労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  熊労委平成22年(不)第1号 
事件番号  熊労委平成22年(不)第1号 
申立人  X組合 
被申立人  Y株式会社 
命令年月日  平成23年2月17日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   申立外会社Aの経営するホテルの建物及び土地を競売で落札し、営業を開始しようとしている被申立人会社が、申立人組合とAの従業員が結成した労働組合との連名により申し入れられた団体交渉を、使用者に当たらないことを理由に拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 熊本県労委は、会社に対し労働条件に関する事項についての団交応諾を命じ、その余の申立てを棄却した。
命令主文  1 被申立人は、申立人から平成22年7月23日付けで申入れがあった団体交渉事項につき、速やかに団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人から平成22年7月29日付けで申入れがあった団体交渉事項のうち賃金、身分、雇用期間などの労働条件事項につき、速やかに団体交渉に応じなければならない。
3 その余の申立てを棄却する。
判断の要旨  1 会社法22条1項により、被申立人会社に雇用(労働)契約は承継されているか。
 申立人組合は、会社が当該ホテルの名称を使い、折込みチラシの配布、インターネットによる求人情報提供、ハローワークへの求人登録を行うなど、申立外会社Aから実質的な事業譲渡を受けたかのような行為を行っていることから、会社法22条に基づく商号続用責任を負い、雇用(労働)契約も承継している旨主張するが、同条1項による責任を負わせるためには現実に事業譲渡がなされることが必要であると解され、この理は名称の続用により同項の類推適用がなされる場合であっても変わりはない。しかし、組合は会社が実質的な事業譲渡を受けたかのような言動を行っていると主張するのみで、それ以上にAと会社との間において事業譲渡が行われたことについての具体的な疎明をしていないし、他に同事業譲渡がなされたことを認めるに足る証拠はない。そうすると、組合のこの点に関する主張は前提を欠き、失当である。
2 会社は、労組法7条2号の使用者に該当するか。
 7月23日付け団交申入れの時点において、Aの従業員の約9割が組合に加入していることに照らすと、組合員は、入社説明会・面接に参加するなど入社の意思を示せば、会社に8月遅くとも10月までには雇用される蓋然性が高かったと認められる。そうすると、会社は組合員と近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者ということができるのであり、上記団交申入れ時点においては、会社は労働契約上の使用者と同視できる者である。したがって、会社は上記団交申入れに応ずべき者として労組法7条2号の使用者に該当する。
 7月29日付け団交申入れの時点において、Aの従業員の約9割が組合に加入していることに照らすと、組合員のうち正社員については6割程度が、パート社員については全員が入社説明会・面接に参加するなど入社の意思を示せば、会社に8月遅くとも10月までには雇用される蓋然性は高かったと認められる。そうすると、上記の場合と同様に、会社は労働契約上の使用者と同視できる者であり、当該団交申入れに応ずべき者として労組法7条2号の使用者に該当する。
3 団交申入れ事項は義務的団交事項に該当するか。
 7月23日付け団交申入れ事項は、組合員の労働条件その他の待遇であることから、義務的団交事項に当たる。7月29日付け団交申入れ事項のうち賃金、身分、雇用期間などの労働条件は組合員の労働条件その他の待遇であることから、義務的団交事項に当たるが、その余の事項については義務的団交事項に当たると認めることはできない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
平成23年(不再)第13号 一部変更 平成24年5月9日
 
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