労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  福岡市 
事件番号  福岡労委平成23年(不)第2号 
申立人  アミカス嘱託職員ユニオン 
被申立人  福岡市 
命令年月日  平成23年12月22日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   ①被申立人市が、市男女共同参画推進センター・アミカスに勤務する嘱託職員のうち、1年ごとの任用を4回更新し、平成23年3月31日をもって任用期間が終了する者を対象として内部選考(特別選考)を実施した結果、申立人組合の組合員3名を不合格とし、同日付けで退職扱いとしたこと、②組合が申し入れた団交の開催前に嘱託員の一般公募を行ったことなど特別選考の合否決定後の市の対応は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 福岡県労委は、申立てを棄却した。  
命令主文  本件申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 被申立人市が特別選考において組合員3名を不合格とし、平成23年4月以降任用しなかったことについて
(1)組合員について特段の非がなければ全員を合格させる旨の黙示の合意の有無について
 申立人組合は市の市民局長Y2らの発言を列挙し、これらを根拠として黙示の合意があったと主張するが、Y2らの発言からそのような合意の存在を推認することは困難である。また、Y2が組合の特別執行委員X2らに対し、特別選考は客観的な試験であり受験者全員の合格を前提としたものではない旨発言していることからしても、市が「特段の非がない限り全員雇用を継続する」との意思を有していなかったことは明らかである。したがって、上記のような黙示の合意があったと認めることはできない。
(2)特別選考の実施方法について
 本件特別選考について市が定めた試験の実施方法に特に不合理な点は認められない。
(3)特別選考の合否判定について
 組合は、小論文の解答や面接での対応について不合格とされた組合員と合格者との間に優劣の差はなく、判定は不合理である旨主張するが、試験の合否は実施機関である市の合理的な判断に委ねられているものであって、前記のとおり実施方法に特に不合理な点は認められず、合否の判定もその実施方法に沿って行われたことが認められるから、市による合否の判定が不合理であるとはいえない。
(4)組合員に対する嫌悪意思について
 組合は、任用の更新回数制限の撤廃をめぐって、市と組合とは長期間にわたって対立関係にあり、その間、市が前進のない回答をしたり、半年間団交に応じないことがあったりして、市は組合の存在を事実上否定していたとして、市が組合を嫌悪していた旨主張する。しかし、市には必ずしも組合の要求を受け入れる義務があるわけではなく、要求に応じないことのみをもって直ちに市が組合を嫌悪していたと認めることはできない。また、市が不合格の3名を特に嫌悪していたこと、若しくは組合員を差別していたことをうかがわせる事実も認められない。したがって、市の組合又は組合員に対する嫌悪意思は認められない。
(5)結論
 以上のとおりであるから、市が特別選考において組合員3名を不合格とし、23年4月以降任用しなかったことは、不利益取扱いには該当しない。
2 市の行為は、団交拒否又は不誠実団交に該当するか。
(1)特別選考結果の通知及び組合への連絡について
 市が特別選考の合否を決定してから3日後に、受験者に対する通知の発送及び組合への連絡を行ったことは、意図的な遅延行為と見ることはできず、また、そのことによって組合が団交の機会を実質的に奪われたと見ることもできないから、不誠実とは認められない。
(2)団交開催前の公募の開始について
 市が、結果的に組合と団交を行う前に市政だよりに嘱託員募集記事を掲載したことには相応の理由があったというべきであり、団交に応じた上で公募に取りかかるべき信義則上の義務があったとする組合の主張を認めることはできない。
(3)市民局長Y2及び同局男女共同参画課長Y3が団交に出席しなかったことについて
 Y2が22年12月25日の団交に出席しなかったことには相応の理由があったと認められ、また、出席しなかったことをもって同日の交渉に支障を来したとの具体的事情もうかがえないから、市がY2を出席させなかったことをもって直ちに不誠実な対応であったとはいえない。Y3を23年1月に開催された2回の団交に出席させなかったことについても、不誠実な対応であったとはいえない。
(4)団交における特別選考の選考過程と選考基準の説明について
 本件特別選考のような試験における受験者個人の評定点数などを明らかにすることは、以後行われる同種の試験における受験者に対する評価、判断を公正かつ適正に行うことを困難にするおそれや試験の実施機関と評価、判断を行う者との信頼関係を損なうことによって以後の同種試験の円滑な実施に支障が生じるおそれがあると考えられるところであり、市が、受験者各人の評定点数などの具体的な評価部分の開示を拒否したことには相応の理由があったと見るべきである。また、市は団交において組合の要求に応じ、評定項目や評定方法、4段階判定区分の表などを資料として配付した上で、選考委員会による合議において合否判定を行ったことなどについて説明するなど、可能な範囲で具体的な説明をしたことが認められる。以上のことからすると、特別選考における選考基準及び合否判定までの選考過程をすべて明らかにすべきであるとの組合の要求に対する市の団交での対応は、不誠実とはいえない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成24年(不再)第3号 棄却 平成25年6月19日
 
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