労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 エムズワーカース
事件番号 東京都労委平成21年(不)第9号
申立人 全日本金属情報機器労働組合東京地方本部大田地域支部、同エムズワーカース分会
被申立人 エムズワーカース株式会社
命令年月日 平成22年7月6日
命令区分 全部救済
重要度  
事件概要  本件は、(1) 被申立人会社が、申立人組合分会長X1の病気療養からの原職復帰を拒否したこと等に係る団交申入れ及び、業務委託契約の打ち切り・全従業員の解雇通告等の問題に係る団交申入れに対する会社の対応が、団交拒否及び組合運営に対する支配介入に当たるか、(2) 会社がX1に対して行った就労拒否が、組合活動を理由とする不利益取扱い及び組合運営に対する支配介入に当たるかが否かが争われた事件である。
 東京都労委は申立てを認め、(1) 団交誠実応諾、(2) X1が平成21年1月19日から3月31日まで就労したものとして取扱い、その間の賃金相当額を支払うこと、(3) 文書交付、(4) 履行報告を命じた。
命令主文 1 被申立人エムズワーカース株式会社は、申立人全日本金属情報機器労働組合東京地方本部大田地域支部及び同全日本金属情報機器労働組合東京地方本部大田地域支部エムズワーカース分会が、平成21年1月22日付け及び2月27日付けで申し入れた団体交渉に、誠意をもって応じなければならない。
2 被申立人会社は、申立人分会の分会長X1について、同人が平成21年1月19日から同年3月31日まで就労したものとして取り扱い、同人に対し、同期間中の不就労を理由に支給しなかった賃金相当額(役職手当を含む。)を支払わなければならない。
3 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。

年   月   日
全日本金属情報機器労働組合東京地方本部大田地域支部
執行委員長  X2 殿
全日本金属情報機器労働組合東京地方本部大田地域支部
エムズワーカース分会
分会長    X1 殿
エムズワーカース株式会社
代表取締役   Y

当社が、貴支部及び貴分会から平成21年1月22日付け及び2月27日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったこと並びに分会長X1殿に対して行った就労拒否は、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
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4 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
判断の要旨 1 申立人組合の適格性に係る会社の主張について
  会社は、組合が、労組法にいう労働組合の資格要件を欠き、法適合組合でないので本件申立てを却下すべきであると主張するが、支部及び分会は、労組法上の労働組合として、いずれも本件救済申立適格を有することが明らかであり、会社の主張は採用できない。
2 団交について
 組合が申し入れた団交事項はいずれも組合員の労働条件に係るものであり、会社に団交応諾義務があることは明らかであるところ、会社が団交に応じない正当な理由があるとする主張はいずれも採用することができず、会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たる。
 また、会社は、文書をもって、組合の謝罪や誓約を求め、あるいは組合に関する釈明を求めることに終始して団交を拒否し続け、従業員の全員解雇という重大な事態に立ち至っても「合意書」(労働協約)を遵守せず、団交に全く応ずることなく、殊更に組合の団交権を無視してきたことを考慮すれば、本件団交拒否は、支部及び分会の運営に対する支配介入にも該当する。
3 分会長X1の就労拒否について
(1)X1は21年1月16日の退院後、会社の求めに応じて就労が可能である旨の診断書を提出したが、会社は「医療情報開示同意書」及び会社指定医の「受診同意書」の提出を求め、X1が「受診同意書」を提出しなかったところ、X1の就労を認めなかったものであるが、会社は、X1が提出した診断書では就労を認められない理由を説明していない。
 また、会社は、X1の就労を禁止したのは会社が安全配慮義務を負うため当然の措置である旨を主張するが、X1が「医療情報開示同意書」を提出したにも関わらず病院にX1の診断結果を確かめることはせず、また、会社指定医を特定してX1に受診を求めるなどの具体的な指示も全く行わなかった。かかる対応は、安全配慮の見地からしても極めて不自然である。
(2)一方、会社はX1の就労問題を含む団交申入れを正当な理由なく拒否しており、これにX1が分会活動の中心的メンバーであったことを併せ考慮すると、前記(1)の会社の対応は、X1の組合活動を嫌悪している現れということができる。
 そうだとすれば、会社はX1の組合活動の故をもって、同人が復職するに当たり会社指定医の受診同意書を提出しなかったことを口実に就労を認めず、かつ、賃金を支払わないという不利益を課したものと認めざるを得ない。
 また、X1が分会長として会社における組合活動の中心的役割を果たしてきたことから、会社は、同人を職場から排除し、組合活動の減殺を図ったものと推認せざるを得ない。
 したがって、会社が、X1が就労可能な健康状態となった21年1月19日以降も同人の就労を認めず、1月分以降3月分までの賃金を支払わなかったことは、同人の組合活動を理由とした不利益取扱いに該当し、また、同人を職場から排除したことは、組合に対する支配介入にも該当する。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成22年(不再)第44号 棄却 平成23年5月11日
 
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