概要情報
事件名 |
四日市市 |
事件番号 |
中労委平成17年(不再)第21号 |
再審査申立人 |
三重一般労働組合 |
再審査被申立人 |
三重県四日市市 |
命令年月日 |
平成18年11月7日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
(1) 本件は、市の施設である児童館に嘱託職員として勤務する組合員(「本件嘱託職員」、組合内部で四日市市ユニットを構成している。)の勤務条件の改善等について組合が申し入れた団交について、市が、市は地方公務員法(「地公法」)の定めにより登録された職員団体からの交渉申入れに限って応ずべき地位に立つものであるとして拒否したことが不当労働行為に当たるとして、団交拒否の禁止並びに謝罪文の掲示及び手交を求めて、平成16年2月28日、救済申立てのあった事件である。 (2) 初審三重県労委は、本件嘱託職員は、地公法上の一般職の地方公務員に該当し、かつ、単純な労務に雇用される者に該当しないから労組法の適用はなく、したがって、市が上記団交に応じなかったことには相当の理由があるとして、救済申立てを棄却した。 (3) 組合は、この初審命令を不服として、初審命令の取消し及び上記(1)の組合の請求どおりの救済を求めて、再審査を申し立てた。 (4) 争点 組合が申し入れた本件嘱託職員の勤務条件の改善等に関する団交を市が拒否したことが労組法7条2号の不当労働行為に当たるか(本件嘱託職員に労組法が適用されるか。)。
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命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
ア 地公法は、地方公共団体に労務を提供し、その反対給付として地方公共団体から給与を受ける関係にある者は、その者の担当する職務内容にかかわりなく、すべて地方公務員であるとの建前をとっていると解されるから、本件嘱託職員は地公法上の地方公務員に該当すると解され、本件嘱託職員と市の関係を私法上の労働契約関係にあるとすることはできない。 イ 地公法は、3条1項に「一般職は、特別職に属する職以外の職とする」と規定し、3条3項3号に「臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員及びこれらの者に準ずる者の職」として特別職を限定列挙しているところ、本件嘱託職員の勤務の実態等によれば、本件嘱託職員の職は「臨時又は非常勤」の職と解することはできない。そして、地公法は、ある職が地公法上特別職か、一般職かを決するのは地方公共団体(任命権者)であるとしていると解されるところ、市は本件嘱託職員は特別職に属しないと主張しているところである。 したがって、本件嘱託職員は、一般職に属する職員と解さざるを得ず、本件嘱託職員に労組法は適用とならない。。 ウ なお、本件嘱託職員の勤務の実態、市の取扱い等を検討すると、市における本件嘱託職員に対する地公法の適用ないしその運用については、地公法が正しく遵守されているということができるかにつき相当の疑問があり、このような状態をこのまま放置することは適切でない。しかし、それは主として地公法の適用ないしその運用にあたっての不当性、あるいは違法性の問題であって、本件嘱託職員が特別職であることを根拠づけるものではなく、不当労働行為救済とは異なる別の場において解決が図られるべきものである。
エ (1) 地公法は登録を受けていない職員団体からの団交申入れに応じることを禁止する趣旨ではなく、「登録されない職員団体か当局に交渉を求めた場合においても、合理的理由がない限り、恣意的にその求めを拒否することのないよう努めるべき」(第三次公制審答申)であることを十分理解し、本件嘱託職員を含む市に勤務する者との間において健全な労使関係を構築していくよう、その為の話し合いを拒否するなどの対応をとることのないよう、当委員会として、市に対して特に要望する。 (2) 組合が直接の交渉当事者となることができないことを理由に四日市市ユニットを登録職員団体として登録しないとすれば、それは適切な対応とはいえず、市における健全な労使関係の構築のため、組合の努力、協力が望まれる。 (3) 本件嘱託職員に対する地公法の適用ないしその運用については相当の疑問があり、労働基本権保障の趣旨にもとるおそれなしとしない状態であって、速やかに改善ないし解決が図られなければならない。市当局等関係者が、制度的あるいは実態的改善に向かって真摯な努力を傾注することを特に要望する。
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掲載文献 |
不当労働行為事件命令集136集《18年9月~12月》1183頁 |