概要情報
事件名 |
幸風会 |
事件番号 |
中労委 平成15年(不再)第6号
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再審査申立人 |
社会福祉法人幸風会 |
再審査被申立人 |
芙蓉苑労働組合 |
命令年月日 |
平成15年 7月16日 |
命令区分 |
再審査棄却(初審命令をそのまま維持) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、社会福祉法人が、組合からの団体交渉申入れに対し、組合員名簿、組合規約及び組合結成大会の議事録を提出しないことを理由に応じなかったことが不当労働行為であるとして、争われた事件である。初審鹿児島地労委は、法人に対し、誠実団体交渉応諾を命じた。法人は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委は初審命令を維持し、再審査申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
4825 その他
法人は、組合は権利能力無き社団としての要件を欠如しているから本件申立ては却下されるべきであると主張するが、本件救済申立ては労働組合法第27条の不当労働行為救済制度に基づく申立てであるから、労働組合の救済申立人資格については、労働組合法第2条及び第5条第2項の要件に適合するとの資格審査を受けなければならないが、その他に格別の要件を満たす必要はないとされた例。
4837 結成または加入の行為
5140 資格審査
当委員会においても、本件の組合は労働組合法第2条及び第5条第2項の規定に適合すると判定し、適格決定をしたものであり、法人が不当労働行為救済申立要件を欠如している旨の具体的事由として指摘する組合の設立大会が労働組合法でいう結成大会(総会)と評価できるものではないこと、組合役員選出について組合員の直接無記名投票が行われていないこと等については、平成13年10月6日に組合結成大会は開催されており、また、仮に組合役員選出等に指摘の事実が存したとしても、本件組合の組合規約自体において、労働組合法第5条第2項に規定する必要的記載事項を具備しているものであるから、指摘は、中労委の組合資格審査における適格決定の結論を左右するものではないとされた例。
2210 組合員名簿・組合規約不提出
労働組合法上、労働組合は団体交渉に先立って使用者に対して組合規約や組合員名簿を提出する義務を負ってはおらず、ただ、団体交渉の開始に当たっては、交渉当事者、担当者(交渉委員)及び交渉事項が明確にされることが最小限必要であり、また、当該団体交渉の遂行に必要な限度で労働組合はその組合員の人数・氏名を明確にすることを要することになるが、本件では、(1)組合は、労働組合を結成し、自治労に加盟したこと及び執行委員長ほか9名の役員名を記載した「通告書」を法人が経営する芙蓉苑の苑長に手交していること、(2)組合は申入れに当たって、それぞれ団体交渉事項を明記した書面を提示していることから、組合は、団体交渉の開始に当たって必要な事項を明らかにしていたといえ、法人の組合員名簿等の提出がない等の事由は、団体交渉拒否の正当な理由には当たらないとされた例。
2216 その他
法人は、労働組合法違反・組合規約違反を行っている組合の救済申立てを認めることは信義則に反する等主張するが、組合は労働組合法第2条及び第5条第2項の規定に適合すると判定されたものであり、また組合の運営が規約に従って行われているかどうかは組合内部の問題であって、使用者が容喙すべきものではなく、組合規約違反の有無が本件不当労働行為の成否に影響を及ぼすものではないとされた例。
2235 その他組合の態度
法人は、組合の上部団体である自治労の介護組織化担当者が公刊されている雑誌において法人らを誹謗中傷しており、そのような組織からの団体交渉を応諾する理由はない旨主張するが、法人の指摘する記事は自治労の介護組織化担当者に対するインタビューを内容とするもので、同誌の編集兼発行人の責任において編集されたものであり、また、組合がその記事掲載に関与しているとの疎明はないから、記事の内容如何が本件の団体交渉拒否の正当理由となるものではないとされた例。
5124 その他の審査手続
法人は、初審地労委は、救済せんがために、最終審問期日を延期し、かつ、主張立証の追加を組合に指示するという運営を行ったと指摘するが、指摘事項をもって初審の審理手続きを違法ということはできないとされた例。
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業種・規模 |
社会保険、社会福祉 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集126集914頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 2003年11月10日 1019号 13頁 
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