未払賃金の支払等を議題とする団体交渉を申し入れたところ、会社が、組合員3名との間に雇用関係がないとして応じなかったことが不当労働行為に該当するとして救済申立てがあった事件である。
 初審大阪府労委は、会社は組合員3名の労組法上の使用者であるとした上で、会社に対し、①団体交渉応諾、②文書手交を命じたところ、会社は再審査を申し立てた。  
命令主文   本件再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 会社は、組合員Xら3名との関係において労組法第7条の使用者に該当する。

ア 組合員Xと会社の関係:実質的に雇用関係が成立していたと解される。
(ア) 組合員XがA店舗で就労するに至った経緯をみると、会社社長は組合員Xに対し「(店を)やってくれへんか」などと述べ、組合員XとのA店舗に係る契約の交渉等を会社の従業員で収益部門のマネージャーに委ね、マネージャーが交渉等を行った。当交渉の経過の中で組合員XはA店舗を引き受ける旨述べていることから、組合員XがA店舗を引き受けることについての合意が成立していたといえる。
(イ) A店舗の開店の状況等についてみると、マネージャーは、組合員Xに対し、A店舗の売上高等を記載した日報の提出を求めたり、収支管理表を作成するなどして営業状況の把握や、売上高の出入金の管理を行い、また社長も売上高等の報告を組合員Xと電子メールでやりとりしていた。このことから、会社はA店舗を管理し、自己の計算に基づいて事業を営む者であるというべきである。加えて、マネージャーは組合員Xとの上記交渉の中で組合員Xの給料に言及しており、これらを併せ考えれば、会社がA店舗の経営者であり、組合員XはA店舗の店長という立場で就労する旨の合意が当事者間で成立していたとみるのが相当である。
(ウ) 組合員Xの就労状況等についてみると、組合員Xは、A店舗の開店準備段階から閉店に至る段階において、マネージャーから売上高等の報告を求められ、マネージャーがA店舗の収支管理を行っていた。また、マネージャーは、組合員Xら3名分の給料を組合員Xの口座に振り込んだり、社会保険加入に言及しており、組合員Xら3名のタイムカードも存在していた。このことから、A店舗の業務運営は会社の指揮監督下にあったとみるのが相当であり、また、組合員Xら3名はA店舗の従業員として就労していたものであり、その賃金等の労働条件は会社が決定していたということができる。
(エ) 以上からすると、組合員Xら3名は、会社の指揮監督の下で労働力を提供し、これに対する報酬として賃金を受領していたとみるべきである。そうすると、本件においては、組合員Xと会社との間には、契約書等は存在しないが、上記合意に基づき実質的に雇用関係が成立していたと解するのが相当である。

イ 他の2組合員と会社の関係:組合員Xの場合と同様に雇用関係が成立していたと解される。
 上記アのとおりA店舗の業務運営は会社の指揮監督下にあったといえる。また、両組合員の就労に至る経緯をみても、組合員Xの知人等の紹介で両組合員は就労するに至ったが、組合員Xは採用についてマネージャーの指示の下で店内スタッフの募集等を進めており、マネージャーはこれを容認していたというべきであり、両組合員と会社との間には組合員Xの場合と同様に雇用関係が成立していたと解するのが相当である。

ウ 会社の使用者性:労組法第7条の使用者に該当する。
 上記ア、イのとおり、組合員Xら3名と会社との間には、雇用関係が成立していたと解するのが相当であり、会社は組合員Xら3名との関係において労組法第7条の使用者に該当する。

2 組合の団交申入れに対する会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。

 組合員Xら3名に対する未払賃金の支払い要求等について、会社は、組合員Xら3名と会社との間には雇用関係がなく団体交渉の相手方ではない、として団体交渉に応じなかった。
 上記1のとおり、会社は組合員Xら3名との関係において、労組法第7条の使用者に該当するものであるから、会社は団体交渉申入れに応ずべき立場にあり、会社の対応には正当な理由がなく不当労働行為に当たる。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成21年(不)第35号 一部救済 平成23年1月25日
 
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