労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  サクション瓦斯機関製作所 
事件番号  中労委平成13年(不再)第15号 
中労委平成13年(不再)第16号 
再審査申立人  株式会社サクション瓦斯機関製作所(16号事件再被申立人) 
再審査被申立人  産業別労働組合ジェイエイエムサクション瓦斯機関製作所労働組合(16号事件再申立人) 
再審査被申立人  産業別労働組合ジェイ・エイ・エム東京 
命令年月日  平成16年 2月 4日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)労働協約所定の組合義務のために支部執行委員長であったX1及びX2が欠勤したことに対し、当該欠勤は同協約でいう争議状態下の欠勤に該当するとして、当該欠勤分の月例賃金カット及び賞与カットを行ったこと、(2)同問題を議題とする団交に応じなかったことが不当労働行為であるとして、争われた事件で、東京地労委は、会社に対し、X1に対する平成10年夏季賞与からの欠勤控除等不支給分の支払、(2)X2に対する平成10年及び11年年末賞与からの欠勤控除等不支給分の支払、(3)団交応諾、(4)文書手交等を命じ、その余の申立てを棄却した。会社及び組合は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、初審命令の一部を変更するとともに、会社の再審査申立てを棄却した。 
命令主文  1 初審命令主文第2項、第4項及び第5項をそれぞれ次のとおり変更する。
(1)「2 平成13年(不再)第16号再審査被申立人兼平成13年(不再)第15号再審査申立人株式会社サクション瓦斯機関製作所は、平成13年(不再)第16号再審査申立人兼平成13年(不再)第15号再審査被申立人産業別労働組合ジェイエイエムサクション瓦斯機関製作所労働組合の前執行委員長X1に対して、平成10年11月4日開催の舶用関連労働組合協議会の総会及び定例会議に出席するため欠勤したことを理由として、同年11月分給与から欠勤分をカットした16,594円、同年年末賞与から欠勤控除した5,692円及び支給しなかった皆勤手当5,000円を支払わなければならない。」
(2)「4 平成13年(不再)第15号再審査申立人兼平成13年(不再)第16号再審査被申立人株式会社サクション瓦斯機関製作所は、平成10年及び11年の同X2及び同X1の組合業務による欠勤問題に対応した当時、平成13年(不再)第16号再審査申立人兼平成13年(不再)第15号再審査被申立人産業別労働組合ジェイエイエムサクション瓦斯機関製作所労働組合との間で昭和57年7月6日に締結した労働協約の解釈運用において従前の取扱いと異なる取扱いをした理由、根拠を含め、同協約の解釈運用をめぐり紛争の原因となった疑義について、同組合が団体交渉を申し入れたときは、これに応諾しなければならない。」
(3)「5 平成13年(不再)第15号再審査申立人兼平成13年(不再)第16号再審査被申立人株式会社サクション瓦斯機関製作所は、平成13年(不再)第16号再審査申立人兼平成13年(不再)第15号再審査被申立人産業別労働組合ジェイ・エイ・エム東京及び産業別労働組合サクション瓦斯機関製作所労働組合に対し、本命令受領後、速やかに代表取締役の記名押印のある下記の内容の文書を手交しなければならない。
                  記
                             年 月 日
  産業別労働組合ジェイ・エイ・エム東京
   執行委員長 X3 殿
  産業別労働組合ジェイエイエム
   サンクション瓦斯機関製作所労働組合
   執行委員長 X4 殿
                  株式会社サクション瓦斯機関製作所
                   代表取締役 Y1
  当社が行なった下記の行為は、中央労働委員会において不当労働行為であると認定されました。今後このような行為を繰り返さないようにします。
             記
  1(1)貴組合員X2が平成10年3月10日に「組合業務」により欠勤したことに対し、賞与から欠勤控除したこと及び皆勤手当を不支給としたこと。
   (2)貴組合員X1が同年11月4日に「組合業務」により欠勤したことに対し、月例賃金カットしたこと、賞与から欠勤控除したこと及び皆勤手当を不支給としたこと並びに平成11年5月24日に組合業務」により欠勤したことに対し、賞与から欠勤控除したこと及び皆勤手当を不支給としたこと。
  2 上記欠勤に対する月例賃金のカット、賞与の欠勤控除及び皆勤手当の不支給の問題を議題とする貴組合らからの団体交渉申入れに応じなかったこと。」
   (注:文書冒頭の年月日は文書を交付した日を記載すること。)
2 平成13年(不再)第15号再審査申立人の本件再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  0300 争議行為の範囲
1204 スト・カット
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
57年協約第8条では、就業時間中の組合活動につき、一定限度内の組合業務を有給扱いとする適用を、支部が争議状態にあるときは再び排除して有給扱いとしないこととしているが、その要件としての「争議状態」の意味について同協約に掲げられたものは、対外的な表現行為を伴う主要な態様の争議行為及び組合活動であって、それぞれの行為それ自体が一定の時間的継続を予定する行為であるが、それ以上の時間的拡張の意味を読み取ることは困難であるから、執行委員長X1が組合活動を理由として欠勤した平成10年11月4日は争議状態下にあったとして、同人に対する月例賃金をカットしたことは、同協約の趣旨を尊重することなく、就業時間内組合活動を制限する目的で行われたものであり、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
1201 支払い遅延・給付差別
1203 その他給与決定上の取扱い
就業時間内組合活動に関する、57年協約にいう「有給」、「無休」及び「賃金カット」の対象は、もっぱら毎月支払われる給与に関する取扱いを指すものであり、同協約第8条における「有給」の意義についても、これと異なる解釈をすべき理由は見出しがたく、また、会社は、組合業務による欠勤で、本件までの4回の事例においては月例賃金をカットしたが、賞与の欠勤控除を行わず、また皆勤手当も支給してきたのであるから、会社が執行委員長X1及びX2がそれぞれ欠勤したことに対し、賞与の欠勤控除をし、皆勤手当を支給しなかったことは、就業時間内の組合活動を制限する目的で行われたものであり、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

1204 スト・カット
2901 組合無視
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
4500 交渉拒否理由または交渉条件に関する指示に触れた例
本件団交の議題である賃金等カット問題は、単に個人の問題ではなく、賃金等の取扱いなど労働条件に関する問題及び支部の組合活動に対する便宜供与に関する問題であることは明白であるから、団交に誠実応諾の義務があることは当然であるとされた例。

1204 スト・カット
2305 労働協約との関係
4500 交渉拒否理由または交渉条件に関する指示に触れた例
本件救済申立てに係る団交の目的の中核は、カットされた組合業務に係る賃金等の回復であり、この点についてはカットされた賃金等の支払を命じる本命令により解決するが、組合が団交を要求した趣旨は、組合活動を理由とする賃金等カット問題について、各個人の賃金等カット問題を超えて今後の取扱い方にもつながる57年協定の運用問題の誠意ある協議を求めることにあったと認められ、なお団交を尽くさせる必要があるところ、会社は、再審査申立て事件係属中に同協約を解約するに至ったので、今後同協約が存在することを前提にした同協約の解釈運用問題を団交の対象にすることはできないことになるが、同協約の解釈運用をめぐり紛争の要因となった疑義について団交を尽くさせる必要性は協約解約後といえどもなくなるものではなく、その趣旨で団交を命じることは可能であるとして、初審主文を一部変更して団交応諾を命じた例。

業種・規模  輸送用機械器具製造業 
掲載文献   
評釈等情報  中央労働時報 2004年6月10日 1029号 17頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地労委平成11年(不)第69号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 平成13年 3月 6日
 
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