労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪市 
事件番号  中労委平成21年(不再)第38号 
再審査申立人  自治労大阪公共サービスユニオン 
再審査申立人   
再審査被申立人  大阪市 
再審査被申立人   
命令年月日  平成22年 9月 1日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   市は、国民健康保険料の訪問徴収業務のために任用している有期限の非常勤嘱託職員の20年度任用について、市は19年12月25日の組合との協議で任用期間が満了する者から行うと述べたが、結局は公募による任用及び業務の一部民間委託を行った。
 本件は、①20年度徴収嘱託員の任用についての合意内容に反し、(a)組合との団交を行わずに同徴収嘱託員の公募を開始したこと、(b)同公募及び同年度徴収業務の民間委託を行うことにより同徴収嘱託員の募集定員を削減し組合員の一部(19名)を再任用しなかった(雇止めした)こと、及び②同徴収嘱託員の任用についての4回の団交申入れに対する市の対応が不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労委は、上記の申立事実のうち、②の本件団交申入れに対応する20年1月29日と2月21日の協議において、本件徴収業務の一部を民間委託する予定であることについて十分な説明を行わなかったことは労組法7条2号に該当するとして、市に文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
組合は、これを不服として再審査を申し立てた。
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。
判断の要旨  1 12.25協議における20年度徴収嘱託員の任用に関する合意の有無について(争点1①)
12.25協議における市の発言を、組合が更新満了者の継続雇用に向けた運動の成果が得られ、20年度徴収嘱託員について更新満了者の優先任用が行われるものと受け取ったことは首肯できる。しかし、同協議において、市は同徴収嘱託員の任用については更新満了者から行いたいと考えていると述べているにすぎず、また、組合と市の間で同徴収嘱託員の任用について最終的な内容を決定するための詰めの協議が行われたとまではいえないことからすると、上記市の発言はこの時点での市の一定の考えを述べたものとみるのが相当であり、合意が成立したとみることは困難である。
 また、組合は、上記合意が成立していなかったとしても、下記[2]、[3]の とおり、不当労働行為に当たると主張していると解し得る。
2 20年1月24日に公募を開始したことは労組法7条2号に違反する不当労働行為に 当たるか(争点2②)
 12.25協議において、市は、上記1のとおり組合の要求に沿うような姿勢を示していたことからすれば、組合に説明・協議しないまま公募を開始した市の対応は労使関係上の配慮を欠くものとして問題がある。しかし、市は、1月17日に公募によること、22日に公募手続を開始することを通知していること、募集後は謝罪していること、1.29協議では公募の理由や定員等への質問に回答していること等から、労組法7条2号に違反する不当労働行為とまでは認め難い。
3 公募及び一部民間委託を行うことにより、組合員の一部を再任用しなかったことは 労組法7条1号及び3号に違反する不当労働行為に当たるといえるか(争点1③)
 市が公募及び民間委託を行うことには一定の合理性があり、組合の存在を嫌悪していたとは認め難いこと等から、組合員を排除したり組合を弱体化するためにこれら措置を行ったとはいえない。さらに、同徴収嘱託員の任用試験の方法・内容等が組合員の合否決定に影響を与えたともいえないから、市が組合員の一部を再任用しなかったことは労組法7条1号及び3号の不当労働行為に該当するということはできない。
4 本件団交申入れに対する市の対応が不誠実なものであったといえるか(争点2)
 徴収嘱託員の労働関係については労組法が適用され、その任用方法をどのようにするかは更新満了者が次年度に市に任用されるか否かという組合員の処遇に直接係わる問題であり、同人らの処遇に決定的な影響を与えるものであるから、任用問題は義務的団交事項に該当する。市は、組合からの同問題の団交申入れに対し誠実に協議に応ずべき義務がある。したがって、市の任用や選考に関する事項は管理運営事項であるとする対応は、適切さを欠く。
 12.25協議における市の発言が実行されない中で、1.29協議及び2.21協議が行われ、これら協議において、市は、民間委託の内容や20年度徴収嘱託員の採用人員決定の理由等について具体的な説明をしていないから、同徴収嘱託員の任用について組合の疑問を解消し、理解を得られるよう誠意をもって説明を尽くしたとはいえず、団体交渉の実質を有する協議を行ったとも認め難い。したがって、この段階の協議においては、市は労組法7条2号に違反したと認められる。
 一方、2.21協議後の団交等において、市は、組合に対し市の方針を具体的に示し、団交の実質を有する協議が行われたとみることができ、市の対応も不誠実なものとはいえないから、本件団交申入れに係るその余の協議・交渉における市の対応は不当労働行為には当たらない。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成20年(不)第13号・第41号 一部救済 平成21年10月2日
 
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