労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  URリンケージ 
事件番号  中労委平成21年(不再)第18号 
再審査申立人  株式会社URリンケージ 
再審査申立人   
再審査被申立人  全統一労働組合 
再審査被申立人   
命令年月日  平成22年10月20日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   会社の前身である株式会社都市開発技術サービス(「TGS」)から株式会社都市開発エキスパート(「エキスパート」)に転籍し、そのままTGSに出向していた組合員らの雇用身分、コンプライアンス(法令遵守)等を議題とする団体交渉申入れ(「本件団交申入れ」※)に会社が応じなかったことが、不当労働行為に当たるとして、申し立てられた事件である。
※ 本件団交申入れは、会社とエキスパート間で業務委託契約が締結された後になされたもの。
 初審東京都労委は、会社が本件団交に応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否に当たるとして、会社に対し誠実団交応諾、文書交付等を命じたところ、会社は、再審査を申し立てた。
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社は、本件団交申入れ時点において、組合との団交に応じるべき使用者であるといえるか
(1)まず、本件転籍・出向から業務委託契約締結までについてみると、会社の前身であるTGSは、組合員らをエキスパートに転籍した後においても、TGS社員としての身分を与えた上で出向社員として受け入れて従前同様の業務に従事させたのであり、実質的に継続性のある出向労働契約関係として雇用関係が存続し、その後会社がTGSの雇用関係上の地位を承継したものであるから、会社は、組合員らを「雇用する」使用者としての地位にあったと見ることができる。
(2)次に、業務委託契約後についてみると、本件団交申入れが行われた時点においては、業務委託契約に基づき、エキスパートの従業員として会社の業務に従事する関係に変更され、会社との雇用関係は終了したともいえるが、労働組合法第7条2号にいう使用者とは、必ずしも現に当該労働者を雇用している者に限られる訳ではなく、ある使用者との間に営んでいた雇用関係を解雇、退職などにより終了した労働者の所属する組合が、その終了に際して、終了をめぐる雇用・労働条件上の問題を提起して交渉を求めている場合の当該使用者も含まれると解すべきであり、本件においては、雇用関係を終了した者が所属する組合が、その終了に際して、終了をめぐる問題を提起して交渉を求めている場合に当たるといえる。
(3)また、本件の団交事項は、転籍・出向時のTGSの約束に反するのではないかなどの組合員らの雇用に関する基本的問題であって、エキスパートは実質的にTGSが設立した企業であり、本件転籍・出向への切替えや本件業務委託契約への切替えももっぱら会社の都合により会社主導で行われていることからすれば、それらの問題については会社が実質的決定権を有しているものである。
(4)したがって、組合員と会社との雇用関係の終了に際し、組合員らの所属する組合が、会社が実質的に決定権を有する雇用上の基本的問題を提起して団交を求めている以上、会社は、組合員らに対して、なお、労働者を「雇用する」使用者の地位にあるというべきである。
(5)なお、16年6月15日付けでTGS、エキスパート、組合の3者間において、組合の雇用・労働条件はエキスパートと組合で協議することや、TGSが転籍時の労働条件が遵守されるようエキスパートに対して支援を行う旨の合意(以下「16年合意」)がなされているが、これは、あくまでも組合員らが本件転籍後においても会社に出向して会社の社員として業務を行うとの当時の現状を前提としていたものと考えるべきである。本件出向契約から業務委託契約等への契約変更は、本件転籍・出向関係においては存在していた会社と組合員間の雇用関係を消滅させてしまうという、16年合意締結当時想定していなかった根本的な労働契約の変更であるから、このような問題に係る団交申入れについてまで、16年合意を根拠に会社に使用者性がないと主張することには合理性は認められない。
2 会社は、組合からの本件団交申入れを正当な理由なく拒否したといえるか
(1)本件団交申入事項は、まさしく組合員の労働条件その他の待遇に関する事項であり、また、実際上会社が処理できるものであって、義務的団交事項である。
(2)(ア) 会社は、転籍・出向関係が労働者供給事業禁止との関係で問題とされる可能性を予見しており、コンプライアンスの問題があるとの組合の主張について理解できなかったとは到底考えられない。また、会社は、本件団交申入れの趣旨が組合員らを会社の直接雇用に戻すことなどであることは認識しているのだから、会社の行為がコンプライアンスなどからかけ離れているとの組合の補足的主張をことさら取り上げ、これを「社会常識として団交になじむものではない」と捉えた上、組合が意図を明らかにしないので団交ができないとする会社の主張には合理性がなく、採用できない。
(イ) さらに、会社は、組合が出向契約に係る申入れについて「請負契約」、「偽装請負」など誤った記載をしており理解できない旨主張するが、本件団交申入れの経過からすると、対象となる契約を特定することは十分に可能であり、単に表現を捉えて組合の主張が理解できないとする会社の主張は採用できない。
(ウ) したがって、会社が主張する拒否事由にはいずれも正当な理由があったものとは認められない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成19年(不)第30号 全部救済 平成21年4月21日
 
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