労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  谷本産業 
事件番号  大阪地労委 平成 9年(不)第63号 
申立人  全日本金属情報機器労働組合谷本産業支部 
被申立人  谷本産業株式会社 
命令年月日  平成12年 2月14日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)組合員2名に対し訓戒処分を行ったこと、(2)夏季一時金に関して組合員に対し低査定としたこと、遅刻、早退の控除を行ったこと、(3)年末一時金に係る団体交渉において、回答の根拠を明らかにしないなど不誠実な対応をしたことが不当労働行為であるとして申立のあった事件で、(1)組合員2名に対する訓戒処分はなかったものとしての取扱い、(2)夏季一時金について、遅刻、早退がなかったものとして計算し差額支払い、(3)ポストノーティスを命じ、その余の申立て(夏季一時金に係る低査定等)は棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員X1に対する平成9年7月24日付け訓戒処分並
 びに同X8に対する同日付け及び同年10月9日付け訓戒処分がなかったもの
 として取り扱わなければならない。
2 被申立人は、申立人組合員X2、同X3、同X4、同X5、同X6、同X1
 及び同X7に対し、平成9年夏季一時金について、平成8年11月28日から
 同9年2月2日までの間に遅刻及び早退がなかったもの として計算した額と
 既に支払った額との差額を支払わなければならない。
3 被申立人は、1メートル×2メートル大の白色板に下記のとおり黒色文字で
 明瞭に記載して、被申立人会社の正面玄関付近の従業員の見やすい場所に7日
 間掲示しなければならない。
                 記
                              年 月 日
 全日本金属情報機器労働組合谷本産業支部
  執行委員長     X8      殿
                       谷本産業株式会社
                        代表取締役    Y1
  当社が行った下記の行為は、大阪府地方労働委員会において、労働組合法第
 七条第一号、第二号及び第三号に該当する不当労働行為であると認められまし
 た。今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
                 記
 (1) 貴組合員X1氏に対して平成9年7月24日付けで訓戒処分を行ったこ
  と並びに同X8氏に対して同日付け及び同年10月9日付けで訓戒処分を行っ
  たこと。
 (2) 貴組合員X2氏、同X3氏、同X4氏、同X5氏、同X6氏、同X1氏
  及び同X7氏に対して、平成9年夏季一時金を支給した際、平成8年11月
  28日から同9年2月2日までの間に遅刻及び早退があったものとして減額
  したこと。
 (3) 平成9年年末一時金についての団体交渉において、回答の根拠を明ら
  かにせず、また、裏付けとなる資料を示さないなど誠意のある対応を行わな
  かったこと。


4 申立人のその他の申立ては棄却する。 
判定の要旨  1400 制裁処分
1600 休暇の取扱い
組合員X1に対する訓戒処分は、時期変更権を行使したにも関わらず、年休として届け出た日に出勤しなかったことに対し行われたが、会社が休暇を変更して取得するよう指定した期間の方が、むしろ従業員の出勤者数が少ない状況にあるなど、時期変更権の行使が正当なものであったとは認め難く、会社と組合が対立していた状況にあったことを総合的に判断すると、X1に対する訓戒処分は不当なものであり、このことは組合を嫌悪して同人が組合員であるが故に行われた不利益取扱いであるとともに組合の弱体化を企図したものであって、労働組合法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為であるとされた例。

0900 不正行為
1400 制裁処分
組合員X8に対する訓戒処分は、早退届に虚偽の申告がなされていたこと、地裁への出席について、呼び出し状がなく、私用として無断欠勤とされたことによるが、早退届の記載は虚偽の申告をしたとまでは言えず、地裁への出席については、会社は同人が裁判所から当事者本人として出席を求められていることを知りうる状態にあったと推認できることから、いずれの訓戒処分も不当なものであって、会社と組合が激しく対立していたことを併せ考慮すると、これらの訓戒処分は、組合を嫌悪し、同人が組合員であることを理由に不利益に取り扱うとともに組合の弱体化を企図した労働組合法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為と判断するのが相当であるとされた例。

1202 考課査定による差別
夏季一時金に係る組合員に対する低査定については、査定対象とされた行為についてみると、考課対象として当然取り上げられるべきものが多くあり、会社における規律保持の観点からみて評価を低くされたとしてもやむを得ないと考えられ、組合員に対する減額査定の適用については、不当労働行為とまでは言うことはできないとされた例。

1203 その他給与決定上の取扱い
3700 使用者の認識・嫌悪
夏季一時金について、大阪地裁での和解内容では、腕章着用闘争期間中の遅刻及び早退はなかったものとして取り扱うのが相当であるにもかかわらず、これを出勤率控除の対象としたことは合理性を欠くものであり、これは腕章着用闘争等の組合活動を嫌悪した会社が組合員を不利益に取り扱うとともに、組合の弱体化を企図したものというべきであり、かかる会社の行為は労働組合法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2240 説明・説得の程度
年末一時金の団交において、経理状況を一切説明せず、かつ、組合の理解が得られるための努力を何ら示していないのであるから、かかる会社の対応は、誠実に団交に応じる義務を尽くしているとは言えず、労働組合法第七条第二号に該当する不当労働行為であるとされた例。

業種・規模  鉄鋼業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集116集170頁 
評釈等情報   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委 平成12年(不再)第10号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  平成13年12月19日 決定 
 
[全文情報] この事件の全文情報は約433KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。