概要情報
事件名 |
大阪府労委平成22年(不)第38号及び同第40号 |
事件番号 |
大阪府労委平成22年(不)第38号及び同第40号 |
申立人 |
X労働組合、X2労働組合 |
被申立人 |
国立大学法人Y |
命令年月日 |
平成23年3月15日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人法人は、大阪府吹田市内に本部事務局を置いているが、同箕面市内に事務所を置く申立人組合Xから団体交渉の時間及び場所について、①勤務時間中又は勤務時間終了後に行うこと、②箕面地区で行うことを求められたのに対し、①勤務時間中の労働組合活動を認めることは納税者の納得を得がたいため、原則として勤務時間中における団交は行わないことにしている、②勤務時間終了後の団交についても超過勤務縮減等の観点から基本的に応じるつもりはない、③交渉場所については他の労働組合と同様、吹田地区で実施することを原則としているとして、これに応じず、昼休みの時間帯に吹田地区で行うことを提案し続けた。また、吹田地区に事務所を置く申立人組合X2から勤務時間中又は勤務時間終了後に団交を行うよう求められたのに対し、①勤務時間は団交等を行うための時間ではなく、ノーワーク・ノーペイの原則に反する、②納税者の納得を得がたい、③特定の労働組合についてのみ勤務時間終了後に団交を行うわけにはいかないとして、応じなかった。
本件は、法人が団体交渉の開催時間及び開催場所を限定していることは不誠実団交に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は、法人に対し開催時間及び開催場所の条件を正当な理由なく限定せずに団体交渉に応じること並びに組合への文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人らが申し入れる団体交渉に、開催時間及び開催場所の条件を正当な理由なく限定せずに、応じなければならない。
2 被申立人は、申立人らに対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X労働組合
執行委員長 A 様
X2労働組合
執行委員長 B 様
国立大学法人Y
学長 C
当法人が、貴組合らとの団体交渉において、開催時間及び開催場所の条件を限定したことは、大阪府労働委員会において労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 |
判断の要旨 |
1 勤務時間中又は勤務時間終了後における団交開催について
ノーワーク・ノーペイの問題については、仮に勤務時間中に団交を開催した際の賃金の取扱いが労使間で未解決であったとしても、勤務時間終了後にも団交に応じられない理由には当たらず、被申立人法人が繰り返し昼休みの時間帯のみを提案し続けた正当な理由にはなり得ない。
また、勤務時間中の団交についても、①法人と申立人組合X2との間では平成19年までは勤務時間中に団交が行われていたこと、②労組法7条3号のただし書きの規定からしても、勤務時間中に賃金カットなしに団交を行うことは法的に禁止されてはいないことなどの事情があるところ、法人が勤務時間中の団交を差し控えるようになった時点で労使間で新たなルールを構築しようと具体的な努力をしていたと認めるに足る疎明もない。
勤務時間終了後の団交について、会場の確保が困難である、超過勤務によるコストが増加するとの点についても、平成19年以前や本件申立て以降には勤務時間終了後に団交が行われており、団交が開催できないとする程度の問題とは解せない。多数の労働組合が存在しており、勤務時間終了後の団交は大学側交渉担当者の負担が極めて大きくなるという点については、使用者はそれぞれの組合と誠実に団交を行うべき義務を負い、抽象的に負担が大きくなるといった理由のみでこの義務が免じられるものではないことは明らかである。
2 団交の開催場所について
申立人組合Xに対し、団交の開催場所を吹田地区に限定することは、開催場所への移動の負担を一方的に労働組合側に負わせるものである上、法人は併せて団交の開催時間を昼休みの時間帯に限定していたのであるから、かかる団交場所の限定により、一層、実質的な協議を妨げることになるのは明らかである。
3 結論
以上のとおり、法人は、団交の開催時間及び開催場所を指定するに当たり正当な理由なく開催条件を実質的に限定していたというのが相当であって、かかる対応は組合員の労働条件に関する問題について団交の場で協議を尽くそうとする姿勢に欠けたものであって、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。 |
掲載文献 |
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