事件名 |
緑運送 |
事件番号 |
中労委平成16年(不再)第16号
中労委平成16年(不再)第17号
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再審査申立人 |
全日本運輸産業労働組合埼玉県連合会 |
再審査申立人 |
緑運送労働組合 |
再審査申立人 |
東西物流株式会社 |
再審査被申立人 |
東西物流株式会社 |
再審査被申立人 |
緑運送株式会社 |
再審査被申立人 |
緑運送労働組合 |
再審査被申立人 |
全日本運輸産業労働組合埼玉県連合会 |
命令年月日 |
平成17年10月19日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
会社は、(1)組合の委員長を業務命令違反等を理由として懲戒解
雇したこと、(2)新会社設立の上、会社を計画倒産させて組合員14名を整理解雇したことが不当労働行為であるとして、争わ
れた事件で、埼玉県労委は、会社に対し、(1)組合の委員長及び組合員14名を新会社で就労させること、(2)文書交付を命
じ、その余の申立てを棄却した。
会社及び組合は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、(1)原職復帰したものとしての取扱い及び事業廃止ま
での間の休業補償相当額の支払い、(2)事業廃止後の新会社で就労したものとしての取扱い及びバックペイ並びに現実に就労を
希望する者との労働条件についての誠実協議応諾を命じ、その余の再審査申立てを棄却した。 |
命令主文 |
Ⅰ 初審命令主文第1項を次のとおり変更するとともに、同第2項を
同第4項とし、同第3項を同第5項とする。
1 緑運送株式会社は、緑運送労働組合の執行委員長X1、同組合員X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、
X10、X11、X12、X13、X14及びX15(以下「組合員ら」)を平成13年8月30日付けで原職復帰させたたもの
として取扱い、平成13年8月30日から同社が事業を廃止した平成14年5月31日までの間は、同社が組合員らを整理解雇
(X1については懲戒解雇)する前3か月間に支払った賃金により算出した平均賃金に基づいて、休業補償に相当する額を支払わ
なければならない。
なお、上記によって算出した額については、既に支払われている解雇予告手当は除くものとする。
2 東西物流株式会社は、組合員らを平成14年6月1日付けで、就労させたものとして取り扱わなければならない。
なお、現実に運転手として就労を希望する者については、これらの者に係る賃金等の労働条件について、全日本運輸産業労働
組合埼玉県連合会及び緑運送労働組合と誠実に速や かに協議し、合理的な取決めをしなければならない。
3 前項の取扱いに伴い、東西物流株式会社は、組合員らに対し、賃金相当額として、平成14年6月1日から平成16年3月
31日までの間、同社の賃金規程に基づいて基本給、職務手当、交通費を合算した額によって算出した1か月当たりの金額の7割
に相当する額に同期間の月数を乗じた額を支払わなければならない。
Ⅱ 緑運送株式会社及び東西物流株式会社の本件再審査申立て並びに全日本運輸産業労働組合埼玉県連合会及び緑運送労働組合の
その余の再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
2000 人員整理
1700 偽装解散
本件整理解雇は、組合結成後、組合からの様々な要求や組合執行委員長の言動などから、組合に対する不信感を募らせたY1社長
が、組合嫌悪の意識の下に、新会社の設立後も、両会社の事実上の経営者として新会社のZ1を自己の支配下に置き、会社の従業
員、主要な取引先、車両などを順次組合の影響力の及ばない新会社に計画的に移管し、会社を事実上の倒産に至らしめ、会社に
残った組合員である従業員全員を整理解雇したものと認めるのが相当であり、これを、労組法第7条第1号及び3号の不当労働行
為であるとした初審判断は相当であるとされた例。
1102 業務命令違反
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合執行委員長の懲戒解雇については、同人が配車係のZ2に対して不当な圧力を加えて配車変更を強要したという懲戒事由に係
る事実は認められないこと、確かに同人が配車係からの業務指示を拒否することがあったと認められ、その勤務態度について、会
社として対応に苦慮したことは窺えるものの、会社は同人に他の業務を指示しており、この業務を同人が行っていることからすれ
ば、就労自体を拒否したものではなく、解雇通知書に記載されている内容だけでは同人を懲戒解雇するまでの理由があったとは認
められず、むしろ、組合活動を嫌ったY1社長が、その中心的な存在であった同人を懲戒解雇したとみるのが相当であり、同人の
懲戒解雇は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為であるとされた例。
4910 事業廃止に伴う新経営者
1900 営業譲渡・合併
(1)新会社と会社の株は、Y1社長とその親族が所有していること及び新会社設立時の役員らはいずれも同社長の影響力が窺え
る者であること、(2)同社長なくしては新会社の経営を軌道に乗せることができなかったものと考えられること、(3)新会社
が会社の下請けを行うことによって、両社は同一の業務を行っていたと認められること、(4)会社から16人新会社に入社して
いるが、会社の車両とともに事業の中心となる配車係、運転手などを順次新会社に移していること等から、新会社の運営基盤を強
めるために行ったと認められること、(5)会社の倉庫、車庫及び本社施設を新会社が引き継いで使用していること及び新会社の
使用しているトラックは、会社又はY社長の関与によって初めて保有が可能になったものであること、(6)会社は、計画的に会
社の取引先を新会社に移したものと認めるのが相当であること等からすると、法人格を別にしながらも、人的、物的にも、主要な
ものが意図的に新会社に移管され、引き継がれたものであり、また、運送会社を家業であると考えていたY社長が、負債や組合及
び組合員の存在などの重荷になる部分を取り除くことができる新会社を興して息子に引き継がせる手段を選択したということがで
き、本件において、両社は、その実質において同一性を有するとの初審判断は是認できるとされた例。
4402 企業閉鎖・偽装解散と救済
会社は、平成14年5月31日に運輸局に事業廃止を届け出て、事実上の倒産状態になっており、会社に組合員及び組合執行委員
長の解雇に係る原職復帰を命じることは適当ではないが、事業廃止するまでは就労したものとして取り扱うことが相当であり、新
会社は、会社と実質的な同一性を持つことから、会社が事業を廃止した翌日の同年6月1日から、組合員を雇い入れるべきである
として、その旨命じるとされた例。
4910 事業廃止に伴う新経営者
4407 バックペイの支払い方法
4417 条件付命令・協議命令
バックペイについては会社は、会社における就労の取扱いをするべき平成14年5月31日までの賃金相当額として解雇予告除外
手当等を除く休業補償に相当する額を、新会社は、同6月1日から組合員らに対し就労受入れの以降を示した同16年3月末日ま
では、組合員らがほとんど他に就労して一定の収入を得ていること、Y1社長が新会社を設立するについては、当初から組合員排
除を目的としたものではなかったこと、不当労働行為がなかったとしても組合員15人全員を運転手として就労させることは困難
であったと考えられること等から、売上に伴う手当を除く基本給等の7割に相当する額を支払うべきものとするのが相当であり、
また、16年4月1日以降の新会社が支払うべき賃金相当額は、会社と新会社の給与制度には相違があること等から、新会社の就
業規則等に基づいて、その他の労働条件とともに労使の話し合いにおいて決定するのが相当であるとされた例。
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業種・規模 |
道路貨物運送業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
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