労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成21年(不)第35号 
事件番号  大阪府労委平成21年(不)第35号 
申立人  X労働組合 
被申立人  Y株式会社、C(Y株式会社賃貸収益部門マネージャー) 
命令年月日  平成23年1月25日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   申立人組合の組合員Eら3名は被申立人会社の所有する飲食店店舗Zにおいて平成21年3月1日から5月16日(閉店日)までの間、業務を行った。
 本件は、閉店後、組合が申し入れたEら3名に対する未払賃金の支払い等を議題とする団体交渉に、会社が同人らとの間には雇用関係がないとして応じないことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、被申立人Cに対する申立てを却下し、被申立人会社に対し団交応諾及び文書手交を命じた。
命令主文  1 被申立人Cに対する申立てを棄却する。
2 被申立人Y株式会社は、申立人が平成21年5月22日及び同年6月4日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。
3 被申立人Y株式会社は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 X労働組合
  執行委員長 A 様
Y株式会社   
代表取締役 B

 当社が、貴組合が平成21年5月22日及び同年6月4日付けで申し入れた団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨  1 被申立人らは、組合員Eら3名の労組法上の使用者であるか。
 申立人組合は、被申立人会社及び同社の賃貸収益部門マネージャーであるCの両者がEら3名の使用者である旨主張する。しかし、CのZに係る諸々の言動は会社の社員として社長の意向に従って行ったにすぎないとみるのが相当である。したがって、Cは会社から独立した当事者であるということはできず、同人に係る申立ては却下する。
 Eと会社との関係については、Zの業務開始前の平成21年2月9日頃に両者の間でEがZを引き受けることについての合意が成立していたとみることができる。この合意について、会社は、Eは社長からZの店舗を賃借していた申立外Dから転借を受ける形でZの経営者となったものである旨主張する。しかし、社長とDとの間でZ店舗の賃貸借契約があったとする会社の主張は採用できず、また、DがZの営業許可を持っていたこと等は事実として認められるものの、Dが実質的にZの営業に何らかの形で関与していた事実は疎明されていない。さらに、後述のとおり、Eが経営者であることと相容れない事実が存在する。以上のことから、上記の合意がEがDからZの転借を受ける形でZの経営者となる旨の合意であったということはできない。
 次に、Eと会社との間で雇用契約が成立していたかどうかについては、①Zの業務開始に先立って、会社とEとの間では、Zの運営が会社の監督下で行われることが了解されていたこと、②Zの出入金管理が実質的に会社の監督下にあったこと、③会社がEの労働条件の決定に関与し得る立場にあったこと、④会社がEら3名に支払う給料として60万円をEの口座に振り込んだこと、⑤Eと会社がZの業務の進め方についての打合せを会社本社において2週間に1回以上の頻度で行っていたこと、⑥EがZの売上金の入金、日報の会社への送信及び売上高等の電子メールによる社長への報告を会社の指示を受けて実行していたこと、が認められるから、Eが会社に労働を提供し、会社が同人にその対価として賃金を支払っており、会社とEとの間で成立していた合意により、実質的に両者の間には雇用契約が成立していたことが強く推認される。
 他の組合員2名と会社との関係については、両名の採用は直接にはEが知人を通じて行ったということができるものの、当該採用はCの指示を受けて行ったものと認められるから、両名と会社との間には実質的に雇用契約が成立していたことが強く推認される。
 以上のとおり、Eら3名と会社との間に雇用契約が成立することが強く推認されるのであり、少なくとも、組合申入れの団交議題である「未払賃金、交通費及び解雇予告手当の支払等」について、会社はEら3名の労働条件を現実的かつ具体的に決定することができる地位にあるとみるのが相当であるから、この限りにおいて、会社はEら3名の労組法上の使用者であると解するのが相当である。
2 団交申入れに対する被申立人らの対応は、不当労働行為に当たるか。
 会社がEら3名の労組法上の使用者であることは前記判断のとおりであるから、会社にEら3名に対する未払賃金、交通費及び解雇予告手当の支払等を議題とする組合との団交に応じる義務があることは明らかであり、同時に会社には団交に応じない正当な理由はなく、よって、会社が組合からの団交申入れに応じなかったことは労組法7条2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成23年(不再)第4号 棄却 平成23年12月7日
 
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