労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]   [顛末情報]
概要情報
事件名 中川工業所
事件番号 中労委平成18年(不再)第8号
再審査申立人 全日本建設運輸連帯労働組合近畿地区トラック支部
再審査被申立人 株式会社中川工業所
命令年月日 平成19年2月7日
命令区分 棄却
重要度  
事件概要 1 本件は、株式会社中川工業所(以下「会社」)が、車両故障に伴い構内移送業務に就かせていた全日本建設運輸連帯労働組合近畿地区トラック支部(以下「組合」)の組合員Aについて、代替車両を購入して輸送業務に復帰させなかったことに対し、組合の下部組織である中川工業所分会に所属する組合員4名全員が抗議するため組合の決定に基づき腕章を着用して就労したところ、会社が腕章着用を理由に輸送業務等に就かせず、この間の賃金(17日分)を支給しなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、本件救済申立てを棄却し、組合はこれを不服として、再審査を申し立てた。なお、組合は、当初、A組合員を輸送業務に復帰させなかったことについても救済申立てをしていたが、本件再審査において、当該申立てを取り下げた。 
命令主文 本件再審査申立てを棄却する。
判断の要旨 (1)    腕章着用について 
ア    本件腕章着用就労の経緯
   会社は、平成14年10月16日、構内移送業務への従事を余儀なくされたA組合員に対し、3か月をめどに代替車両を探す旨述べ、同年12月6日以後の団交においても、その旨を表明したものの、組合が腕章着用就労を決定した同15年5月10日までの間の長期にわたり、車両購入を実現することができず、輸送業務への復帰時期も明示しなかったのであるから、組合が抗議の意思を示そうとしたことについては理解できなくない。しかし、A組合員の賃金の取扱いについては相当の配慮が払われており、また、会社は、当該車両購入問題については5回にわたり団交に応じ、購入の遅延の事情等についても相応の説明をしているといえる。 
イ    会社の腕章着用就労への対応
   本件腕章着用就労時において、会社には、就業規則上腕章着用就労を明確に禁止する規定はなかったが、会社の就業規則には業務に関係のない行為により職場規律が乱されることを防止するための規定が設けられており、組合員が所属する新淀川営業所の運転手に適用される賃金規則には、争議行為その他労働組合活動により就労しなかった場合、その期間の給与は一切支給しないと定められており、同規定は就労時間中の組合活動を認めない趣旨であると解される。また、会社は、腕章着用による就労に際し、平成12年11月から同13年6月にかけて組合員が腕章着用就労した際には、その都度、腕章着用就労を認めない旨の「撤去通告書」を手交し、これを禁止することを通告し、さらに、同15年1月にA組合員が車両購入問題に関して腕章を着用した際には、会社は、同人の就労を拒否し、同年5月13日には、腕章着用就労に対して出勤停止処分も辞さない旨記載した通告書(以下「5.13通告書」)を組合員に手交するなどの措置を採っていた。以上からすると、会社は就労時間中の腕章着用を許容していたとはいえない。 

ウ    本件腕章着用就労について
   本件腕章の形状及び運転業務に従事する組合員らの就労の態様等に照らすと、本件腕章着用就労は、組合員らの就業場所であるB社構内及び配送先のB社の営業所や荷受先における第三者に対して、会社の労使間で紛争が生じていることや、労使関係が良好でないとの印象を与えるおそれがあったものといわざるを得ない。また、会社はB社の専属輸送会社であり、以前、組合員らの腕章着用就労について、B社からクレームを受けたことがあったのであるから、本件腕章着用就労について、B社との取引に影響が生じるおそれがあったことは否定できない。そして、B社が、その構内における腕章着用就労に関しクレームをつけることについては、社会通念上不当とはいえない。そうすると、組合員が腕章を着用して就労することについては、業務運営への具体的、実際的な支障を生じるおそれがあったものである。
   また、本件腕章着用就労は、その経緯、会社の就業規則等に照らし、会社が求める誠実な労務提供義務と支障なく両立するとは評価できないものである。 
エ    小括
   上記アないしウの事情を総合的に勘案すると、組合が行った就労時間中の本件腕章着用は組合活動として相当な限界内で実行されたものとは認められないので、正当な組合活動とは言い難い。      
 (2)    賃金カットについて
   本件腕章着用就労に対しその着用期間中の賃金を支払わなかったことについては、会社が賃金カットの方針をより明確に示していれば本件腕章着用問題は別の展開となったとも考えられ、会社の対応には意思表示の不明確さと現場での混乱があったというべきであるが、[1]会社が、腕章着用就労に対し賃金を支払っていたのは本件車両購入問題に係る団交開始前であり、その後は「5.13」通告書を発して会社として明確な意思を示していたといえること、[2]賃金規則に、組合活動により就労しなかった場合その期間の賃金は一切支給しないとされていること、[3]本件腕章着用就労が会社の業務の運営への具体的、実際的な支障を生じるおそれがあり、組合員の労務提供義務と支障なく両立するとは言い難いこと等からすると、会社が腕章着用就労を拒否し、その期間中の賃金を支払わなかったことを不当労働行為に当たるということまではできない。 
(3)    総括
   上記(1)及び(2)のとおりであるから、会社の組合員らに対する腕章着用就労の拒否及び賃金カットは、不当労働行為であるとは認められないとした初審命令は相当であり、本件再審査申立てには理由がない。 
掲載文献 不当労働行為事件命令集137集《19年1月~4月》941頁

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成16年(不)第32号 棄却 平成18年2月1日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約172KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。