概要情報
事件名 |
南労会(業務指示) |
事件番号 |
中労委平成13年(不再)第24号 |
再審査申立人 |
医療法人南労会 |
再審査被申立人 |
全国金属機械労働組合港合同、全国金属機械労働組合港合同南労会支部 |
命令年月日 |
平成19年2月7日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、南労会が、[1]組合員Aに対して業務内容を変更する旨の7.14業務指示等を発令したこと、[2]同業務指示等に従わなかったことを理由として賃金カット等を行ったこと、[3]同業務指示等に関する団体交渉(「団交」)に誠実に応じなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。 2 初審大阪府労委は、上記行為はいずれも不当労働行為に該当するとして、南労会に対して、[1]7.14業務指示等がなかったものとしての取扱い、[2]賃金カット等がなかったものとしての取扱い、[3](上記[1][2]及び不誠実団交に関する)文書手交を命ずる旨の救済命令を発出した。 3 南労会は、これを不服として、再審査を申し立てたものである。 |
命令主文 |
初審命令主文を変更し、不誠実団交に関する文書手交命令のみに改める。 |
判断の要旨 |
(1) 7.14業務指示等について [1]7.14業務指示等はBの健診部配転を契機として医事課業務の再配分を検討した結果行われたものであり、その必要性・合理性はあったとする南労会の主張は、不合理であるとまではいえない。[2]7.14業務指示等によってAの頸肩腕障害等にかかるリスクが高まる程度はさほど大きいものではないということができる。また、7.14業務指示等は少人数で構成される医事課内における業務内容の変更にとどまるものであることからすると、「労働に対するやりがい」等に関する利益を奪うものであるとする組合らの主張についても採用できない。[3]本件当時、本件労使間において労使対立が継続していたことは認められるものの、Aは勤務時間変更前の勤務を続けていたこと以外はとりたてて積極的な組合活動を行っていたとは認められず、7.14業務指示等がAの組合活動あるいは組合員であることを理由として行われたものであると推認させるような特段の事情は見当たらない。 以上のことを勘案すると、7.14業務指示等は、Aの組合活動を理由とする不利益取扱いであるとはいえず、また、組合弱体化を企図した支配介入であるともいえない。したがって、7.14業務指示等を不当労働行為であるとした初審命令は、これを取り消すこととする。 (2) 7.14業務指示等違反を理由とする賃金カット等について 上記(1)判断のとおり、7.14業務指示等は不当労働行為には該当するものではない。そうすると、7.14業務指示等違反を理由とする賃金カット等については、いずれもAの組合活動を理由とする不利益取扱いということはできず、また、組合弱体化を企図した支配介入であるということもできない。 したがって、7.14業務指示等違反を理由とする賃金カット等を不当労働行為であるとした初審命令は、これを取り消すこととする。
(3) 7.14業務指示等に関する団交について ア 7.14業務指示等による業務内容の変更は義務的団交事項に当たるか。 7.14業務指示等は、Aの従事すべき業務の内容・方法等を変更するものであり、それは日常的な軽微な事柄であるとは認められず、労働条件の変更に当たると解すべきものである。特に、入力業務に関する変更内容は、Aの頸肩腕障害等にかかるリスクがある程度高まる可能性を伴うことを否定できないものであると考えられ、そのような業務の変更は労働条件の変更に当たると解される。よって、7.14業務指示等を交渉事項とする団交については、南労会はこれに応ずべき立場にあると解される。 イ 南労会の団交における態度は誠実団交応諾義務違反にあたるか。 7.22団交では、南労会は「この程度の問題は団交事項ではない」と回答しており、このような南労会の態度は、最初からこの問題について回答しようとする姿勢に欠けるものであり、不誠実であるといわざるを得ない。また、7.31団交についてみると、南労会は7.14業務指示等に伴うC課長への請求業務の集中化について「固定化させる考えはない」と返答するのみで、その理由等について十分説明しているとはいえない。次に、Aの健康問題についてみると、南労会は受付入力業務のAの健康問題への影響等について何らの説明も行っていない。 したがって、7.22団交及び7.31団交における南労会の態度は誠実団交応諾義務に反し、これを不当労働行為に該当するとした初審判断は相当である。 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集137集《19年1月~4月》956頁 |