労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ナカリキッドコントロール 
事件番号  中労委平成22年(不再)第24号 
再審査申立人  大阪電気通信産業合同労働組合(「組合」) 
再審査被申立人  株式会社ナカリキッドコントロール(「会社」) 
命令年月日  平成23年10月5日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   会社の次の行為が不当労働行為であるとして、組合が救済申立てを行った事件である。
(1) 事前協議について合意はなかったとして、これに係る協定書作成を拒否したこと。
(2) 平成19年及び20年の定昇について、組合に事前提案することなく、朝礼で発表したこと。
(3) X組合員に対し、平成20年の定昇を実施しなかったこと。
(4) 平成19年1月19日及び同年2月28日の団体交渉(以下「団交」)において、初任給等の資料の開示要求を拒否するなどしたこと、並びに平成20年4月9日の団交において、20年の定昇に関し、要求されていないから答える必要がない旨を回答したこと。
(5) 平成20年3月3日付け春闘要求書等に対し、要求項目に関する具体的な話合いを拒否するなどしたこと。
 初審大阪府労委は、いずれも不当労働行為に当たらないとして、救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。  
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 協定書作成拒否について
平成19年1月19日の団交において、会社が、労働条件の変更に関し必ず事前協議を行うという意思を表明したとまでは評価し難いし、他方、組合も、事前協議に関する具体的な合意があったことを前提に行動していたものとは認められない。したがって、事前協議に関し、合意が成立するまでに至っていなかったとみるのが相当であるから、会社が事前協議に係る協定書作成を拒否したことは、労働組合法(「労組法」)第7条第2号及び第3号の不当労働行為には当たらない。

2 事前提案することなく朝礼で発表したことについて
ア 平成19年の定昇
事前協議約款は締結されていない上、組合が平成19年の定昇について団交を申し入れたとは認められないので、会社が、同定昇について、事前提案することなく、朝礼で発表し、実施したことが労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる余地はない。また、上記事情に加えて、会社社長の朝礼での発表は全従業員の定昇率について述べたものであって、X組合員の定昇額について述べたものではないこと、平成19年4月11日の団交で会社がX組合員の定昇額を述べたのに対し、組合が異議を述べたとの疎明のないこと等を考慮すると、会社の上記対応が組合を無視ないし軽視したものであるとは認められず、これが労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるとはいえない。
イ 平成20年の定昇
事前協議約款は締結されていないこと、会社は例年3月末に定昇の方針を明らかにしていること、会社社長が朝礼で発表した内容は定昇を実施するということだけであって、具体的な定昇率までは言及していないこと等を勘案すると、会社が平成20年の定昇について、事前提案することなく、朝礼で発表したことが労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるとはいえない。

3 平成20年の定昇を実施しなかったことについて
X組合員の定昇について組合との合意がなく、組合から仮払いの要求もない中で、会社がX組合員に対し定昇を実施しなかったからといって、直ちに不合理とはいえない。したがって、会社が平成20年7月に至るまでX組合員に対する定昇相当分を支給しなかったことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たらない。

4 団交における会社の対応について
ア 平成19年1月19日及び19年2月28日の団交
会社は、団交当日に、組合が求める資料のすべてを開示したわけではないものの、後日、一定の資料の開示に応じており、組合から差別に関する具体的な主張がない中で、個人情報保護にも配慮しながら、組合が検討可能な相応の資料を提出していたものと考えられる。したがって、平成19年1月19日及び19年2月28日の団交における組合からの資料要求に対し、会社のとった一連の対応が、不誠実なものであったとはいえず、これが労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとまではいえない。
イ 20年4月9日の団交
20年4月9日の団交において、組合は、会社が20年の定昇について事前協議なく通告したのを抗議したのに対し、会社は、定昇については組合側から要求がなかった旨発言した。組合と会社の間で事前協議に関する合意もなく、その書面化もされていない中で、会社が必ず事前提案をしなければならなかったとはいえないから、同団交における会社の対応が、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとまではいえない。

5 春闘要求書等に対する会社の対応について
会社は、組合から各要求書が送られてくる度に、すぐに文書をもって回答し、併せて団交の場でも回答をしており、その回答内容をみても、すべての要求事項に対して拒否回答をしていたのではなく、回答できるものは回答し、直ちに回答できないものも検討する旨述べるなどしている。また、組合から要求された賃金関係の資料についても、社員平均昇給率や、X組合員の昇給状況、賞与支給状況等を提出していた。したがって、組合の各要求に対する会社の対応が、不誠実であり、組合を無視ないし軽視するものであったとはいえないから、会社の対応が労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるとはいえない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成20年(不)第2・21・38号 棄却 平成22年3月12日
 
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