概要情報
事件名 |
クボタ |
事件番号 |
中労委平成22年(不再)第21・22号 |
再審査申立人 |
株式会社クボタ(「会社」) |
再審査申立人 |
全日本港湾労働組合関西地方大阪支部(「組合」) |
再審査被申立人 |
全日本港湾労働組合関西地方大阪支部(「組合」) |
再審査被申立人 |
株式会社クボタ(「会社」) |
命令年月日 |
平成23年8月3日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、①組合員である契約社員に対して契約終了に当たって支給する契約終了慰労金の支給条件として、契約の終了に異議を申し立てない旨の確認書への署名・捺印を求める通知書(契約終了慰労金通知)を配付したことに関して労働組合法(「労組法」)第7条1号及び3号の不当労働行為があり、②団体交渉において、契約終了慰労金の支給に関して、誠実に対応しなかったという同条第3号の不当労働行為があったとして、救済申立てがあった事件である。
初審大阪府労委は、①会社が契約終了慰労金通知を配付したことは、労組法第7条第1号の不当労働行為には当たらないが、同条第3号の不当労働行為には当たると認め、②団交における会社の対応は不誠実なものとはいえず、労組法第7条第2号には当たらないとし、会社に対し、上記限度で文書交付を命じた。これに対し、会社は、労組法第7条3号に関する事実についての判断を不服とし、組合は、労組法第7条3号に関する事実の救済方法及び労組法第7条2号に関する事実についての判断を不服とし、それぞれ再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
初審命令の第1項を取り消し、同項に係る救済申立を棄却
初審命令の第2項のうち、不誠実団交に関する同救済申立てを棄却した部分を取り消し、文書手交を命じる限度で同項に係る救済申立を認容。 |
判断の要旨 |
1 会社が契約終了慰労金通知を配付したことは組合に対する支配介入に当たるか
ア 契約終了慰労金の支給に当たって、雇用契約が終了したことを確認する書面を徴することは、契約終了慰労金の制度そのものにおいて当然に予定されていたことといえる。また、契約終了慰労金通知に記載された支給条件、すなわち、契約の終了に何ら異議を申し立てない旨が記載された確認書への署名・捺印についても、同確認書の記載内容は、客観的には契約が終了したことを確認するものにほかならず、新たに不利益な要件を課すものということはできない。さらに、確認書の要件の具体的内容が、20年9月26日の契約終了慰労金通知により初めて契約社員に対して明らかにされることになったことには理由があるといえ、会社が組合員らの雇用継続訴訟提起の予告を意識して確認書の要件を急遽付加したと認めることはできない。
イ 以上のとおり、契約終了慰労金通知の記載内容、その配付時期等からは、会社が、組合員らの雇用の継続に関する訴訟の牽制、組合員の分会からの脱退及び分会の弱体化を企図して契約終了慰労金通知を配布したと認めることはできず、他に、かかる事実を認めるに足りる証拠は見当たらない。したがって、どの時点において契約終了慰労金の支給及び支給条件等を組合に対して説明すべきであったかという不誠実団交の問題は残るものの、契約終了慰労金通知の配布により、会社が組合に対して支配介入をしたとまで認めることはできない。
2 団交における「契約終了慰労金」の支給に係る会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たるか
ア 組合員らの雇用終了問題が議題となっている団交において、契約終了慰労金は、組合員らの雇用の継続という組合の要求に対する代替提案として重要な意味をもっていた。そのような中、20年8月12日ころには契約終了慰労金制度を創設し、その後、支給額や支給条件として確認書を徴すること等を決定し、その旨を記載した「第3回契約更新通知」を同月20日に配付することを予め決めていたのであり、また、遅くとも同年9月8日までには、支給条件となる確認書の文言の具体的内容を決定していたのであるから、会社は、各段階においてまずもって組合に対し、契約終了慰労金の創設や支給条件等につき積極的かつ具体的に提案や説明をして雇用契約期間満了に関する労使間の合意達成に向けた努力すべき義務があったといえる。
イ しかしながら、会社は、20年8月20日に第3回契約更新通知を契約社員に配付し、他方、組合に対しては、同通知の配付前日(同月19日)開催の第17回団交において、契約終了慰労金の支給に関する提案や説明を一切行わなかった。また、すでに支給条件となる確認書の文言の具体的内容を決定していた同月17日開催の第18回団交においても、同内容の提案や説明を行わず、上記9月26日に同内容を契約終了慰労金通知により契約社員に通知した後となる同年10月31日開催の第19回団交においてはじめて組合に説明した。
ウ 以上のような会社の対応は、会社との団交により組合員らの雇用期間満了に係る問題の解決を図ろうとする組合に対し、問題解決に向けた努力を欠く不誠実なものであったといわざるをえず、労組法第7条2号の不誠実団交の不当労働行為に該当する。 |
掲載文献 |
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