労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  京浜特殊印刷 
事件番号  中労委 平成13年(不再)第38号 
再審査申立人  株式会社京浜特殊印刷 
再審査被申立人  全国印刷出版産業労働組合総連合会神奈川地方連合会 
再審査被申立人  全国印刷出版産業労働組合総連合会神奈川地方連合会京浜特殊印刷分会 
再審査被申立人  X1 
命令年月日  平成15年 1月15日 
命令区分  再審査棄却(初審命令をそのまま維持) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)分会長X1を夜勤から昼勤に配転したこと、(2)組合の団交申入れに一切応じなかったこと、(3)組合らを誹謗中傷する文書を掲示等したこと、(4)非組合員と思われる従業員にのみ賞与に加算して1万円を支給し、組合員には支給しなかったこと、(5)職制を通じて組合らを批判し、労働条件の現状維持等を提案する文書に従業員の署名を求めたこと、(6)業務命令違反等を理由として分会長X1を自宅待機としたことが争われた事件で、初審地労委は、(1)分会長に対する配転命令及び自宅待機命令がなかったものとしての取扱い、原職復帰及びバック・ペイ(年5分加算)、(2)組合らの組合活動に対する誹謗中傷文書の掲示等の禁止、(3)団交応諾、(4)組合員への1万円不支給及び会社が従業員に署名を求めたことに関する文書掲示を命じ、その余の申立ては棄却し、会社が救済部分の取消を求めて再審査を申し立てたが、中労委は再審査申立てを棄却した。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  4833 組織の消滅(含1人組合となった場合)
5140 資格審査
会社は、分会は分会員が1名となって団体性がないこと、地連及び分会は会計報告に関して問題があり、労組法5条2項の要件を備えていないと主張するが、初審結審時の分会員は3名であったこと、地連及び分会のそれぞれの組合規約には職業的会計監査人の証明書を会計報告書に添付して会計報告を行うことが明記されていること、分会は独自の予算を有して活動していることから、地連及び分会に申立人適格を認めた初審判断は相当とされた例。

4820 単一組織の支部・分会等
会社は、地連と分会との申立ては二重申立てであり却下されるべきであると主張するが、地連と分会は、それぞれの責任において独自に活動を行う労働組合であり、会社のある一つの行為が、地連及び分会に対する労組法7条各号の不当労働行為に該当している以上、その不当労働行為について、両組合が別個に被救済利益を有していることは明らかであり、両組合が一つの不当労働行為事件の救済申立人として名を連ねることには何ら問題はないとされた例。

5140 資格審査
会社は、地連及び分会は労組法5条2項及び組合規約に違反し、そのような労働組合による救済申立ては禁反言・信義則違反であると主張するが、地連及び組合に労組法5条2項違反は認められず、また、組合規約違反については、組合内部の問題であって、使用者の不当労働行為からの救済を受ける権利の存否に影響を及ぼすものではないとされた例。

1300 転勤・配転
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会長の昼勤への配転は、社長が分会結成及びそれに伴う組合活動を嫌悪して、分会の中心的存在である分会長を、同人が希望しておらず、かつ、労働条件及び生活パターンの変更により不利益を伴う昼勤に配転したものと認められ、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たるとした初審判断は相当とされた例。

2251 一方的決定・実施
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
会社は、自ら団体交渉に応じないことに正当な理由があるかのごとく主張する賞与に係る団体交渉以外の議題に係る団体交渉についても一切応じておらず、会社に地連及び分会からの団体交渉申入れに応じる意思が認められないことは明らかであり、さらに、賞与に係る団体交渉に限定しても、会社は、団体交渉に応じないまま、一方的に賞与を支給しており、会社が、分会員に対する賞与の支給の条件として団体交渉において妥結したものとみなすという合意をみたような特段の事情はなく、分会員が賞与を受領済みであることは、会社が組合からの支給済みの賞与に関する団体交渉申入れに応じない正当な理由とはなりえず、本件団交拒否を労組法7条2号及び3号の不当労働行為に当たるとした初審判断は相当とされた例。

2620 反組合的言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
2700 威嚇・暴力行為
本件社長文書には、ことさら組合活動を誹謗する表現、非組合員の反組合感情を煽る表現、分会長の人格や業務能力を誹謗して貶める表現、従業員が分会長やその組合活動を容認することへの威嚇とも取れるような表現が認められ、この文書が分会の結成から1か月余りを経た時点において、社内に掲示されていることからすると、会社が分会勢力の拡大を恐れ、その活動を抑制する目的で掲示したことは明らかであり、本件社長文書の掲示を労組法7条3号の不当労働行為に当たるとした初審判断は相当とされた例。

2803 その他
会社の代表取締役が会社内で従業員に対して一万円を支給する行為が、ポケットマネーから支給されたことのみをもって、私生活上の行為であって不当労働行為とはなり得ないとする会社の主張は直ちには認められず、本件一万円の支給を労組法7条3号に該当する不当労働行為であるとした初審判断に対して、会社は、従来から一部の従業員に賞与に追加して支給する形で社長から金員が支給される慣行があったとの疎明はしておらず、また、その支給範囲等についても何ら明らかにしていないから、初審判断を覆すまでには至らないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
本件職制らが組合らを批判し、労働条件の現状維持を提案する文書に署名を求めた活動は、分会結成から2か月足らずのうちになされたものであり、会社の職制である機長あるいは係長によって就業時間中に署名活動が行われていることからすれば、会社の意を体して行われたものと判断せざるを得ず、明確な会社の指示が疎明されていないこと、あるいは本件賛同文書の作成者が疎明されてないことを勘案しても、労組法7条3号の不当労働行為に当たるとした初審判断は相当とされた例。

0125 組織・職場活動(含証人の行為)
0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会長に対する自宅待機命令の理由である職務専念義務及び職場秩序遵守義務違反は、分会長が、非組合員の従業員に初審の審問で取り上げられた海外旅行の件に関して2分程度確認したこと、それを咎めた社長と口論したことだけであり、会社の就業規則には自宅待機を命じる根拠規定がないことからすると、些細な出来事を理由に就業規則に規定のない不合理な処分を行い、不利益を与えるとともに、分会長を他の従業員から隔離することによってその組合活動を困難にさせ、分会を弱体化させることを企図してなされたものと認められ、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たるとした初審判断は相当とされた例。

3900 「不利益の範囲」
4407 バックペイの支払い方法
会社は、初審命令主文第1項の「配置転換及び自宅待機命令がなかったらば支給されるべきであった賃金相当額と現に支払った賃金の額との差額に相当する額」が不明であると主張するが、初審命令は、本件配転後の残業手当が大幅減となったこと及び本件自宅待機命令後賞与が支給されていないことを明確に認定し、会社もこの点については認めているから、会社が命令の履行に当たって、差額を算定することに困難を伴うとは考えられないとされた例。

4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
初審命令が年率5分相当額を加算した額の金員の支払を命じたことについては、本件のような賃金の差額の支払のみでは原状回復されないと判断される場合に、加算金の支払を命じることも労働委員会に認められた裁量権の範囲内であり、相当とされた例。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集125集1029頁 
評釈等情報  中央労働時報 2003年4月10日 1012号 19頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京地裁 平成15年(行ウ)第57号 請求の棄却  平成16年 1月15日 判決 
東京地裁 平成15年(行ク)第234号 全部認容  平成16年 1月15日 決定 
 
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