労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大寿会 
事件番号  中労委平成22年(不再)第7号 
再審査申立人  全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(「組合」) 
再審査申立人   
再審査被申立人  医療法人大寿会(「医療法人」) 
再審査被申立人   
命令年月日  平成23年3月2日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   医療法人が、①14項目の議題について行われた計12回の団体交渉において不誠実な対応をしたこと、②喫煙区域外での喫煙を理由に組合のX1分会長の賞与を減額したこと、③X2組合員の勤務条件について組合に回答を求めるなどしたこと、④病気欠勤していたX3組合員の復職先を療養病棟とせずに病気欠勤時の一般病棟としたこと、⑤勤務時間中の職場離脱等を理由にX4組合員を懲戒処分に付すとともに賞与を減額したこと、⑥X4組合員への懲戒処分を議題とする計4回の団体交渉において不誠実な対応をしたことが労働組合法(「労組法」)第7条第1号、第2号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、上記②及び③に係る申立てについては申立期間を途過しているとして却下し、その他の申立てについては不当労働行為に当たらないとして棄却した。組合は、これを不服として再審査を申し立てた。
 なお、組合は、本件再審査手続において、本件再審査の対象を上記①、②及び④のみとするとした。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1.  14項目の議題について行われた計12回の団体交渉における医療法人の対応は不誠実であるといえるか
(1) 組合の基本要求に係る医療法人の対応は、組合事務所及び組合掲示板の貸与については応じられないとしつつ、他の要求項目については受け入れられる限度を具体的に回答しており、総体的にみて不誠実であったとまでは判断することは適切でない。
(2) その他の要求事項について、組合は、医療法人から説明があったとしても、組合の要求に対して合意達成の可能性の模索に向けた協議はなかった旨主張するが、医療法人は、組合の要求に対して、譲歩できないまでも、時には対案を提示しながら医療法人としての考え方や方針を具体的に説明し、組合の理解を得ようとしていたものといえる。一般に使用者は、団体交渉義務によって譲歩や合意そのものを強制されるものではなく、団体交渉が取引ないし合意によるルール形成の行為であることからしても、この点に係る医療法人の交渉態度を不誠実であると評価することは適切ではない。
(3) 団体交渉の日時・場所の設定方法については、基本的には、医療法人が後日ファックスで連絡するという方法をとっていたが、組合は、不満であるか否かは別としてこの決定方法を受け入れた上、ほぼ毎月1回の頻度で毎回約2時間程度の団体交渉が実施されており、これにより団体交渉の開催に支障が生じていたとの事情も認められない。したがって、団体交渉の日時・場所の設定においても、医療法人の対応が不誠実なものであったとは認められない。
(4) 以上のことから、本件団体交渉における医療法人の対応は、全体として不誠実であったとはいえない。
2. X1分会長の賞与減額に係る申立ては、申立期間を途過しているか
 医療法人によるX1分会長の賞与減額の行為が労組法第27条第2項の「継続する行為」に当たるとの組合の主張の趣旨は、X1分会長の賞与の減額が行われた平成18年7月分賞与において職員に行われた一定額の増額がX1分会長に対しては行われなかったことから、X1分会長の翌年以降の賞与の基礎額が影響を受けていることを指していると思われる。しかし、平成18年7月分賞与の支給額の決定は、そのときにおいて完結した一回限りの行為とみるのが相当であるから、これに係る救済申立ては労組法第27条第2項の定める期間内にされたものということはできない。よって、X1分会長の賞与減額にかかる申立ては、申立期間を徒過しているものといわざるを得ない。
3. 病気欠勤から復職したX3組合員の配置を療養病棟とせずに一般病棟としたことは組合員であるが故に行われた不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか
(1) X3組合員は療養病棟で復帰したい旨の意向があるのであれば復職の直前に行われた聴取の際に述べることができたにもかかわらず何も主張していないこと、同席していた副分会長も、X3組合員の復帰についての意向のフォローをしていたとは認められないこと、X3組合員が一般病棟への復帰に向けての発言をしていたことなどの事情からすると、医療法人がX3組合員を一般病棟に復帰させたことに意向聴取上の過誤があったとはいえない。
(2) しかも、医療法人はX3組合員の勤務状況について相応の配慮をしていることが伺われ、実際にも、医療法人は、その後のX3組合員からの療養病棟への異動の申し出に対して、一般病棟とした理由について説明するとともに療養病棟に異動させており、本人の意向を踏まえた取扱いを行うよう努めていると認められる。
(3) 以上のことからすると、医療法人がX3組合員の復職先を一般病棟としたことは、組合員であるが故に行われた不利益取扱いにも、組合に対する支配介入に当たるともいえない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成20年(不)第19号・第50号 棄却 平成22年1月22日
 
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