概要情報
事件名 |
新潟青陵学園 |
事件番号 |
中労委平成17年(不再)第66号 |
再審査申立人 |
学校法人新潟青陵学園 |
再審査被申立人 |
新潟青陵学園教職員組合 |
命令年月日 |
平成18年7月19日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、平成15年12月12日の団体交渉(以下「本件団交」という。)において、学園が組合との間で合意した事項について、学園が、確認書の作成を拒否したことが不当労働行為に該当するとして救済申立てのあった事件である。 2 初審新潟県労委は、学園に対して、確認書を締結することを命じ、組合のその余の申立てを棄却したところ、学園は、これを不服として、初審命令の救済部分の取消を求めて再審査を申し立てたものである。 |
命令主文 |
初審命令主文第1項を次のとおり変更する。 (1) 再審査申立人は、再審査被申立人との間で、平成15年12月12日の団体交渉における合意事項に基づいて、下記の内容の確認書を作成しなければならない。 記 平成15年度に限り、 (1) 同年度末に退職した者の退職金には、平成13年度新潟県人事委員会勧告の賃金表を適用する。ただし、実施に際しては、学園特別手当相当額(13万円)を差し引くが、平成14年度新潟県人事委員会勧告の賃金表を適用した場合より減額することがないよう調整する。 (2) すべての常勤教職員に2万円を支給する。 |
判断の要旨 |
確認書作成の拒否と不当労働行為の成否について (1) 組合が財政協力発言の確認書記載に合意しなかったことについて 学園は、本件団交において、組合が財政協力発言を行い、これを確認書に記載することに合意したことから、常勤教職員の一時金を2万円に増額回答をしたと主張する。 しかし、組合は、学園の財政状況が厳しくなれば賃金を下げることに直ちに賛成しているのではなく、そのときは組合の立場から団体交渉を行うこと等を表明しているのであり、学園が財政協力発言の根拠とする当該組合長の発言は、学園の経営状況と賃金決定との関係について、経理状況が悪くなって原資がなくなれば賃金切り下げも起こり得るとの一般的な見方を述べたものに過ぎず、組合から財政協力発言があったと認め難い。また、本件一時金の増額の問題に関連して、学園から有利な回答を引出す条件を述べているとも認められない。一方、学園からも組合に対し、増額回答に当たって何らかの条件を提示したことも認められない。よって、学園の主張は採ることはできない。 (2) 組合の詐欺発言について 学園は、平成16年2月6日の団体交渉において、社団法人新潟県私学振興会(以下「私学振興会」という。)に対して本件退職金に係る退職資金の交付申請を行うことについて、組合長が学園長に対し「詐欺だ、手続をしたら訴えるからな」と追及したこと、いわゆる詐欺発言があったことを主張する。 本件団交において成立した合意によると、例年とは異なる方法により退職金を計算することになることから、学園が私学振興会から資金の交付を受けることに組合が疑問をもったことは、本件団交時点においては一応理解できる。また、当該時点において、学園が組合に対して明示的に説明をしたとも認められないため、当時、組合が疑問をもったことを的外れとまではみることができない。 しかし、平成16年2月6日の団体交渉において、組合長が、学園が私学振興会への資金交付申請の方針を表明するや、直ちに詐欺発言で応じたことは不穏当かつ不適切な対応といわざるをえず、労使関係の円滑な運営を顧慮しない態度といえ、これにより学園が態度を硬化させ、確認書の作成ないしその履行に消極的になったことも理解できないではない。 しかしながら、本件団交における合意内容に基づく確認書作成の手続に入っている時点において、学園が、組合の詐欺発言により退職資金の交付申請に問題が生じたと考えるならば、そのことを問題提起し、話合いを通じて確認書作成及びその履行について組合とともに努力すべきであったといえる。すなわち、学園としては、その話合いにおいて、学園が本件再審査中に私学振興会に照会したような方法をとれば、同会が定める退職資金交付事業の関係規程に抵触することなく退職資金の交付が受けることができることを同会及び労使間で確認することにより、同会からの資金交付を受けて本件合意を実施することが可能となったとも考えられる。 よって、学園の主張は採ることはできない。 (3) 以上のことから、学園が組合との合意事項を確認書にしなかったことは、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集135集《18年5月~8月》996頁 |