労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 エッソ石油・モービル石油
事件番号 中労委平成6年(不再)第48号
再審査申立人 スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合
再審査被申立人 エクソンモービル有限会社
命令年月日 平成19年9月5日
命令区分 棄却
重要度  
事件概要  本件は、エッソ石油株式会社(以下「エッソ石油又はエッソ」)及びモービル石油株式会社(以下「モービル石油又はモービル」)が組合に対して行った下記(1)ないし(26)の各行為が、不当労働行為に当たるとして、大阪府労働委員会に申立てがあった事件である。なお、エッソ石油及びモービル石油は、平成14年6月1日に合併し、エクソンモービル有限会社に商号を変更した。
(1)スト控除時期の変更、(2)組合オリエンテーション拒否・中止、(3)会社決算説明拒否、(4)スト時における会議室使用拒否、(5)エッソ名古屋支店のスト通告受理方法の変更、(6)エッソ名古屋支店のストビラ、組合旗及び立看板の撤去等、(7)エッソ名古屋支店の地下休憩室に置かれた組合所有物の撤去、(8)エッソ名古屋支店における組合脱退者への組合指示行為に対する注意、(9)エッソ大阪支店入口の内扉設置及び組合事務所南側出入口閉鎖、(10)エッソ大阪支店のビデオカメラ設置、(11)エッソ大阪支店の立看板撤去等、(12)エッソ大阪支店の会議室使用拒否、(13)エッソ高松事務所の組合掲示板撤去、(14)エッソ本社における組合員Hの職務範囲変更等、(15)エッソ本社及び同大阪支店のカンパ箱撤去等、(16)モービル大阪支部三役の配転に関する団交拒否、(17)モービル大阪支店の団交及び事務折衝の待機時間取扱いの変更、(18)モービル大阪支店の賃金引出外出禁止、(19)モービル大阪支店の郵便室利用制限、(20)モービル大阪支部組合員のゼッケン着用に対する注意、(21)モービル大阪支店における組合ビラに対する受領拒否等、(22)モービル大阪支店の警告書等の発出、(23)モービル鶴見油槽所におけるカンパ箱、組合ビラの破損、(24)エッソ大阪支店、同本社、同鶴見油槽所及びモービル大阪支店の枠外ビラ撤去等、

  (25)エッソ鶴見油槽所及びモービル大阪支店の組合旗撤去、(26)その他の労使慣行破壊。
平成6年12月12日、初審大阪府労働委員会は、上記(1)、(2)、(5)及び(9)の行為並びに、同(3)、(4)、(6)、(8)及び(15)のうち昭和61年4月3日以前の行為に係る申立てを却下し、同(3)、(4)、(6)、(8)及び(15)のうち同月4日以降の行為並びに同(7)、(10)ないし(14)及び(16)ないし(26)の行為に係る申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として、同月15日、中央労働委員会に再審査を申し立てた。

命令主文 本件再審査申立てを棄却する。
判断の要旨  上記(1)、(2)、(5)及び(9)の行為並びに同(3)、(4)、(6)、(8)及び(15)のうち昭和61年4月3日以前の行為に係る救済申立ては、申立期間を徒過したものとして初審どおり却下。また、同(3)、(4)、(6)、(8)及び(15)のうち同月4日以降の行為並びに同(7)、(10)ないし(14)及び(16)ないし(26)の行為に係る申立ては、以下の理由により棄却。
(3) 組合があくまで団交の場で説明することに固執したため会社決算説明が行われなかったまでであり、団交で会社決算説明を行う慣行も合意もなかった本件においては、会社に不当労働行為があるとまではいえない。
(4) 組合が過去に会議室を使用した際、使用条件に違反し、会社業務に支障を及ぼしたのであるから、会社がそれ以降組合の会議室使用を拒否したことには正当な理由があると認められ、また、組合が使用条件を遵守することに方針を変えたとは認め難いことから、本件会議室使用拒否が不当労働行為に該当するとはいえない。
(6) 組合が就業時間中に玄関前に「ドロボーエッソ」等と記載された立看板を設置したこと等は、組合活動として行き過ぎた行為であるといわざるを得ず、会社が撤去を求めることには理由がある。また、企業は施設管理権を有するものであるところ、組合に自ら撤去するよう求め、そうしなければ会社が撤去する旨予告の上、相当の期間をおいて撤去し、立看板の設置及び撤去が繰り返された後に保管を行うようになったことは、組合活動抑圧を意図した不当労働行為とは認め難い。
(7) 休憩室内に無断で置かれた組合所有物について、会社が組合に自ら撤去するよう求め妥当な措置をとった上で、撤去を覚悟の上で組合が残置した物のみ撤去したものと認められるので、会社の行為は不当労働行為であるとはいえない。
(8) 就業時間中に組合脱退者に対して指令を行う組合に対して、会社が業務に支障がある旨述べたとしても無理からぬことであるから、会社の本件発言は不当労働行為に該当するとまではいえない。
(10) ビデオカメラの執務室外側の撮影範囲は極めて限られており、角度的にも組合事務所の入口をとらえるのは不可能であったから、ビデオカメラは日常的な組合活動を監視するため設置されたものではなく、執務室内への違法な侵入を監視するためのものであったと認められ、かつ、執務室に入室する不特定多数の者が撮影対象となる以上、組合弱体化を企図した不当労働行為に当たるということはできない。
(11) 組合が会社の入口付近に日中長時間かつ長期間にわたり「ドロボー会社エッソ石油弾劾」等と記載した立看板を設置したことは、組合活動として行き過ぎた行為であるといわざるを得ず、同支店が立看板の撤去を求めることには理由がある。また、会社は必要な手続きを尽くした上で施設管理権の行使として、本件立看板の撤去・保管を行ったことが認められ、組合活動に対する不当介入とはいえない。
(12) 物品販売のための会議室使用について取決めはなく、慣行として会社が認識していたとも認められないこと、また、会社の組合弱体化の意図も認め難いことを併せ考えると、会社の会議室使用拒否は組合に対する支配介入とまではいえない。
(13) 組合掲示板は、組合員間の情報の共有、組合の活動や主張の周知のために貸与されるものであるから、組合員のいない職場に設置する必要性は原則として認められず、撤去を行う手続においても会社の対応には問題がなかったというべきであるから、本件組合掲示板撤去につき会社に不当労働行為があったとまでは認められない。
(14) 会社は約3年7か月にわたり、組合員Hの職務範囲の変更等について組合に理解を求めたものの、組合は労使協議事項である旨主張するのみであったので、会社がこれ以上協議しても平行線と判断し、職務範囲変更等の団交を拒否したものと認められ、かつ不当に不利益な業務追加等が行われたともいえないから、Hへの職務範囲の変更等に関し、会社に不当労働行為があったとは認められない。


(15) 会社は、カンパ箱を、組合に対して事前に撤去するよう要求した上で撤去し、また、組合に返却しようとしたところ、元の場所に戻すよう要求したため保管することになったのであるから、会社は適切な措置をとった上で撤去・保管を行ったものと認められ、会社の行為が不当労働行為に該当するとはいえない。
(16) 同一フロアー内の異動にすぎず、業務にも大きな変更はない組合役員の配転について、事前協議及び合意を要するといった取決めや慣行が存在したとはいえないところ、組合が同意を得て組合役員の配転を行うべきとの見解に固執し、合意の見込みはなかったと認められるから、会社が団交を打ち切ったことは十分首肯でき、会社の団交拒否が不当労働行為であるとは認められない。
(17) 会社が、各地方から組合員が集まるものではない支部団交や事務折衝について、待機時間として打合せ時間を与える必要がないと考えたことは十分首肯でき、事務折衝及び支部団交の取扱いの変更に関する会社の申入れは、他労組との実情に照らし組合を差別的に取り扱うものではなく、かつ、会社は同申入れを行っただけで強行していないのであるから、会社の対応は組合嫌悪の念に基づくものであったとは認めがたく、不当労働行為に当たるとはいえない。
(18) 会社が勤務時間中は職務に専念するよう従業員としての自覚を促し、賃金引出外出を許可制にしたことは十分理由があり、しかも、この措置は全従業員を対象としており、かつ、上司の許可が得られれば賃金引出外出が認められていたことから、会社に不当労働行為があるとは認められない。

(19) 会社が郵便室利用に関し公私混同の是正を求めることは、十分理由があると考えられ、しかも郵便室利用についての注意は、同支店の全従業員を対象に行われていることから、会社の行為は不当労働行為であるとは認められない。
(20) 就業時間中のゼッケン着用については、会社業務に支障を来したり、企業秩序を乱す恐れがあり、正当な組合活動とは認められず、会社が組合員に対してゼッケン着用を中止するよう注意したのは企業秩序維持の観点から当然であり、しかも団交で申入れを行った後に行っているから、会社に不当労働行為があるとはいえない。

(21) 組合の昼ビラ入れに対し、会社職制が行った注意は、ビラ受領の強要等に対し行われたもので、ビラの配布自体を嫌悪して行ったものではなく、会社が職制及び別組合員に組合のビラの受領を拒否させ、職制にビラの破り捨てを行わせていると認めるに足る疎明がないことから、不当労働行為とは認められない。
(22) 会社が就業時間中のゼッケン着用、組合旗、掲示板の枠外にはみ出して貼付されたビラの是正を求めたことには理由があり、撤去等を行う前に、自主的に行うよう申入書及び警告書を発したことは、手続上妥当な行為と考えられ、会社に不当労働行為はない。
(23) 会社がカンパ箱の破壊等及び掲示ビラの破損等を行ったとは推認できず、破壊行為をした人物の特定もされていない以上、会社に不当労働行為があるとはいえない。
(24) 会社が枠外ビラを貼付しないよう述べていたこと、掲示板面積が不当に小さかったと言えないこと、別組合と差別して扱ったものではないこと等を踏まえれば、会社が行った枠外ビラの是正は、施設管理権に基づく相当な行為の範囲内にあると考えられ、組合嫌悪の念に基づくものとは認められず、これらの会社の行為が不当労働行為に該当するとはいえない。
(25) 本件組合旗掲揚は、組合活動として行き過ぎた行為であるといわざるを得ず、会社が組合旗撤去を求めることには理由がある。会社は組合に組合旗の自主撤去を要求したが是正されなかったことから自ら撤去し、さらに組合旗を返却しても、その都度無断で掲揚されることが繰り返されたため保管するようになったものであって、会社のとった措置は施設管理権に基づくやむを得ないものと認められ、不当労働行為に該当するとまではいえない。
(26) 組合は上記(1)ないし(25)の行為の外にも労使慣行破壊を行っている旨主張するが、どのような行為が不当労働行為に該当するのかについて具体性に欠け、また、本件全証拠によっても不当労働行為該当性を問疑すべき事実は見当たらない。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委昭和62年(不)第32号 棄却 平成6年12月12日
 
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