労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 日本貨物鉄道(13年期末手当)
事件番号 中労委平成17年(不再)第37号
再審査申立人 日本貨物鉄道株式会社
再審査被申立人 国鉄労働組合
命令年月日 平成18年9月20日
命令区分 棄却
重要度  
事件概要 1  本件は、日本貨物鉄道株式会社(以下「会社」)が、平成13年度夏季手当及び年末手当の支給に際し、会社の賃金規程に定めのない成績率100分の2増の特別措置(以下「本件増額」)を各労働組合に提案し、妥結しなかった国鉄労働組合(以下「国労」)組合員にも本件増額を適用したものの、申立外A組合組合員の90パーセント以上に本件増額を適用したのに対し、国労組合員に対しては10数パーセントしか適用しなかったことが不当労働行為であるとして、同14年5月20日に救済申立てがあった事件である。
2  初審東京都労委は、平成17年5月11日、会社が本件増額を不公正に適用したことは不当労働行為に当たるとして、会社に対し、国労組合員に対する本件増額の適用率が会社全体の平均適用率と同率となるよう再度適用者を選定し、既に支払った手当との差額を支払うこととこれに係る文書交付及び東京都労委への履行報告を命ずる救済命令を発したところ、会社は同月23日、国労は同月25日再審査を申し立てた。なお、国労は、同年6月22日、申立てを取下げ、東京地裁に、初審命令には救済方法に関して裁量権の範囲を逸脱した違法があるとして、命令の一部取消しを求める訴えを提起したが、同18年2月9日、東京地裁は、本件増額の適用は不当労働行為に該当するということができるとしつつ、本件救済申立てに対する是正措置は裁量権の範囲を逸脱し濫用したものとまではいえないとして、訴えを棄却した。 
命令主文 本件再審査申立てを棄却する。
判断の要旨 (1 )本件増額の適用関係の実態について
 会社は、国労組合員の業務貢献の程度はA組合組合員に比較して著しく低位にあることは明白であり、非協力な対応を堅持する国労組合員と会社の施策に積極的に参加する他組合員との間において成績率の適用に差異が生じることは合理的かつ公平な評定結果に基づく当然の帰結であると主張するが、国労組合員及びA組合組合員の勤務成績と本件増額の適用関係の相当性については本件審査において具体的な立証はなく、また、会社の主張をもっては、本件のような著しい格差の存在を合理的に説明しうるものではないというべきである。 
(2 )労働協約の不締結を本件格差の理由とすることについて
 本件増額に関して、会社は、賃金規程に定めのない当年限りの特別措置として、協約締結に基づく支給を目指したものであり、各労働組合との間で労働協約の締結による提案の実現に努力したことは認められるが、(1)労働協約を締結した申立外B組合組合員の支給率は国労組合員と同程度で、B組合が東京都労委に本件申立てと同様の内容の救済申立てをした後、和解が成立していること、(2)平成12年度には、55歳以上の者の取扱いに限定されているとはいえ、1パーセント増額の特別措置を国労のみならず他の労働組合とも労働協約を締結することなく、また、賃金規程を改めることなく実施し、

かつ、ほぼ全員に増額支給されたこと、(3)会社は、本件初審審査において、東京都労委が適用基準を明らかにするよう求めたのにこれに応じず、本件再審査において初めて、国労組合員については別異の基準により本件増額を約15パーセントの者に対して適用したと主張したものであり、本件審査過程においても国労組合員の国労への所属等を理由としてその成績劣位の評価の相当性を主張していることを併せ考えると、国労組合員に対する適用率とA組合組合員の適用率との間に大きな格差があったこと(以下「本件格差」)が労働協約不締結を決定的な理由として生じたものとする会社の主張は首肯しがたい。 
(3 )労働協約締結を巡る団体交渉について
 本件増額に係る国労と会社との間の団体交渉についてみると、会社は、具体的な適用基準、適用者数及び原資は明らかにせず、その明らかにできない理由を具体的に説明することもなかった。本件増額は、賃金規程に定めのない特例的な特別措置であり、また、国労が従来から成績率の適用について組合間差別が行われているとして問題視し、本件増額の適用が公正・公平に行われるべく、その基準等を明らかにするよう求めていたことからすると、会社は、合理的にかつ誠意をもって情報を提供するなどの必要があったというべきところ、国労の開示要求を合理的な理由なく拒んだまま、妥結を求めたものである。したがって、国労が労働協約の締結に至らなかったことには、相応の理由があるというべきである。 

(4 )会社の国労ないし国労組合員に対する認識について
 会社と会社従業員の大多数を組織するA組合は、数次にわたり労使共同宣言を締結し、会社再建のための中長期計画の推進を確認したが、国労は同宣言を締結せず、同計画についても反対していた。そのような労使関係の中での会社幹部による発言や、本件初審審査における会社調査役の国労組合員に対する認識を勘案すると、会社は、A組合とは協調関係を築く一方で、会社の方針に反対し再三にわたってストライキを行い、会社の再建計画に非協力的であった国労を好ましからぬ組織と考え、A組合とは異なった見方をしていたものと推認できる。 
(5 )不当労働行為の成否について
 以上、(1)本件格差の存在には合理的な理由は見出せないこと、(2)本件格差が労働協約不締結を決定的な理由として生じたものとはいえないこと、(3)国労が労働協約の締結に至らなかったことには相応の理由があるといえること、(4)会社は国労を好ましからぬ組織と考えていたことが推認されることを併せ考えると、本件格差は、会社が、国労及びそれに所属する国労組合員を、A組合組合員と差別して取り扱った結果によるとみるのが相当であり、本件増額は、所属労働組合による差別によって国労の弱体化を企図したものとして、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当する。 

掲載文献 不当労働行為事件命令集136集《18年9月~12月》848頁

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成14年(不)第56号 全部救済 平成17年4月5日
 
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