概要情報
事件名 |
写研 |
事件番号 |
中労委平成20年(不再)第5号
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再審査申立人 |
株式会社写研 |
再審査申立人 |
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再審査被申立人 |
全日本金属情報機器労働組合東京地方本部 |
再審査被申立人 |
全日本金属情報機器労働組合東京地方本部北部地域支部写研分会 |
命令年月日 |
平成22年 8月 4日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、改正された高年齢者等の雇用の確保等に関する法律による高年齢者雇用確保措置の導入を議題とする、組合との団交において、社長が出席して資料を提示して具体的な説明を行うことをせず、「検討中」との回答を繰り返したり、回答した方針を翻すなど不誠実に対応したことが、労組法7条2号の不当労働行為に当たるとして申し立てられた事件である。
東京都労委は、会社の方針に決定的影響力を有する社長が団交に出席した上で、資料を提示して具体的な説明を行うことなく、繰り返し「検討中」と回答し、「検討の結果できないという結論が出た」と回答するにとどまり、誠実に対応しなかったことが不当労働行為に当たると判断し、①社長が出席した上での誠実団交応諾、②文書手交、③前記各項の履行報告を命じた。
会社は、これを不服として、再審査を申し立てたものである。 |
命令主文 |
初審命令主文を次のとおり変更する。
会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を組合に交付しなければならない。
記
平成 年 月 日
全日本金属情報機器労働組合東京地方本部
執行委員長 X1 殿
全日本金属情報機器労働組合東京地方本部北部地域支部写研分会
執行委員長 X2 殿
株式会社写研
代表取締役 Y
当社が、貴組合から申入れのあった高年齢者雇用確保措置の導入を議題とする、平成17年9月16日から同19年3月30日までの間に開催された団交において、交渉担当者の権限を明確にしないまま、繰り返し「検討中」と回答し、「検討の結果できないという結論が出た」と回答するにとどまり、資料を提示して具体的な説明を行わないなど誠実に対応しなかったことは、中労委において、労組法7条2号に該当する不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は、文書を交付する日を記載すること。) |
判断の要旨 |
1 雇用確保措置の導入に関する団交
(1)雇用確保措置の導入に関する団交における会社の対応の不誠実性について
ア 団交における会社の具体的説明等の誠実性について
会社が、団交において、①繰り返し「検討中」と回答するのみで、導入に向けた具体的な回答を行わず、「検討の結果できないという結論がでた」と回答するにとどまったこと、②組合が求めた資料(経営計画、経営方針、財務諸表等)の開示要求に応じなかったこと、加えて、③その間にも組合員が定年を迎えて本意でない退職を余儀なくされている経過をも併せ考慮すれば、会社の本件団交における対応は、不誠実な交渉態度であったといわざるをえない。
イ 団交における会社側出席者について
会社は従前から総務部長を中心として団交には応じており、基本的労働条件である賃金・一時金についても社長が出席しなくても妥結してきた経緯がある。交渉担当者を誰にするかの決定権は事業の代表者にあるが、一般に、代表者以外の者が団交の担当者として、当該企業組織内の管理・決定権限の配分に応じて団交権限を付与されていれば、当該交渉担当者は付与された権限に応じて、当該事項につき処理権限(妥結権限、協約締結権限)がなくとも、交渉に応じた上、妥結または協約締結に関しては権限者と諮って適宜の処置をとることができる。
そうすると、本件団交において、事態を進展させ、あるいは、合意に向けた交渉の積重ねを期待するためには、会社側は、少なくとも、交渉担当者である総務部長に付与した権限の内容をより明確にすべきであったというべきである。
ウ 結論
前記アのとおり、団交における会社の具体的説明等の対応は不誠実であり、また、イのとおり、出席者についても会社は交渉担当者に付与した権限の内容を明確にしていないなど不誠実であったから、本件団交における会社の対応は、不誠実であったといわざるを得ない。
(2)会社の雇用確保措置導入による救済利益の消滅について
本件再審査申立後に雇用確保措置が導入されてはいるものの、①早期退職により大半の組合員は退職したが、なお4名の組合員が在職して今後とも労使関係は存続し、雇用確保措置導入をめぐっての会社の団交における対応は不誠実であり、将来の労使関係の安定のためにこのような行為を繰り返さないことが要請され、なお会社の不当労働行為責任を明確にしておくことが必要であること、②4名の在職組合員に関して、今後継続雇用制度の対象者に係る基準の改正等を巡って団交が引き続き開催されることが見込まれること等から、救済利益が消滅したとは言えない。
3 救済方法について
雇用確保措置は、組合の要求どおりの内容ではないものの既に導入されているから、現時点においてこの点に関する団交応諾を命じることは相当ではない。
団交における交渉担当者は、原則として当事者の自主的な判断に委ねられているが、雇用確保措置に係る実質的な交渉を行うには、会社が交渉担当者に付与した権限の内容を明確にした上で、資料を提示して具体的な説明を行うなど誠実に対応する必要があること、今後の労使関係において、雇用確保措置の対象者に係る基準の改正等をめぐる団交が継続することが見込まれるところ、雇用確保措置導入後の会社の団交における対応も到底誠実であったと言い得ないことなどの労使関係を考慮し、本件における救済としては、主文のとおりとする。 |
掲載文献 |
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