概要情報
事件名 |
日本航空インターナショナル |
事件番号 |
中労委平成20年(不再)第11号 |
再審査申立人 |
株式会社日本航空インターナショナル |
再審査被申立人 |
日本航空キャビンクルーユニオン |
命令年月日 |
平成21年1月21日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
重要命令 |
事件概要 |
本件は、会社が、(ア)組合の申請に基づき交付していた資料を交付しなくなったこと、(イ)羽田空港ビル3階に組合事務所を貸与しなかったこと、(ウ)管理職らに組合員に対し組合からの脱退を勧奨させたり、特定の労働組合への加入を勧誘させたりしたこと(「本件脱退勧奨等」)が不当労働行為であるとして、救済申立てがなされた事件である。
初審東京都労委は、上記(ウ)は不当労働行為に該当するとして、会社に対し脱退勧奨等の禁止及び文書掲示を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。
本件再審査の対象は、本件脱退勧奨等の不当労働行為該当性である。
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命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1)ア 本件脱退勧奨等の事実について、会社は当該事実はない旨主張するが、本件審査によれば、本件脱退勧奨等を組成する事実のうち、5名の組合員に対する3名の管理職(「本件管理職」)による各脱退勧奨の事実を認めることができる。
イ 本件管理職の言動は、直属の部下である組合員に対し、職位昇進・昇格について、別組合に入らないと不利益を被ることを告げたり、国際便乗務員の選抜に関して、組合に止まると不利益を被ることを告げる等して、組合からの脱退を勧奨するとともに、別組合への加入を勧奨したものと認めることができる。
(2) 会社の不当労働行為責任について
次に、これら管理職の言動が、会社に帰責させるべき不当労働行為に該当するかどうかについて検討する。
ア 労組法2条1号の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体して、労働組合からの脱退勧奨、別組合への加入勧奨等労働組合に対する支配介入を行った場合は、同法7条3号所定の支配介入に当たると解される。
イ 本件管理職は、客室乗務室長(部下のマネジャーらを統括し、客室乗務員の二次人事考課等の権限を持つ)又は客室マネジャー(客室乗務員の一次人事考課等の権限を持つ)であり、労組法2条1号の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者といえる。
ウ (ア)会社の経営統合が本格化した17年1月ころには、管理職が入手した脱退届を利用して作成された多数の脱退届が組合に提出されたり、同年以降組合員には脱退するものが多く生じていたこと、(イ)本件脱退勧奨等は3つの客室乗務室のうちの2つにまたがる3名の管理職によって、その配下にある5名の組合員に対して行われており、そこでは同脱退勧奨等に際して会社が組合に対して否定的な認識を有していることを示して脱退を促していること、(ウ)本件脱退勧奨等が行われた客室乗員部とは異なる職場においても、管理職有志が開催した学習会で組合を世間一般がどう見ているか認識できていない労働組合である等と分析していたことが認められる。
これらのことからすると、会社は、多数組合である別組合は会社にとって好ましい存在であるが、組合は好ましからざる存在と考える意向があったものと推認できる。
エ 本件管理職による言動は、2つの客室乗務室の管理職によって、会社合併に向かっている時期に、その配下の5名の組合員に対しほぼ同様の態様で行われているので、会社の上記ウのような意を体して、組合員に対し組合からの脱退と別組合への加入を勧奨したものといえる。
したがって、本件管理職の言動について、会社は労組法7条3号の不当労働行為の責を負う。
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掲載文献 |
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