概要情報
事件名 |
郵便事業(河内長野支店) |
事件番号 |
中労委平成22年(不再)第29・31号 |
再審査申立人 |
第29号再審査申立人: 郵便事業株式会社(「会社」) |
再審査申立人 |
第31号再審査申立人: 郵政労働者ユニオン河内長野支部(「組合」) |
再審査被申立人 |
第29号再審査被申立人:郵政労働者ユニオン河内長野支部 |
再審査被申立人 |
第31号再審査被申立人:郵便事業株式会社 |
命令年月日 |
平成23年7月20日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1) 組合の組合員Xに対し、上司に対し不穏当な言辞を繰り返したことなどを理由に20年7月7日付けで懲戒処分に当たる戒告処分(本件戒告処分)としたこと、(2) 組合が会社河内長野支店(支店)に対して、20年6月2日付け、同年8月6日付け、同月20日付け、同年9月4日付け、同月10日付け、同月19日付け、同月30日付けおよび同年10月17日付けで申し入れた同年5月27日のY課長の言動、本件戒告処分などを議題とする団体交渉(本件団交申し入れ)に応じなかったことが不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件である。
大阪府労委は、本件戒告処分は不当労働行為に当たらないとして棄却し、同処分を議題とする団体交渉に応じないことは不当労働行為に当たるとして、会社に対し、(1) 本件戒告処分を議題とする団交応諾、(2) (1) に係る文書手交を命じたところ、会社及び組合らは、それぞれ、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件戒告処分は労働組合法7条1号および3号の不当労働行為に当たるか
(1) Y課長に対する、Xの「セクハラ」との発言、「パワハラ、パワハラ」と繰り返し述べたことおよび「パラパラ」と口ずさんだこと(20.5.27X言動)は、勤務時間中の職場内において、上司である同課長を侮辱し、やゆするものであるから、会社が、同言動に関し、懲戒処分に付したことには理由がある。
(2) 上記(1) のとおり、20.5.27X言動は職場秩序を乱すものであったこと、Xは、会社の事情聴取では、自らの言動を認めようとはせず、会社から求められた始末書の提出も拒むなど、同人には反省する姿勢はうかがえなかったことからすると、Xを戒告処分としたことが不相当に重い処分であるとまでは断じ難い。
(3) 会社と組合との労使関係は、組合は組合ビラで会社の業務処理、業務指導の対応を強く非難していたことなど、必ずしも良好であったとは認められないが、本件戒告処分当時、労使関係上の問題をめぐり、会社と組合間で具体的な紛争が生じ、会社と組合、Xと会社らの間で厳しく対立していた事情はうかがえないことからすると、Xが組合の役員であったことないし同人の組合活動の故に本件戒告処分が行われたとは認められない。
(4) 以上のとおりであるから、会社が、Xに対して、懲戒処分に付したことには理由があると認められる。また、本件戒告処分は、一時金支給において成績率が20%減率され、昇給が1号俸減俸されるものであり、会社と組合との間の労使関係は必ずしも良好であったとは認められないが、20.5.27X言動の態様および会社の事情聴取でのXの態度、当時の労使事情などにかんがみると、Xが組合の役員であったことないし同人の組合活動の故に、あるいは組合の弱体化を意図して行われたものと言うことはできず、労働組合法7条1号および3号の不当労働行為には該当しない。
2 会社が本件団交申し入れに応じなかったことは労働組合法7条2号の不当労働行為に当たるか
(1) 本件戒告処分のような個別的人事権の行使に関する事項も義務的団交事項に当たるが、当該労使関係において、個別的人事権の行使に関する事項については労働協約で苦情処理などの別段の手続に委ねることとし、団交事項から除外している場合、そうした取扱いは、団体交渉権保障の趣旨に反しない限りは、許容されるものと解される。
会社では、懲戒処分については、労使協約等により団体交渉の対象事項とはせず、同処分のうち「不当に利害を侵害されたと客観的に認められる場合は、苦情処理で取り扱う」こととされていた。また、その運用にあっては、懲戒処分について管理者等に対する不満を述べ、撤回を求めるようなものであれば形式審査において却下される可能性が高いという運用がなされていることがうかがわれるのであるから、会社の苦情処理手続は、懲戒について、実質的で慎重な協議や審理によって処理され、団体交渉の代わりとなるに足りる手続であったとは認め難い。
(2) 本件団交申し入れでは、組合は、本件戒告処分およびY課長の言動などに関する4項目について労使関係上の問題として、会社との協議・交渉を求めていると言うことができ、そのような労使関係事項は会社の義務的団交事項に当たる。
(3) 以上からすると、会社は、本件団交申し入れに対し、組合と誠実に協議・交渉する義務があるのに、何らの対応もしていないことが認められるのであるから、かかる会社の対応は労働組合法7条2号の団交拒否に該当する。 |
掲載文献 |
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