労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成22年(不)第21号・第53号 
事件番号  大阪府労委平成22年(不)第21号・第53号 
申立人  X労働組合 
被申立人  株式会社Y 
命令年月日  平成23年10月28日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社は、警察署長の委託を受けて、道路交通法に基づく放置車両の確認等に関する事務を行っている。同法51条の12には、当該事務の受託者の役員及び職員に対する守秘義務等のほか、当該事務に従事する役員及び職員は刑法その他の罰則の適用に関し、法令により公務に従事する職員とみなす旨が定められている。
 本件は、会社が①駐車監視員はみなし公務員であり、労働三権が認められていないとして団交を拒否し、また、団交に応じることを約束した後、いたずらに団交を引き延ばしたこと、②団交において、申立人組合からの質問に対し説明せず、また、組合の専従役員が同席していることを理由に組合が要求する資料を開示しなかったこと、③組合加入に対する妨害、脱退工作、反組合的な言動等を行っていること、④組合嫌悪の主張を記載した文書等を従業員に配付し、記名押印を求めたこと、⑤組合嫌悪の主張を記載した文書を駐車監視員の待機所にファクシミリで送付したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、会社に対し、誠実団交応諾及び文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、申立人から平成22年3月17日付けでなされた団体交渉申入れのうち、組合事務所の貸与及び組合掲示板の設置に関しては、これらを貸与・設置することで生じる支障等を説明するなどして、また、基本日給の引上げに関しては、被申立人が引上げできない根拠となる資料を提示して具体的に説明するなどして、誠意をもって応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
X労働組合
 執行委員長 A 様
株式会社Y
代表取締役 B
 当社が行った下記(1)から(5)の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1)貴組合から平成22年3月17日付けでなされた団体交渉申入れに対し、団体交渉の開催を引き延ばしたこと(2号違反)。
(2)当社が、平成22年4月23日、同年6月11日及び同年7月9日に貴組合との間で開催された団体交渉において、組合事務所の貸与及び組合掲示板の設置に関しては、これらを貸与・設置することで生じる支障等の説明を行わず、基本日給の引上げに関しては、当社が引上げできない根拠となる資料を提示して説明を行わないなど誠実に対応しなかったこと(2号・3号違反)。
(3)平成22年4月6日、浪速待機所の会議において、当社の常務取締役総務部長(当時)が、同月9日、此花待機所における朝礼にて当社駐車監視員に対し、当社統括責任者が、同日、東待機所において当社駐車監視員に対し、当社代表取締役(当時)が、同月10日及び同月12日、南待機所における朝礼にて当社駐車監視員に対し、当社統括責任者が、同月16日、南待機所において当社駐車監視員に対し、当社代表取締役(当時)が、それぞれ組合加入を威嚇する発言を行ったこと(3号違反)。
(4)当社統括責任者が、自らを発起人代表とする要望書を配付し、駐車監視員に対し記名押印を求めることにより組合活動を非難し、弱体化する行為を行ったこと(3号違反)。
(5)当社常務取締役監視事業部長が、「労働組合との交渉経過について」と題した文書を全ての待機所にファクシミリで送付することにより組合活動を阻害する行為を行ったこと(3号違反)。

3 申立人のその他の申立てを、棄却する。  
判断の要旨   1 団交申入れに対する被申立人会社の対応について
会社が団交に応じられない理由としている「駐車監視員はみなし公務員であり、警察は地方公務員法等により労働三権が認められていない」との見解は、団交拒否の正当な理由とはなり得ないものである上、会社は、その点に疑義があるのであれば、労働三権が認められていないとする具体的根拠を申立人組合に提示すべきところ、その責任を組合に転嫁し、しかも組合の回答に納得できないことや具体的根拠の提示がないことを口実として団交の開催を引き延ばしていたとみざるをない。このような対応は、誠意をもって組合の団交要求に対処したものということはできない。
 2 団交において、組合からの質問に対し説明せず、また、組合が要求する資料を開示しなかったことについて
組合の要求事項のうち、組合事務所、掲示板の貸与については、会社は、これらを設置・貸与することで生じる支障等を具体的に説明しておらず、要求に応じられないとする理由を十分に説明したとはいえない。基本日給の引上げについては、賃金の引上げができないことについて、具体的根拠を示したとはいえず、また、駐車監視員の賃金体系について十分な説明をしていないにもかかわらず、就業規則も提示していない。こうした会社の対応は、不誠実団交に当たる。
一方、職務手当の査定基準と評価制度の内容開示については、会社は一定の説明をしていることや、一部事項に関し道路交通法上の守秘義務に反するため開示できないとする会社の主張も首肯できることから、会社の対応が不誠実なものであったとまでいうことはできない。
 3 組合加入に対する妨害、脱退工作、反組合的な言動等について
平成22年4月中に会社の社長らが同社の数ヵ所の待機所で従業員に対して行った発言は、組合加入に対して威嚇的効果を有するものであって、組合に対する支配介入に当たる。
 4 組合嫌悪の主張を記載した文書等を従業員に配付し、記名押印を求めたことについて
発起人代表を会社の統括責任者Gとする社長あて「要望書」と題する文書は、同人が作成し、駐車監視員に記名押印を求めたものとみられるが、同人が全く単独でこれを行ったと解するのは不自然であり、会社が積極的に関与していたとみるのが相当である。同要望書には、「外部組合である○○(注:申立人組合名)の要求には、一切応じない」ことも要望として記載されており、このような要望書への記名押印を駐車監視員に求めることは、組合活動を非難し、組合の弱体化を意図したものであることは明らかである。
 5 組合嫌悪の主張を記載した文書を全ての待機所にファクシミリで送付したことについて
会社の常務取締役監視事業部長Fは、監視事業部長名で、組合との交渉経過に係る文書を5回にわたり各待機所にファクシミリで送付したが、同部長は統括責任者及び駐車監視員の人事管理及び評価を行う立場にあり、その見解が駐車監視員に少なからぬ影響を与えることは容易に推認できる。そして、それらの文書の中には、組合が不当な要求を行っているとの印象を与える記載や組合の情宣活動により駐車監視員の地位の低下にもつながりかねないとの印象を与える記載もあるといえる。したがって、Fがこれらの文書を各待機所にファクシミリで送付したことは、組合活動を阻害するものであったということができる。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成23年(不再)第76号 棄却 平成24年9月5日
 
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