概要情報
事件名 |
白浜第一交通 |
事件番号 |
中労委 平成14年(不再)第50号
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再審査申立人 |
白浜第一交通株式会社 |
再審査被申立人 |
全国自動車交通労働組合総連合会白浜南海タクシー労働組合 |
命令年月日 |
平成15年10月 1日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、(1)新賃金体系に関する団体交渉の申入れを無視したこと、(2)組合の前委員長に対して退職の利益誘導を行ったこと、(3)チェック・オフを停止したこと、(4)平成8年協定書の破棄を通告したこと、(5)組合掲示板を撤去したこと、(6)制服保証金を徴収したこと、(7)中小企業退職金共済契約を解約したこと、(8)組合役員の「無給休暇」を一方的に廃止したこと、(9)配車差別を行ったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、和歌山地労委は、会社に対し、(1)新賃金体系実施、制服保証金徴収及びチェック・オフ停止に関する団交応諾、(2)組合掲示板の復旧、(3)チェック・オフの再開、(4)平成8年協定書の効力の確認及び同協定書に基づく所要の措置、(5)中小企業退職金共済契約を復活する措置、(6)組合役員の「無給休暇」を理由とする賃金の減額の停止及び減額分の支給、(7)これらの事項及び配車差別に関する文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。会社は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、初審命令を一部取り消す等、一部変更し、その余の再審査の申立ては棄却した。 |
命令主文 |
Ⅰ 初審命令主文第3項を次のとおり改める。 「3 再審査申立人は、平成13年7月18日付通告書による平成8年5月24日に締結した協定書の破棄通告がなかったものとして取り扱わなければならない。」 Ⅱ 初審命令主文第4項を取り消し、第5項を第4項とし、第6項を第5項とし、第7項を第 6項とする。 Ⅲ 前項で取り上げた初審命令主文第4項及び第5項を次のとおり改める。 「4 再審査申立人は、再審査被申立人組合役員の無給休暇に対する賃金の控除がなかった ものとして取り扱うとともに、第1項の団体交渉において賃金制度の協議と併せて組合活動 に伴う賃金の取扱いについて誠意をもって協議しなければならない。 5 再審査申立人は、下記内容の文書を、本命令書写しの交付の日から7日以内に再審査被 申立人に手交しなければならない。 記 平成 年 月 日 全国自動車交通労働組合総連合会 白浜南海タクシー労働組合 執行委員長 X1 様 白浜第一交通株式会社 代表取締役 Y1 白浜第一交通株式会社は、全国自動車交通労働組合総連合会白浜南海タクシー労働組合に 対し、新賃金体系実施、制服保証金徴収等に関する団体交渉を拒否したこと、組合掲示板を 撤去したこと、チェック・オフを停止したこと、平成8年5月24日に締結した協定書の破棄 を通告したこと、同協定書に違反して中小企業退職金共済契約を解約したこと、組合役員の 無給休暇に対して賃金を控除したこと及び配車差別をしたことが不当労働行為であると中央 労働委員会で認定されました。 今後厳重に反省し、再び繰り返さないように致します。」 Ⅳ その余の本件再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
1900 営業譲渡・合併
会社の講じた措置が経営再建のための緊急かつ必要なものであるとの疎明はなく、仮に倒産状態にある会社再建のための措置であるとしても、そのことのみをもって会社の如何なる行為も不当労働行為に当たらないとの主張は認められないとされた例。
2240 説明・説得の程度
2300 賃金・労働時間
2302 労務管理・労使関係
2303 福利厚生
会社の賃金制度の変更に係る団体交渉の申入れについては、会社が再開した経営再建協議会において、組合が参加して賃金制度についても話題の一つとして取り上げられているが、これをもって団体交渉に応じたものとみなすことはできず、会社は、その他チェック・オフの停止、制服保証金の徴収に係る団体交渉には応じていないから、会社の対応は、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとされた例。
2620 反組合的言動
2625 非組合員化の言動
賃金制度の変更が、労使間の最大の対立点となり労使関係が緊張状態にあった時期に、一方的に予告期間をおくこともなく平成8年協定書を破棄する旨通告した会社の行為は、労使関係の安定を著しく損なうものであり、また、新賃金体系を受け入れない組合を嫌悪し、その受入れを強硬に促すとともに、組合の弱体化ないしは解散を企図するものであって、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。
2625 非組合員化の言動
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社が合理的な理由もなく、組合との緊張関係にあった時期に、チェック・オフの停止及び組合掲示板の撤去を実行し、労使慣行を突如一方的に廃止したことは組合の弱体化や解散を意図した団結権を侵害する行為であって労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。
1600 休暇の取扱い
組合員の「無給休暇」については、労使慣行として継続していたとまではいえないが、会社が組合活動による欠勤に対して精勤手当や基本給部分の賃金を控除したことは、新賃金体系を前提としたものであり、上記の賃金制度の変更に関する団体交渉の拒否及び上記の協定書の破棄通告が不当労働行為であることを考慮すれば、組合員であるが故に不利益に取り扱うものであって、労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。
2803 その他
平成8年協定書に基づき、締結した中小企業退職金共済契約を被共済者である従業員の同意や了解を得ることなく解約したことは、協定書、ひいては組合を無視し、組合の弱体化を企図した労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。
1302 就業上の差別
会社が、組合に対して、無線配車等において非組合員に対して優先的に配車する旨通告し、実行したことは、差別的取扱いを行ったというほかなく、組合員の収入に打撃を与え、経済的に不利益に取扱うものであって、労組法第7条第1号に該当する不当労働行為であたるとされた例。
4414 その他の不利益の場合
4420 団交を命じた例
平成8年協定書の破棄通告に対する救済について、同協定書の効力の確認及び同協定書に基づく所要の措置を命じた初審命令を、破棄通告がなかったものとして取扱うよう命じるのが適切であるとして変更し、併せて団交において同協定書の取扱いについて誠意をもって協議するよう命じた例。
4603 その他
チェック・オフ再開を命じる初審命令を維持することが相当であるが、同命令の履行に当たっては、労働基準法の賃金控除に関する規定に基づく措置を講じなければならないとされた例。
4603 その他
中小企業退職金共済契約の解約については、同契約は存続していると推認できるから、これを復活するよう命じた初審命令は取り消すとされた例。
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業種・規模 |
道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2004年2月10日 1022号 28頁 
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