労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪シンフォニカー協会 
事件番号  中労委平成21年(不再)第5号 
再審査申立人  一般財団法人大阪シンフォニカー協会 
再審査被申立人  日本音楽家ユニオン
組合員X 
命令年月日  平成22年7月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、協会が、組合員Xを、平成19年4月1日をもって、パーカッション首席奏者からパーカッション奏者に降格したことが、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たるとして申し立てられた事件である。
2 初審大阪府労委は、本件降格は、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たるとして、協会に対し、①本件降格がなかったものとして取扱い、降格がなければ得られたであろう首席奏者に支給される手当相当額を支払うこと、②文書交付を命じたところ、協会はこれを不服として再審査を申し立てた。
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。
判断の要旨  争点:本件降格は、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に該当するか。

1 組合員Xが本件降格により受ける不利益の程度について
 本件降格により、Xの月収は約3割もの減収となり、経済的な不利益が存在することは明らかであり、また、演奏の機会が大幅に減少し、楽団員としての技量や経験を発揮できなくなるという職業上の不利益や、協会外部における社会的評価の低下をも招来するという音楽家としての重大な精神的不利益も存在する。従って、本件降格によりXには労組法7条1号所定の不利益が存在することは明らかであり、かつ、その程度は重大であると認められる。
2 本件降格の合理性・相当性等について
 本件降格に先行する18年11月8日の退職勧告についてみると、協会の事務局長は、Xに懲戒解雇という重大な処分を示唆することにより退職勧告を受け入れさせようとしたものであり、同人が応じなかったことから、重大な職業的ないし精神的不利益を伴う本件降格を行うに至ったものと推認できる。
 次に、本件降格は、首席奏者からの降格が行われた従前の例と比較して、演奏能力が理由とされていないにも関わらず、一挙に2段階の降格となっており、より重大な不利益を課している点で明らかに均衡を欠くものであり、また、非違行為不のみを理由とする事例と比較しても、不利益の程度は重大であり、均衡を欠くといわざるを得ない。よって。本件降格の理由とされた組合員Xの非違行為(リハーサルの遅刻等及びこれらに係る報告書の未提出)は、形式的には就業規則に違反すると言い得るものではあるが、首席奏者から一般奏者への降格は、協会における従前の事例と比較して、不利益の程度において均衡を欠くものであり、本件降格理由の合理性には相当の疑問がある。さらに、本件降格に至る手続等においても、協会は不利益処分の内容を告知したとは認められず、適正であったとはいえない。
 従って、本件降格について合理性・相当性があるということはできない。
3 本件降格とXの組合活動等との関連性及び本件降格当時の労使事情について
 協会は、組合に対し、要求に応じられない理由について具体的な説明をして組合の納得を得ようとするなどの姿勢が全くなく、交渉相手として組合と真摯に向き合っているものとはいえない。協会は、楽団内に組合の支部が結成される前から組合に対し否定的な感情を有していたこと等を併せ考えると、協会は、当初から、組合に対し、嫌悪の情を抱いており、交渉においても誠実とはいえない態度を取っていたと推認される。また、Xは、楽員会の会長として楽団員の労働条件に関し積極的に活動し、その後、組合関西地方本部に加入して同人の処遇等に関する団交に出席し、組合関西地方本部大阪シンフォニカー結成に伴い副代表運営委員に就任し団交等にも出席する等、組合役員として組合員活動の中心としての役割を担っていた。これに対し、協会の事務局長は、Xのこうした組合活動等を十分に認識しており、両人は、Xが楽員会会長であった頃から一貫して緊張関係にあったといえる。協会は組合に対し、否定的な感情を持ち続けていたことも併せ考えると、協会は、本件降格当時、組合活動の中心を担っていたXの存在や活動に契約の間を有していたと推認できる。
 これらからすると、協会は、従前から、組合に対し嫌悪の情を抱いていたところ、Xが組合活動を行っていることに嫌悪感を強め、組合関西地方本部大阪シンフォニカー結成の前後の時期に、同組合員が非違行為等を行ったことを捉えて、あえて本件降格という重大な不利益を伴う行為を行うことにより、Xの組合活動をけん制するとともに、組合の活動を抑制し、その弱体化を企図したものと推認できる。
4 結論
 以上の次第であるから、協会が、組合員Xをパーカッション首席奏者からパーカッション奏者に降格したこと(本件降格)は、Xの組合活動等を理由とする不利益取扱いであり、これによって組合の組織運営に支配介入したものであるから、本件降格は労組法7条1号及び3号の不当労働行為に該当するとした初審命令の判断は相当である。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成19年(不)第38号 全部救済 平成21年1月27日
 
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