概要情報
事件名 |
札幌交通・北海道交運事業協同組合 |
事件番号 |
北海道地労委 平成14年(不)第7号
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申立人 |
X2 |
申立人 |
X1 |
申立人 |
日本交通労働組合 |
被申立人 |
札幌交通株式会社 |
被申立人 |
北海道交運事業協同組合 |
命令年月日 |
平成16年 1月22日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1)春闘における団体交渉において不誠実な交渉態度をとったこと、(2)新賃金体系に係る個別協定に同意した後、組合に加入してこれを破棄した組合員ら(破棄通告者)に対し、個別交渉をしたこと、(3)破棄通告者に対し新賃金体系に基づく賃金を支給したこと、(4)新賃金体系に同意しないこと等を理由に一時金等の支給を拒否したことが不当労働行為であるとして、争われた事件で、会社に対し、(1)破棄通告者に対し個別交渉を行うこと及び新賃金体系に基づく賃金支給することによる支配介入の禁止、(2)新賃金体系に同意しないこと等を理由に一時金等を支給しないことによる不利益取扱い及び支配介入の禁止、(3)文書掲示を命じ、その余の申立てを却下又は棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人札幌交通株式会社は、平成13年度の新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間に関し、いったん個別協定を締結した後、申立人日本交通労働組合に加入して破棄通告をした申立人日本交通労働組合の組合員に対し、その意思を確認することを理由として個別に交渉を行うことによって、申立人日本交通労働組合の運営に支配介入してはならない。 2 被申立人札幌交通株式会社は、従前の勤務体系・勤務時間に基づいて就労している申立人日本交通労働組合の組合員のうち個別協定の破棄通告をした者に対し、従前の賃金体系に基づく賃金を支給せず、新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間に基づいて計算した賃金を支払うことによって、申立人日本交通労働組合の運営に支配介入してはならない。 3 被申立人札幌交通株式会社は、申立人日本交通労働組合の組合員に対し、平成13年度の新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間に同意せず又は申立人日本交通労働組合から脱退しない場合には、同年度の夏季・冬季一時金及び燃料手当の支払をしないとの不利益取扱いをしてはならない。また、これを手段として申立人日本交通労働組合の運営に支配介入してはならない。 4 被申立人札幌交通株式会社は、次の内容の文書を縦1メートル、横1.5メートルの大きさの白紙にかい書で明瞭に記載し、被申立人札幌交通株式会社の事務室の正面入り口の見やすい場所に、本命令書写しの交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。 記 当社が貴組合に対して行った次の行為は、北海道地方労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。 今後、このような行為を繰り返さないようにします。 記 1 平成13年度の新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間に関し、いったん個別協定を締結した後、貴組合に加入して破棄通告をした組合員に対し、その意思を確認することを理由として個別に交渉を行うことによって、貴組合の運営に支配介入してはならない。 2 従前の勤務体系・勤務時間に基づいて就労している貴組合の組合員のうち個別協定の破棄通告をした者に対し、従前の賃金体系に基づく賃金を支給せず、新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間に基づいて計算した賃金を支払うことによって、貴組合の運営に支配介入してはならない。 3 貴組合に所属する組合員に対し、平成13年度の新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間に同意せず又は貴組合から脱退しない場合には、同年度の夏季・冬季一時金及び燃料手当の支払をしないとの不利益取扱をしたこと、また、これを手段として貴組合の運営に支配介入したこと。 平成 年 月 日(掲示する初日を記入すること。) 日本交通労働組合 執行委員長 X1 様 X1 様 X2 様 札幌交通株式会社 代表取締役 Y1 5 申立人X1及びX2の被申立人らに対する申立てのうち、不誠実団体交渉に係る申立て及び個別協定の破棄通告者に対する新賃金体系の適用による不利益取扱いに係る申立てを却下する。 6 申立人らのその余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
2246 併存団体との関係
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
交運従組結成後、本件団交の申入れを含め、労使交渉は同組合を当事者として行われ、組合が独立して交渉を行うことはなかったものであり、不誠実団交の不当労働行為についての救済利益を有するのは、団交当事者である労働組合であるから、本件において救済利益を有するのは交運従組にほかならないが、組合が独立した労働組合としての性質を備え、交運従組が連合団体に類似した性質を有することを考慮すれば組合の救済利益を考える余地もあるが、組合は交運労組との関係を解消している以上、交運労組が受けた不誠実団交に係る申立てについては救済を求める利益はないとされた例。
4916 企業に影響力を持つ者
不当労働行為の救済制度は、使用者による団結権の侵害を排除することを目的とするものであるから、被申立人適格を有するのは、雇用契約上の当事者に限定されることなく、労働者の賃金、労働時間等について実質的な影響力ないし支配力を及ぼしうる地位にある者も含まれると解されるが、協同組合が、その構成員たる企業とその労働者間の雇用関係について、雇用主と同様の権限ないし支配力を有しているとは通常考えられず、協同組合は不当労働行為における使用者としての地位にある者ということはできないから、被申立人適格を認めることはできないとされた例。
2621 個別的示唆・説得・非難等
会社は、交運従組が新賃金体系が組合員に不利益であるとして反対していること及び組合の組合員が交運従組の支部を名乗っていた組合に加入して新賃金体系に係る個別協定を破棄しようとしていたことを知りながら、その意思確認をすることを理由として、交運従組又は組合を介さずに直接組合の組合員と交渉し、会社の方針を押しつけようとしていたものであるから、このような会社の行為は、組合の弱体化を図る意図をもってされたもので、労組法第7条3号に該当する不当労働行為であるとされた例。
1201 支払い遅延・給付差別
2901 組合無視
3103 労働協約締結をめぐる行為
会社は、組合員であると非組合員であるとを問わず、従業員全員について新賃金体系の導入を企図していたものであり、組合に加入する前の非組合員によって締結された個別協定が有効であるとして、新賃金体系を適用したとしても、必ずしも組合員であることの故をもって非組合員と差別的な取扱いをしたものということはできず、不利益取扱いには当たらないが、会社としては、新賃金体系に係る個別協定の破棄通告者につきいずれの賃金体系を適用すべきか、交運従組又は組合と協議して決定する余地があったものであるから、会社がそれをせずに、破棄通告者に対して一方的に新賃金体系を適用して賃金を支給したことは、新賃金体系の導入に強く反対する申立人組合の影響力を排除し、組織を切崩す意図をもって行ったものというほかなく、労組法第7条第3号の支配介入に該当する不当労働行為であるとされた例。
1201 支払い遅延・給付差別
2901 組合無視
3103 労働協約締結をめぐる行為
会社は、平成13年度の一時金等を新賃金体系について同意した従業員にのみ支給し、組合員に対しては、新賃金体系について協定が締結されない限り、一時金等の支給を拒みながら、組合を脱退して協定に応じた者に対しては直ちに一時金等を支給する取扱いを行ったが、このような会社の行為は労組法第7条第1号の不利益取扱いに該当し、一時金等の不支給により、組合員が組合を脱退し、会社と新賃金体系についての協定を締結して一時金等の支給を受けた結果、組合員が大幅に減少したことは、会社が、組合員が経済的に困窮し、組合を脱退せざるを得ない状況となることを認識しながらかかる行為に出たものと推認することができるから、このような会社の行為は、労組法第7条第3号の支配介入に該当する不当労働行為であるとされた例。
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業種・規模 |
道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
 
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