労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  盛岡精神病院 
事件番号  岩手県労委平成17年(不)第2号 
申立人  盛岡精神病院従業員組合 
被申立人  盛岡観山荘病院 
命令年月日  平成18年 6月15日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、病院が、(1)職員向け説明会において組合員に対し脱退届を付した文書を配布したこと、(2)組合の存在を否認し、組合の行動に同調しないよう求める発言をしたこと、(3)組合の申し入れた団体交渉を組合員と雇用関係がないとして拒否したことが不当労働行為であるとして、争われた事件である。
 岩手県労委は、病院に対し、(1)脱退届の提出を示唆する等言動による脱退勧奨禁止、(2)組合の行動に参加・同調しないよう発言すること等による支配介入の禁止、(3)誠実団交応諾、(4)(1)ないし(3)に関する文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人盛岡精神病院従業員組合の組合員に対し、脱退届の提出を示唆する等 の言動により、申立人からの脱退を勧奨してはならない。
2 被申立人は、申立人の組合員が盛岡観山荘病院敷地内に立ち入ることを禁じることによ  り、又は、組合員の解雇並びに不採用等に対する組合の抗議行動に参加ないし同調しないよ う発言等をすることにより、申立人の組織及び運営に支配介入してはならない。
3 被申立人は、申立人の組合員と被申立人が雇用関係にないとの理由で団体交渉を拒否する ことなく、誠意をもって応じなければならず、申立人が平成17年6月16日、同年7月1日及 び7月15日付けで申し入れた団体交渉事項につき、速やかに団体交渉を行わなければならな い。
4 被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人に交付しなけ ればならない。

         記
                            年 月 日
 盛岡精神病院従業員組合
 執行委員長 X1 様
                   盛岡観山荘病院
                    院長Y1

 私が、平成17年6月16日、同年7月1日及び7月15日付けで貴組合の申し入れた団体交渉に応じなかったこと、貴組合の存在を否認し組織及び運営に支配介入する発言等をしたこと、及び組合員に対して貴組合からの脱退を勧奨したことは、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると岩手県労働委員会で認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

5 被申立人は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。

6 申立人のその余の申立を棄却する。 
判定の要旨  4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
労働組合として存続していたのであり、独立した労働組合として実体を有するものであって、本件申立てにおいて労働組合としての当事者適格を有するものといわなければならず、かつ、組合は、労働組合としての実体を有する以上、病院による不利益取扱いを受けた組合員や支配介入の手段たる行為の対象となった組合員が組合を脱退したとしても、組合には独自に不当労働行為の救済を申し立てる利益があるもといわなければならないとされた例。

3410 職制上の地位にある者の言動
3700 使用者の認識・嫌悪
Y1は開設者となるとの意思をほぼ固めながら、新病院開設に伴うC病院職員の雇用継承問題、病院職員の採用、給与など労働条件の変更について考えていたことが認められるから、新病院の組織及び事業に深く関与しうる立場にあったことは明らかであり、さらに本件採用面接応募者に対する採用決定権限を有し職員の人選をしたことや自らを「開設者」「新開設者」「院長」「新院長」と呼称する文書の掲示を本件解雇のあった平成17年6月30日以前に病院内でたびたび行っていたこと等からも、Y1との組合員の労働契約の成否を判断するまでもなく、Y1は組合員の労働条件について、雇用主と同視できる程度に実質的な支配力を有していたことは明らかであり、労組法7条にいう使用者たる地位にあったということができるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
Y1による組合員に対する脱退届の提出を示唆する等の言動は、労組法第7条第3号に該当する不当行為であることは明らかであるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
Y1が、組合員が病院敷地内に立ち入ることを禁じたこと、また、Y1が解雇並びに不採用等に対する組合の抗議行動に参加ないし同調しないよう発言等をしたことは、組合の自主的な組織や運営に対する支配介入であるから、労組法第7条3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2130 雇用主でないことを理由
本件では、組合による3回の団交申入れの交渉議題につき、義務的団交事項となりうることは明らかであって、Y1のみならず、相続人も含めて病院側が要求事項が到底受けいれられない内容であるから、最初から団体交渉に応じることはできないとして団体交渉を拒否することは何ら不当な理由がないので、Y1が、組合員とY1が雇用契約関係にない等の理由で団体交渉を拒否したことは、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとされた例。

4504 他の救済と重畳的に団交の必要性を認めた例
組合は陳謝文の交付及び掲示を示しているが、組合脱退勧奨の禁止、組合の組織及び運営への支配介入禁止、組合が申し入れた団交事項について速やかな団交実施及び文書の救済をもって足りると判断された例。

業種・規模  医療業 
掲載文献   
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成18年(不再)第40号 一部変更 平成20年2月20日
 
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