労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 吾妻自動車交通
事件番号 中労委平成20年(不再)第21号
再審査申立人 吾妻自動車交通株式会社(Y1会社)、有限会社飯坂吾妻交通(Y2会社)
再審査被申立人 全国自動車交通労働組合連合会福島地方本部福島支部吾妻分会
命令年月日 平成21年9月16日
命令区分 一部変更
重要度 重要命令
事件概要 1  本件は、(i)Y1会社が、19年4月1日付けをもって解散の登記を行い(以下「本件会社解散」)、同年3月31日付けをもって組合員を解雇し(以下「本件解雇」)、さらに、Y2会社が組合員以外の者を雇い入れる一方で組合員のみを雇い入れなかったこと(以下「本件雇入れ拒否」)、(ii)(i)に係る同月18日付け団体交渉申入れ(以下「本件団交申入れ」)を拒否したこと(以下「本件団交拒否」)、(iii)Y1会社相談役の組合員に対する同月22日の発言等が不当労働行為であるとして、同月5日、13日、同年4月5日に救済申立てがあった事件である。
2 初審福島県労委は、上記1の申立事実は、いずれも不当労働行為に該当するとした。そして、Y2会社は、解散前のY1会社と実質的連続性及び一体性を有しているから不当労働行為責任は免れないとして、Y2会社に対し、組合員への解雇がなかったものとしての取扱い及びバックペイを、Y1会社に対し、Y2会社と連帯してのバックペイ及び組合の組織運営に支配介入してその活動を妨害したことを謝罪し今後このような行為を行わないことを約束する旨の文書手交等を命じた。
3 Y1会社及びY2会社(以下「両社」)は、これを不服として、20年6月12日、再審査を申し立てた。
 なお、Y1会社は、同年8月11日、会社清算を結了したとして翌12日、閉鎖登記手続を行った。
命令主文 初審命令主文を次のとおり変更する。
(1) 両社は本件組合員に対し、次の措置を講じなければならない。
(i) Y2会社は、同社において、Y1会社から解雇された時点での原職に相当する職務に就労させること。
(ii) 両社は、本件組合員が就労するまでの間(死亡組合員については相続人に対して死亡時までの間)のバックペイを行うこと。ただし、従前の収入を明らかに上回る3名の組合員については、20年分のバックペイ額からその1割に相当する額を控除することができる。
(2) 両社に対する文書手交(上記iiの1の(i)から(iii)の申立事実について)
判断の要旨 [1] 本件会社解散、本件解雇及び本件雇入れ拒否について
(1) 両社は、資本、役員、業務運営、労使関係等からみて、本件会社解散前より長らく両社の代表取締役であったY3社長の強力な支配力・影響力の下で実質的に一つの経営体として運営されてきたが、Y1会社にあっては、従前からの累積した多額の欠損金を抱えていたから、経営政策上何らかの手立てを講じることが必要であったとはいえる。しかし、最近の単年度決算ではほぼ収支が均衡していたとみられるのであるから、同社の事業を廃止し解散をしなければならない程の必要性があったとはいえない。そして、本件会社解散後の両社の事業は、Y2会社がY1会社の事業の一部を引き継ぐ仕方でY2会社に集約されて継続されているとみられるところ、かねてからY3社長は組合ないし組合員の存在に対し嫌悪の念を有していたのであるから、Y1会社が従業員全員を解雇し、Y2会社が組合員以外の者を雇い入れる一方で、組合員である者のみを雇い入れなかったことは、一つの経営体としての両社がY3社長の組合嫌悪の念に基づき、Y1会社の事業の一部をY2会社に事実上引き継ぎ両社の事業を実際上Y2会社に集約する施策を利用して、組合及び組合員の排除を行ったものとみざるを得ない。よって、両社による本件解雇及び本件雇入れ拒否は労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する。
(2) 不当労働行為救済制度の目的にかんがみれば、バックペイを命じるに当たって、被解雇組合員が中間収入を得ていた場合にこれを控除するか、どの程度控除するかは、被解雇組合員の個人的被害の観点のみならず、組合活動一般に対する侵害の面をも考慮し、当該解雇により侵害された集団的労使関係秩序からの回復、確保の観点からも判断する必要がある。本件解雇及び本件雇入れ拒否によって生じた組合員の個人的被害に着目すれば、組合員の経済的不利益は、中間収入額の限度において回復されているとみることもできなくはない。しかし、組合活動一般に対する侵害の面に着目すれば、組合員の再就職は必ずしも容易ではなかったこと、従前の収入を超えた収入を得
ている者は3名にすぎないこと、本件雇入れ拒否等により組合員の組合活動を継続する意思を大きく萎縮させられたものと推認できること等から本件解雇及び本件雇入れ拒否は組合活動一般に対し極めて重大な制約的効果を与えたものであり、これを考慮に入れることは、集団的労使関係秩序の回復、確保のためには是非とも必要である。
したがって、中間収入額が従前の収入を明らかに上回る組合員3名については、中間収入の額をも考慮して20年分のバックペイ額からその1割に相当する額を控除できることとする。
(3) Y1会社が解散したものであるとしても、バックペイ及び文書手交は清算事務といえるものであり、清算の目的の範囲内であるから、Y1会社がこれら命令を履行することは法律上実現可能である。また、同社にはいまだ残余財産が存する可能性は否定し難く事実上の実現可能性がないとまではいえない。
[2] 本件団交拒否について
Y1会社は、団体交渉開催に向けた行動をしておらず、また、その後も本件団交申入れに応じなかったことを自認している。そして、本件審査手続において解雇理由を明らかにしたことがその正当な理由となるものではない。したがって、本件団交拒否は労働組合法第7条第2号に該当する。
[3] Y1会社相談役の組合員に対する発言等について
同相談役の発言は、未払退職金に係る不動産仮差押えの取下げや組合からの脱退を求めたり、組合の執行委員長を交代させることにより本件救済申立てを取り下げるよう前書記長に求めるものであり、これら発言は組合の運営に支配介入するものであることは明らかである。そして、同相談役は労働組合法第2条第1号の使用者の利益代表者としての地位にあったといえるから、これら発言は労働組合法第7条第3号に該当する。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福島県労委平成19年(不)第1号・2号 一部救済 平成20年5月27日
 
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