労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ファビルス 
事件番号  中労委平成22年(不再)第9号 
再審査申立人  株式会社ファビルス(「会社」) 
再審査被申立人  福岡地区合同労働組合(「組合」) 
命令年月日  平成23年8月3日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   会社が、①組合から20年11月15日付けで申入れのあった団交(「20年団交」)を、同月17日の組合による福岡商工会議所の前での情宣活動(「本件情宣活動」)を理由に拒否したこと、②組合から21年2月22日付け及び同年4月16日付けで申入れのあった団交(「21年団交」)を、福岡県労委において組合との間の不当労働行為事件が係争中であることを理由に拒否したことが、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
 初審福岡県労委は、①及び②の団交申入れに応じなかったことは、労組法第7条第3号の不当労働行為には当たらないが、同第2号の不当労働行為に当たるとして、会社に対し文書手交を命じたところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 20年団交申入れに応じなかった会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
ア 会社は、福岡商工会議所の前で行われた本件情宣活動は、会社及びY社長の同会議所での活動を通じた「地域社会における名誉・信用」を大きく毀損する違法なものであることから、組合にその目的や意図につき釈明を求めたが、組合から釈明がなかったため団交が開催されなかったにすぎず、団交拒否に当たらないと主張する。
イ 商工会議所の活動には、会社の本来の業務と離れた社会貢献活動ともいうべき活動もある。しかしながら、その会員資格は継続的な事業の実施を基盤とし、Y社長は会社の代表者として福岡商工会議所の副会頭に選任されていることを、当該地区内における商工業者の共同の利益を図るという商工会議所の本来の性格(商工会議所法第6条(目的)、第9条(事業))に鑑みると、会社及びY社長の同会議所での活動は、企業としての本来の活動と関連性を有するものといえ、その業務及び職務と全く関係がない職場領域外の活動とはいえず、また同会議所での活動に係る名誉・信用は地域社会における(個人的な)名誉・信用に属するとまではいえない。よって、同会議所の建物の前は、組合が、本件情宣活動を行うに当たり、その場所としたことを一概に不適当であるとはいえない。
ウ 本件ビラの配布及び演説による本件情宣活動の内容について、会社は虚偽又は誇大であると主張するが、「副会頭Yは定期昇給を行え!!」との記載は、福岡商工会議所の副会頭の役職は、Y社長が会社の代表者として選任され、社長たる立場と密接に関連したもので、不相当とまではいえない。また、「定期昇給を“休止”しました。」「毎年々々、15,300円の減収になりました。」との記載は、会社において10年以降基本給の定期昇給が実施されていない事実を踏まえたものであり、「ボーナスが減額された。」との記載も、減額の事実があり理解できるものである。その他の記載も、表現として相当性を欠くとまではいえない。
エ 本件情宣活動の目的は、本件ビラの記載内容や10年以降基本給の定期昇給が実施されていないこと、一連の要求や団交の内容等からすると、長年定期昇給がないなどにより、低賃金に置かれており改善が必要であることやサービス残業が行われており未払い賃金の支払いが必要であることという組合の認識ないし見解を表明して、地区の商工業者や一般公衆の理解と支持を求めることにあったと認められる。よって、福岡商工会議所の前での情宣活動は会社代表者への嫌がらせであったとする会社の主張は採用できない。
オ 本件情宣活動の態様は、30分間から40分間にわたり、シュプレヒコールの後、拡声器を用いて訴え、ビラを配布したものであるが、拡声器の音量が大きいため、福岡商工会議所に、会議室利用者の要請を受けて1階正面玄関の自動ドアの閉鎖という対応を余儀なくさせたりしたなど、その業務の遂行に一定の支障を来したものの、本件情宣活動について組合に釈明を求めて、釈明があるまで団交を行わないという対抗措置を正当化するほどに行き過ぎたものと認めるに足る事情は窺えない。むしろ、会社は団交に応じたうえで団交の席で同会議所前での実施や本件ビラの内容について釈明を求め、会社の立場から抗議することも可能であり、団交の促進という観点からはそのような対応が望ましいものであった。
カ 本件情宣活動の場所、内容、目的、態様については以上のとおりであって、同活動について会社が求めた釈明が組合からなかったとして20年団交申入れに応じなかったことは、団交の促進という労組法の理念に照らして不適切であり、団交拒否の正当な理由は認められない。よって、会社の同対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。

2 21年団交申入れに応じなかった会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
  団交は、労働委員会に不当労働行為の救済申立てが行われている場合であっても、審査手続の中での当事者間の了解等がない限り、同手続と併行して行われるべきもので、事件が係属して審査中であることは、特段の事情のない限り、団交を拒否する正当な理由とならない。会社の対応は、福岡県労委で不当労働行為事件が審査中であったことを理由に21年団交申入れに応じていないものとみられるもので、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡県労委平成21年(不)第1号 一部救済 平成22年1月22日
 
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