概要情報
事件名 |
エクソンモービル(賃金・一時金差別等) |
事件番号 |
大阪地労委 平成 7年(不)第42号
大阪地労委 平成 9年(不)第32号
大阪地労委 平成 9年(不)第74号
大阪地労委 平成10年(不)第75号
大阪地労委 平成10年(不)第94号
大阪地労委 平成12年(不)第13号
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申立人 |
スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合 |
被申立人 |
エクソンモービル有限会社 |
命令年月日 |
平成15年 4月11日 |
命令区分 |
棄却(命令主文が棄却のみ又は棄却と却下) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、平成3年度から同11年度までの賃金・一時金について、(1)業績評価制度を通じて組合員を差別したこと、(2)同制度の内容等を明らかにしなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、平成3年度ないし同5年度及び同7年度の賃金の格差の是正に関する申立て、並びに平成3年夏季ないし同5年冬季及び同6年冬季ないし同8年夏季の一時金の格差の是正に関する申立ては却下し、その余の申立ては棄却した。 |
命令主文 |
1 申立人の平成3年度ないし同5年度及び同7年度の賃金の格差の是正に関する申立て、並 びに平成3年夏季ないし同5年冬季及び同6年冬季ないし同8年夏季の一時金の格差の是正 に関する申立ては却下する。 2 申立人のその他の申立ては棄却する。 |
判定の要旨 |
5200 除斥期間
賃金の引上げは、前年の業績評価に基づく査定により、毎年4月1日に実施されているから、平成7年6月12日に申立てがなされた賃金の格差是正に係る申立てのうち、査定に基づく賃金の支払が同6年3月31日に終期となる同5年度賃金及び同4年度以前の賃金の格差の是正に係る申立ては、査定に基づく賃金の最後の支払の時から1年を過ぎてなされたものであるので、申立期間を徒過したものとして、労働組合法第27条第2項及び労働委員会規則第34条第1項第3号により却下するとされた例。
5200 除斥期間
賃金の引上げは、前年の業績評価に基づく査定により、毎年4月1日に実施されているから、平成9年8月1日申立てのうち、査定に基づく賃金の支払が同8年3月31日に終期となる同7年度賃金格差の是正に係る申立ては、査定に基づく賃金の最後の支払の時から1年を過ぎてなされたものであるので、申立期間を徒過したものとして、労働組合法第27条第2項及び労働委員会規則第34条第1項第3号により却下するとされた例。
5200 除斥期間
一時金の業績評価に基づく査定は、それぞれ独立して行われ、その査定に基づく一時金の支給も1回限りのものであるから、平成7年6月12日に申立てがなされた一時金の格差に係る申立てのうち、平成5年冬季一時金及び同5年夏季以前の一時金の格差の是正に係る申立ては、支払日から1年を過ぎてなされたものであるので、申立期間を徒過したものとして、労働組合法第27条第2項及び労働委員会規則第34条第1項第3号により却下するとされた例。
5200 除斥期間
一時金の業績評価に基づく査定は、それぞれ独立して行われ、その査定に基づく一時金の支給も1回限りのものであるから、平成9年8月1日に申立てがなされた一時金の格差に係る申立てのうち、同6年冬季一時金から同8年夏季一時金の是正に係る申立てについては、支払日から1年を過ぎてなされたものであるので、申立期間を徒過したものとして、労働組合法第27条第2項及び労働委員会規則第34条第1項第3号により却下するとされた例。
4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
会社は、本件審査が係属していた平成12年2月、X1及びX2が会社に対し、早期退職/セカンド・キャリア支援制度の適用を受け同年3月末日をもって退職する旨届け出たとして、同人らはもはや本件申立てにより救済を受ける利益を放棄しているとみるべきであると主張するが、両名から本件申立てにより救済を受ける利益を放棄する旨の積極的意思表示はなく、しかも、組合は、両名を含む8名の賃金について組合に対する差別的取扱いを受けていると主張して本件申立てを行ったものであるから、組合には両名についても被救済利益が認められるとされた例。
1202 考課査定による差別
業績評価による査定が、本件組合員と他の組合員有資格者を区別することなく適用されている以上、会社が業績評価による査定を導入したことのみをもって、直ちに賃金・一時金の差別支給を日常化させているとはいえないとされた例。
1202 考課査定による差別
平成7年度までは本件組合員の賃上げ額について、一律に差別的取扱いがあるとまでいえず、また、8年度以降の賃上げについては本件組合員のいずれについても差別による業績評価があったと認めるに足る疎明もなく、賃上げ相当額に比して実支給額が低額であるからといって同年度以降の差額が組合を差別したものであると判断することはできないとされた例。
1202 考課査定による差別
一時金について、本件組合員8名のうち、X3、X4、X5及びX6の4名は96.00%ないし100.282%の支給月数であって、組合員有資格者全体の平均とほぼ同月数の一時金が支給されており、中でもX4は、平成11年冬季一時金について100.282%と平均以上の支給月数の一時金が支給されていることから、本件組合員全体が一律に低く査定されているとまではいえないとされた例。
1203 その他給与決定上の取扱い
組合は、一時金についても組合事由の欠勤が控除されることを組合差別であると主張するが、組合と会社は、本件で救済を求めている期間のいずれの一時金についても、欠勤控除の項目も含んだ内容で妥結・協定していること及び同制度は組合に対してのみ適用されるものではなく、一概に不当であると言えない上、別組合に対しては控除されないなどという疎明もないことから、組合員であることのゆえをもってなされた差別的取扱いであるとすることはできないとされた例。
1203 その他給与決定上の取扱い
組合は、同一職種、同一年齢では賃金が同額であるべきであって、本件組合員について、それぞれ職種・年齢を同じくする従業員の平均賃金との間に存する格差は救済されなければならないと主張するが、その当否はともかく、これが本件賃金・一時金に関して不当労働行為が存在することの根拠となり得るものではないとされた例。
1203 その他給与決定上の取扱い
組合員X7ら8名の賃金及び一時金に係る格差是正の申立てに関しては、会社の賃金及び一時金制度の仕組み自体が、本件組合員各人に対して、業績評価において組合員であるがゆえに特段の不当な運用がなされているともいえず、本件組合員が賃金及び一時金の支給において差別されているとは認められないとされた例。
2240 説明・説得の程度
賃金・一時金に係る制度について、会社からどのような内容が公開されるかは、労使間の交渉等で決められるべきものであり、従前から会社は、組合に対して賃金・一時金制度の概要についてはすでに公開している上、賃上げに関する業績査定配分の比率を拡大していくのに応じて、組合の公開要求を受けて、賃金・一時金制度の詳細を順次明らかにしていることが認められ、会社の対応は不当労働行為に当たらないとされた例。
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業種・規模 |
石油製品・石炭製品製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集125集941頁 |
評釈等情報 |
 
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