概要情報
事件名 |
モービル石油(団交拒否) |
事件番号 |
中労委平成4年(不再)第27号 |
再審査申立人 |
スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合大阪支部連合会モービル大阪支店支部 |
再審査被申立人 |
エクソンモービル有限会社 |
命令年月日 |
平成20年1月23日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
支部が申し入れた、[1]モービル石油労働組合(別組合)の組合員が支部組合員に行った差別発言(以下「本件差別発言」)に関する団交、[2]団交等に関する事務折衝、[3]支部三役であるX1及びX2の人事異動に関する団交に関する会社及びその大阪支店の対応が、団交拒否ないし不誠実団交に該当するとして救済申立てがあった事件である。 初審大阪府労委は、大阪支店に対する申立てを却下し、会社に対する申立てを棄却したところ、支部はこれを不服として再審査を申し立てた。
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命令主文 |
本件再審査申立てを棄却 |
判断の要旨 |
(1) 大阪支店の被申立人適格について 大阪支店は法人たる会社の部分的な組織に過ぎず、法律上独立した権利義務の帰属主体と認められないことから、不当労働行為の救済手続における被申立人として認めることはできない。 (2) 本件差別発言に関する団交拒否について ア 本件差別発言に関する会社の団交応諾義務の有無 本件差別発言は、支部の団結を揺るがそうとする会社の具体的意向を受けて行われる等、会社に帰責すべき事実が認められるのであれば、会社には団交応諾義務が認められるべきであるが、会社の具体的意向をうかがわせる事実は認められず、また同発言をしたY1は、管理職ではなく一社員であり、当該発言を会社の意を受けて行った事実は認められず、その他会社に帰責すべき特段の事由は認められない。 しかしながら、本件差別発言は、支部組合員の職場環境上の問題となる余地があったので、その観点から再発防止及び職場環境改善問題として団交を求める場合には、会社は団交応諾義務を負うというべきである。 イ 会社の対応が団交拒否ないし不誠実な団交態度に当たるか否か 団交経過をみるに、[1]会社は7回の支部団交に応じた後団交を打ち切ったものであること、[2]会社は、本件差別発言は電話での個人と個人のやり取りでプライベートな中で出た発言であり、会社が謝罪すべき問題ではない、差別をなくすために研修を行う、人事・雇用については差別しない等会社の責任の有無及び今後の対応について見解を表明していること、[3]第4回及び第5回団交以降、支部は会社に支部及び支部組合員に対する謝罪を主張し、会社はこれを否定して労使の協議が膠着状態となったこと、[4]膠着状態となった第5回以後の団交においても、組合及び支部は、会社の釈明及び謝罪要求とF取締役の団交出席要求に終始していたこと等が認められる。 以上の事実からすれば、会社は支部の質問や追及に相応の回答をし、また、会社として一応の対策を講じていることが認められるから、会社の対応が不誠実であったとまではいえず、かつ、上記[3]の会社回答後の団交において労使の主張が平行線となっていることが認められるから、第7回団交までの会社の交渉態度を不誠実なものとはいえないとし、第7回団交で打切り宣言をして以降団交に応じなかったことはやむを得ないとした初審の判断は相当である。 (3) 事務折衝拒否について 会社における事務折衝は、事務処理的事項(団交の当事者・担当者・交渉事項の明確化や日時・場所・時間の設定等)のほか、一部団交の補足機能を有していたことから、労組法第7条第2号の法的保護が及ぶ余地がある。 しかしながら、会社の対応をみるに、[1]会社の人数制限には、支部側出席者が支部組合員全員であったことから合理性が認められ、[2]「緊急性がない、忙しい」として応じなかったことは、事務折衝が就業時間中に開催され、支部の申入れは頻繁に行われたことから合理性が認められ、[3]会社は事務折衝自体を一切拒否するものではなく、事実上相当数の事務折衝等の労使の折衝に応じており、[4]会社、支部間の団交が事務折衝拒否によって、不適切に遅延したり開催されなかったりするなど団交の遂行に不当な支障を来たしたことの具体的な事実の証明がないこと等を勘案すれば、本件事務折衝拒否が団交拒否ないし不誠実団交に当たるとは認められず、さらに支配介入であるともいえないから、初審命令の判断は結論において相当である。 (4) 本件異動に関する団交について 本件異動は、義務的団交事項と解される余地があるとしても、事前協議義務があるか否かの問題とは自ずから別の問題であって、労働協約上の根拠、労使慣行その他の特段の事情なしには事前協議義務は認められない。 本件異動に関する団交において、会社は、[1]労働条件の変更はなく、事前協議約款が適用される転勤ではない等と説明し、[2]異動後に労働条件上の具体的問題が生じた場合は団交する旨約し、後日実際にX1の業務量増加の件について団交に応じているから、会社の対応が誠実さを欠いていたとはいえず、さらに、双方の主張が団交や事務折衝においても平行線をたどり、いわゆる行詰まり状態に至っていたものと認められるから、会社の対応やその後会社が本件団交に応じなかったことが不当労働行為に該当するとまではいえず、初審の判断は結論として相当である。
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掲載文献 |
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