労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 神戸フローリスト
事件番号 中労委平成17年(不再)第86号
再審査申立人 神戸ワーカーズユニオン
再審査被申立人 神戸フローリスト
命令年月日 平成19年4月4日
命令区分 棄却
重要度  
事件概要  本件は、会社が、組合分会の書記長Xを、顧客から受領した金員を横領したとして14年2月1日付けで懲戒解雇(以下「本件解雇」という。)したのは、Xの組合活動等の故をもって同人を会社から排除するとともに、組合及び分会弱体化を目的になされた不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 初審兵庫県労委は、本件解雇理由はXによる金員横領で、同人が組合員であるか否かとは無関係だとして救済申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として、再審査を申し立てた。
命令主文 再審査申立てを棄却する。
判断の要旨 (1) 不利益取扱いの成否
ア 組合及びX(以下「組合ら」という。)は、14年2月の本件解雇は、12年10月の分会長の普通解雇以降、組合活動に積極的・主体的に関わるようになったXを会社が嫌悪してなしたものと主張する。しかし、本件解雇に至る会社の調査経緯をみると、12年9月に従業員から、Xによる書類破棄や代金未納の報告を受けて顧客への聴取及び領収書提出など調査を開始したもので、Xの組合活動を契機としてはいない。Xの団体交渉や分会長解雇の抗議行動の状況に、同人の主体的・積極的な組合活動があったことを裏付けるに足りる証拠は見当たらず、顕著な活動もみられないから、組合の主張を認めることはできない。
イ 組合らは、労使関係に組合嫌悪や排除意思を推認できると主張する。しかし、会社が7年4月に分会結成通知を受けて組合の情報調査をしたことは、会社初の労働組合結成への対応として理解できないものではなく、同6月の社内協議での幹部発言は組合に対する会社の戸惑いが見受けられるにすぎない。そして、本件解雇以前の、県労委への4回の春闘賃上げ等あっせん申請事案は、いずれも1週間~1か月程度であっせん案を労使受諾するなど、必ずしも安定的推移していたとは言い切れないまでも、本件解雇以前に厳しい労使対立があったとまではいえず、組合の主張は採り得ないものである。
ウ 組合らは、会社が、12年9月の事件発覚から約1年3か月も経過した13年12月に、知り得た情報を伏せてXに事情聴取したこと、分会長が代金を受領した旨の顧客証言があるにもかかわらず、分会長から事情聴取しない等の調査態様に、Xに対する排除意思を推認できると主張する。しかし、会社が主張する、小規模企業で分会長に加えXを本件解雇した場合の労使対立激化による業務支障を懸念した旨は、不当といえず、会社がその時期・機会を図ったと認める証拠もない。また、Xに先入観のない状態で供述を得ることも、事実を把握する方法として考えられる。そして、直接的な顧客証言を考慮せずにした本件解雇を不当とする旨の組合主張は、同証言が不自然かつ不合理であるから、会社がこれを考慮しなかったことに問題はなく、当時既に解雇していた分会長に会社が積極的に事情聴取しないことが不自然、不当とはいい得ない。

エ 組合らは、会社が、Xには状況証拠のみで横領を判断した一方、14年4月の現金紛失事件では経理書類に署名した非組合員に事情聴取していないことから、組合員と非組合員に二重基準を設けており、組合嫌悪やXに対する排除意思があると主張する。しかし、この事件では、組合員が会社ではなく組合に報告するなど不自然で、組合員は同月に経理書類改ざんの可能性を試していることからすると、会社が同事件を作為的と考え、非組合員に事情聴取する必要を認めなかったことには合理性が認められる。
オ 組合らは、Xに横領事実は認められず、本件解雇は合理的理由なく強行されたもので、不当労働行為意思を推認できると主張する。しかし、顧客の領収書にはXの署名があり、会社による顧客からの聴取(代金受領者はXの旨など)、さらに、13年12月の3回にわたるXからの聴取でX自らが、代金受領・領収書の作成と顧客への譲渡を認めたのだから、会社がXを代金受領者と判断したことには合理性がある。
 組合らは、12年9月の分会長自宅待機(10月解雇)直後のXによる商品関係書類の破棄は、Xが8~10年頃、上司たる分会長から同書類の保存期間を6か月とする指示を受けたことなどからしたもので、証拠隠滅ではない旨主張する。しかし、会社に当該書類の保存期間の定めはないものの、当該書類は代金請求や取引事実等の重要な書類であり、従業員らは保存期間を2~3年と認識していたことなどから、Xが破棄を急いだ理由は書類の性質、破棄の時期等に照らし不自然で信用できない。そうすると、当時Xが商品の製作・販売担当者であり、同人署名のある領収書控えと入金票が切除され、Xが作成後6か月に満たない書類から先に破棄したこと等の事実もあわせ考えると、会社が、Xの書類破棄を横領の証拠隠滅と判断したことに不合理な点はない。
 (2)  支配介入の成否
 組合は、会社が計画的に組合を放逐すべく、組合分会長を解雇し、次いで分会長解雇直前に把握していた分会書記長Xの代金未納問題を奇貨として同人を本件解雇により排除したなどと主張する。なるほど、両名の解雇後、分会組合員は皆、会社の従業員ではなくなったことが認められる。しかし、分会長は、その地位確認等訴訟で13年11月に会社と和解(会社は解決金を支払い、分会長は退職)していることや、X及び組合への不利益取扱いで認定判断したところからすれば、Xを本件解雇した会社の判断には不自然、不合理な点は認められず、組合らの主張を認めることはできない。

掲載文献 不当労働行為事件命令集137集《19年1月~4月》1148頁

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
兵庫県労委平成14年(不)第3号 棄却 平成17年12月6日
 
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