労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  健進会 
事件番号  中労委平成21年(不再)第44号 
再審査申立人  医療法人健進会(「法人」) 
再審査被申立人  河内合同労働組合(「組合」) 
命令年月日  平成23年11月16日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   法人が、(1)法人の理事ら及び八尾北労組の組合員らによる20年9月9日以降の一連の話合いにおいて、組合員Xに対し、組合からの脱退を強要するなどの言動を行い、それにより体調をくずさせ出勤できない状態にしたこと、(2)組合員Xの労働条件や嫌がらせの防止等に関する同年9月9日付け団交申入れに応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
 初審大阪府労委は、上記(1)の法人の理事らの言動のうち9月10日、同月17日及び18日の話合いにおける言動、及び上記(2)の団交に応じなかったことは不当労働行為に当たるとして、法人に対し、①組合員Xに対する精神的苦痛の付与及び脱退強要の禁止、②団交応諾、③文書手交を命じたところ、法人は、再審査を申し立てた。

(注)  法人には、その主要施設である八尾北医療センターの職員で組織する申立外八尾北医療センター労働組合(八尾北労組)が存在する。同センターの土地と建物は、市から無償貸与を受けている。  
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 20年9月10日、同月17日及び18日の話合いにおける法人の理事ら及び八尾北労組の一連の言動(本件言動)が法人の行為といえるか。

ア 20年9月9日以降の一連の話合いは、市による八尾北医療センターの有償譲渡に反対する取組みなどを行っていた八尾北労組によって、Xの同労組からの脱退、組合への加入、組合による法人に対する団交申入れが同労組の団結に支障を与えるとの危惧から、その団結維持のため行われたという性格があり、確かに9月10日、17日及び18日の話合いは、組合との「労労問題」のなかで同労組の活動として行われた側面を有する。
イ しかしながら、
(ア)  9月10日及び17日の話合いには、Y1とY2の両理事が参加し、9月9日付け団交申入書を示して「理事会では認められない」などと理事の立場での発言を行っている。
(イ)  両理事は、八尾北労組の組合員とともにXに対し同労組脱退や組合加入を糾弾するなど、9月9日以降の一連の話合いに同労組と一体の立場で共同して行動していた。
(ウ)  翻って法人と八尾北労組の関係をみると、法人は従前から機関の構成員(理事5名中、法人の社員でもある両理事を含む4名)が同労組に加入し、同労組と組織的に緊密な関係にあって、その運営につき同労組と一体的関係にあったことが推認される。また、八尾北医療センターの有償譲渡の問題につき、同センターの無償貸与を受けていた法人にとって、それを阻止したいという点で同労組と利害が一致し、同一の立場に立っていたと推認される。
(エ)  一連の話合いはいずれも法人の施設で行われ、9月17日及び18日の話合いは勤務時間に相当食い込んだが、法人は話合いに参加した職員に対し、就業規則上の訓戒等や注意をした事実は窺えない。
(オ)  確かに、両理事の発言の多くは八尾北労組の団結に関するもので、両理事が同労組の組合員の立場から参加した側面があったことは否定できないが上記(ア)からは法人の理事の立場でも参加したことは確かであり、上記(イ)及び(ウ)からすれば、両理事は理事の立場からも、同労組と共同して9月9日以降の一連の話合いを行ったとみるのが相当である。
 一般に医療法人を含む諸種の法人においては、役員としての理事等が行った行為は、純粋に役員の立場とは別の立場から行ったと認められる場合は格別、そうでない場合は、不当労働行為の法理上、法人の業務執行者としての地位のゆえに、法人自身の行為とみなされる。本件では、一連の話合いでの両理事の言動は八尾北労組の組合員の立場から行った側面があるものの、理事の立場でも行ったとみられるから、法人自身の行為といえる。
(カ)  9月18日の話合いは、理事が参加していないが9月10日及び17日の話合いの続きとして行われ、その翌日にY1理事が18日に確認した組合脱退の検討結果をXに求めたことなどからして、八尾北労組と両理事が意を通じて共同で行ったとみざるを得ない。そして、上記(ウ)及び(エ)からは、両理事による一連の話合いを法人は支持していたとみられる。
(キ)  以上によれば、9月10日、17日及び18日の話合いは法人が八尾北労組と共同で行ったものというべきで、「労労問題」として法人に不当労働行為の責任は生じ得ないとする法人の主張は理由がない。

2 本件言動は、法人による不利益取扱い及び支配介入に当たるか。

ア 本件言動は、「組合をやめろ」、「団交申入れを取り下げろ」などの言動を含むところ、これら言動は数日連続して長時間、X一人に対し多人数の者による話合いの中でなされ、同話合いではXに対する非難が執拗に凄みのある言い方を交えて行われたこと等からして、組合からの脱退と9月9日付け団交申入れの撤回を強要したといえるものである。
イ これら強要に係る言動は、上記1のとおり、法人が八尾北労組と共同で行ったもので、法人の組合弱体化行為といえる。また、本件言動は、大きな精神的苦痛を与えるもので、Xに対するいじめ・パワーハラスメントというべき不利益取扱い行為であり、Xの組合加入及び組合を通じた団交申入れを嫌悪し、それらを理由に行ったものである。よって、強要に係る言動は労組法第7条第3号の、同言動を含む本件言動は同第1号の不当労働行為に当たる。

3 20年9月9日付け団交申入れに法人が応じなかったことは団交拒否に当たるか。

 9月9日付け団交申入れの団交事項は、義務的団交事項に当たり、法人が同団交に応じないことに正当な理由はなく、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成20年(不)第59号 全部救済 平成21年10月27日
 
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