労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 中央大学生活協同組合
事件番号 中労委平成19年(不再)第5号
再審査申立人 三多摩合同労働組合、組合員A
再審査被申立人 中央大学生活協同組合
命令年月日 平成20年3月19日
命令区分 一部変更
重要度  
事件概要 1 本件は、生協が、(1)Aに対して3回の懲戒処分を行ったこと、(2)Aの平成13年度の雇用契約更新に当たり年間所定労働日を大幅に削減したこと、(3)Aの平成12年度冬期慰労金及び平成13年度夏期慰労金を削減し、平成12年度期末手当を支給しなかったこと、(4)Aに対し平成13年8月1日付けで配置転換を命じたこと、(5)Aの配転問題等を議題とする団体交渉に応じなかったこと、(6)平成14年度の総代会(「総代会」)にAを出席させなかったこと、(7)総代会の席上で生協の専務理事がAや組合を誹謗中傷する発言を行ったこと、(8)Aに対し平成17年4月9日付けで雇用関係終了を通知したこと、(9)Aの平成17年度雇用契約問題等に関する団体交渉を拒否したことが不当労働行為であるとして、組合及びA(「組合ら」)が東京都労委に救済を申し立てた事件である。
2 東京都労委は、生協に対し、3回の懲戒処分がいずれもなかったものとしての取扱い、平成12年度期末手当の是正、上記1の(1)、(2)、(5)及び1の(3)のうち平成12年度期末手当に関する文書交付を命じ、その余の申立てを棄却ないし却下したところ、組合らはこれを不服として再審査を申し立てたものである。
命令主文 1 主文要旨(初審命令主文を一部変更)
(1) 総代会における専務理事の発言に関し、今後同様の行為を繰り返さない旨の文書交付
(2) その余の本件再審査申立ての棄却
判断の要旨 (1) Aに対する配置転換命令(「本件配転命令」)について(救済申立てを棄却)
 本件配転命令によりAに対する不利益が生じたことは認められるが、配置転換の理由はAと所属長との信頼関係喪失による職場環境悪化等によるものであるとの生協の主張には相当の理由があり、Aが組合の組合員であること等を主な理由として行われたものとはいえない。したがって、本件配転命令が、Aが組合員であることを理由とした不利益取扱いであるとはいえず、また、組合らの弱体化を企図した支配介入であるということもできないとした初審判断は相当である。
(2) Aの総代会への出席を拒否したことについて(救済申立てを棄却)
 総代会入場拒否に関する生協の対応からは、Aに対する入場拒否の理由が、同人が労働組合の組合員であることを理由としたものであったということはできない。また、総代会において争議行為に関する報告が予定されていたことを考慮しても、総代会への出席は労働組合活動の一環であるとはいえない。したがって、Aの総代会への出席を拒否したことは、同人の組合活動等を理由とする不利益取扱いであるとはいえず、また、組合らの弱体化を企図した支配介入であるということもできず、初審判断は相当である。
(3) 総代会における専務理事の発言について(労組法7条3号の不当労働行為に該当)
 総代会における専務理事の発言内容(「争議行為をして相手を屈伏させ解決金を取るという恐喝のプロ集団というように認識している」等)は、組合らの存在及び活動に対する社会的評価を低下させるものであるばかりでなく、組合らに対する誹謗中傷に当たる。

また、総代会における発言内容等が広く外部者等に伝わる可能性は当然に存在したといえる。
 したがって、総代会における専務理事の発言は、組合らを誹謗中傷し、生協従業員の組合に対する不信や反感を醸成するものであって、組合の組織運営に対する支配介入であり、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
(4) Aに対し雇用関係終了を通知したこと(「本件雇用関係終了通知」)について(救済申立てを棄却)
 生協はAに対し、最高裁決定によって本件配転命令の有効性が法的に確定したことに依拠して、本件配転命令先を勤務場所とする平成17年度雇用契約の締結を求めたものであるが、Aがこれに応じなかったため、本件雇用契約終了通知を行ったことが認められる。そうすると、生協が本件雇用関係終了通知を行うに至ったのは、Aが本件配転命令先を勤務場所とする雇用契約締結に応じなかった結果であるといわざるを得ないのであり、これがAの組合活動等を理由とするものであったとまでいうことはできない。したがって、初審判断は相当である。
(5) Aの平成17年度雇用契約問題等に関する団体交渉拒否(「本件団交拒否」)について(救済申立てを棄却)
 本件団交拒否に至る経過をみると、生協が主張する理由は団体交渉を拒否する正当な理由とはならない。しかしながら、Aの雇用関係存在確認反訴請求訴訟について同人の請求棄却判決が確定した後も、組合はあくまでも本件配転命令前の勤務場所におけるAの就労を要求するのに対し、生協は既にAとの間に雇用関係はないとしており、両者の主張に歩み寄りの余地はないといわざるを得ない。そうすると、現時点で、組合が上記確定判決等があったことを前提として交渉に臨むなどの事情変更がない限り、Aの平成17年度雇用契約問題等について団体交渉により解決する可能性はない。よって、組合は現時点において生協に平成17年度雇用契約問題等を議題とする団体交渉に応じることを要求することはできず、本件団交拒否を不当労働行為ということはできない。したがって、初審判断は結論において相当である。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成13年(不)第94号、平成15年第69号、第64号 一部救済 平成18年12月19日
 
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