概要情報
事件名 |
兵庫県労委平成22年(不)第1号 |
事件番号 |
兵庫県労委平成22年(不)第1号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
Y株式会社 |
命令年月日 |
平成23年6月9日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
申立人組合の分会の組合員13人は、申立外会社A又は同Bに雇用されて、労働者派遣契約や請負契約に基づき、被申立人会社の工場で就労していたが、平成21年11月から12月にかけて解雇又は雇止めとされた。本件は、会社が分会組合員の雇用に関する要求事項を議題とする団体交渉を、当該組合員の使用者に当たらないことを理由に拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
兵庫県労委は、申立てを棄却した。
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命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 被申立人会社は、分会組合員の雇用について、現実的かつ具体的な支配力を有していたといえるか。
組合は、申立外会社Aの業務の大半は会社との取引によるもので、会社との請負契約又は労働者派遣契約が打ち切られるならば、分会組合員に新たな就業先を紹介することは不可能であることや、同組合員が会社の従業員と混在して働いていたこと、会社の課長等から業務指示を受けたこと等を指摘するが、これらの事実だけでは、同組合員の雇用について会社が現実的かつ具体的な支配力を有しているとまではいえない。
2 会社と分会組合員との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存していたか。
組合が団体交渉を申し入れた平成21年11月19日時点において、分会組合員のうち2名は派遣可能期間を超えて会社で業務に従事していたと認められるが、派遣元事業主であるA社から労働者派遣法35条の2第2項の規定による通知を受けていない以上、会社には同法上の雇用契約の申込み義務はないと解さざるを得ない。
しかし、とりわけ本件のように派遣可能期間を超えている場合には、雇用契約の申込み義務がないとしても、労働者派遣法の趣旨は直接雇用を含めた雇用の安定を要請していると解することができ、なお雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的にあると判断される余地もある。この点について検討すると、上記の団体交渉申入れがあった頃、分会組合員が就労していた工場では操業度が落ち込み、会社は上記2名の組合員に係る労働者派遣契約についても解除する旨を通知しており、会社には従前、同人らが従事していた業務はない状況であったと認められる。したがって、会社と分会組合員との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存するということはできない。
3 その他の組合の主張について
組合は、会社に雇用契約の申込み義務が発生していなくとも、労組法の趣旨からすれば、派遣先の都合により派遣労働者が解雇された事案に関しては、会社に団交応諾義務が存するとも主張する。確かに、長期間にわたり派遣労働者を使用し、派遣可能期間を超えているような場合には、例外的に派遣先に使用者性が認められる余地がないとまではいえないが、本件では前述の事情から、会社に使用者性を認めることはできない。 |
掲載文献 |
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