概要情報
事件名 |
大阪府労委平成22年(不)第37号 |
事件番号 |
大阪府労委平成22年(不)第37号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
Y株式会社 |
命令年月日 |
平成23年11月18日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が組合事務所の貸与、集配営業課社員に係る営業活動の目標設定及び組合員の人事異動を議題とする団交並びに大阪府労委から発出された団交応諾命令に基づく団交に応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は、会社に対し、①社員に対する営業活動の目標設定及び組合員の人事異動によって起こる職場における労働条件の変化についての団交に応じること、②文書手交を命じた。
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命令主文 |
1 被申立人Y株式会社は、申立人X労働組合から平成22年2月1日付け及び同年3月5日付けで申入れのあった社員に対する営業活動の目標設定についての団体交渉並びに同年3月28日付けで申入れのあった同年4月1日付けの人事異動によっておこる職場における今後の労働条件の変化についての団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人Y株式会社は、申立人X労働組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X労働組合
支部長 D 様
Y株式会社
代表取締役 B
当社が、貴組合から平成22年2月1日付け及び同年3月5日付けで申入れのあった社員に対する営業活動の目標設定についての団体交渉並びに同年3月28日付けで申入れのあった同年4月1日付けの人事異動によっておこる職場における今後の労働条件の変化についての団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
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判断の要旨 |
1 組合事務所の貸与に関する団交について
申立人組合が平成21年10月5日付けで団交要求書を提出したのに対して、被申立人会社が要求事項について一定の説明を行い、その後、組合から新たに要求が出されていない以上、会社が団交等を開催しなかったことが団交拒否に当たるとまでみることはできない。また、22年3月5日付け団交要求書に対しては、会社は会社が理解する平成19年9月28日付け労働協約等の内容について一定程度説明し、これに従った対応(支部労使委員会で交渉すること)をすると主張しているものと認められ、組合も特にこの点について反論をしていないこと、その後、組合自身が組合事務所問題について支部労使委員会の開催を求めていること等からみて、会社のこのような行為をもって団交拒否をしたものとまでみることはできない。
2 社員に対する営業活動の目標設定に関する団交について
会社は、社員の営業の問題については、上記労働協約等に基づき、支部労使委員会で取り扱うことを組合に伝えたものであり、団交拒否ではない旨主張する。しかし、会社は従来は当該問題に関する交渉に応じていたにもかかわらず、22年2月22日になって方針を変更し、上記労働協約等により団交に応じられない旨表明しながら、組合に対してそれについての説明を十分に行ったとは認められない。また、支部労使委員会又はその窓口としてならば、従前に行っていた交渉を行うことは可能である旨を告げたとも認められず、単に団交は行えない旨を述べたとみるほかない。このような会社の対応は、正当な理由なく団交を拒否しているものといわざるを得ない。
3 平成22年4月1日付けの人事異動に関する団交について
組合の22年3月28日付け団交要求書には、議題として「2、異動によっておこる職場における今後の労働条件の変化について」との記載があり、これについて会社は、要求書を受け取った時に「労働条件」の趣旨を確認したところ、組合のD書記長は、「非番日当番などしている」と答えるのみで具体的な回答がなく、非番日労働等は個別的労務指揮権の発動に関する事項であり経営専決事項に該当するので団交の対象事項にはならない旨回答したと主張する。
しかし、同要求書の記載からは、組合が団交を求めているのは単に人事異動自体や非番日当番の指示の問題に限られるものではなく、当該人事異動が組合攻撃である可能性が疑われるという問題及び組合員が複数名残る6班において2名の異動後に労働強化が予想されるという問題についても団交を求めていたことが容易に読み取れる。この2点は義務的団交事項に当たるといえるから、上記労働協約等の規定にかかわらず、会社には団交応諾義務がある事項であるといわざるを得ない。以上のことから、一方的に団交対象事項に当たらない旨主張し、団交に応じない会社の対応は、正当な理由なく団交を拒否しているものといわざるを得ない。
4 平成22年4月15日付け大阪府労委命令により応じることとされた団交について
22年4月15日付け府労委命令(平20不70事件)は、交付の日から効力を生じており、会社にはこれに応じる義務がある。ただし、組合が22年5月14日付け抗議申入書で申し入れているのは、同命令に基づきC組合員の処分についての団交を開催せよということであり、同命令の履行を求める要求であるとみることができるから、これによって新たな団交の必要性が生じたり、組合に平成20年(不)第70号事件とは別の被救済利益が存したりするものとまで解することは困難である。したがって、上記団交に係る団交拒否に対して、同命令とは別に会社に不当労働行為を認定し、救済を命じる必要性があるとまで認めることはできない。
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掲載文献 |
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