事件名 |
延岡学園 |
事件番号 |
中労委 平成 9年(不再)第15号
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再審査申立人 |
学校法人延岡学園 |
再審査被申立人 |
延岡学園教職員組合 |
命令年月日 |
平成13年 1月10日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
学園が、(1)組合員X1ら5名の昭和63年度ないし平成5年度
(うちX2については、同5年度を除く。)における職能給の格付けを最低格の1格とし、また、同期間中の教諭の平均支給月数
を常に下回る賞与を支給したこと、(2)組合員のみを交通指導係に選任したこと、(3)組合員X1を授業時間中の盗難事件発
生を理由に出勤停止処分に付したこと、(4)合理的な根拠・資料を示さず、団体交渉に不誠実な態度で臨んだこと、(5)組合
の信用・名誉を毀損するような発言、あるいは組合活動への干渉となるような発言及び組合からの脱退を迫るような発言等を行っ
たこと、(6)本件救済申立てを理由として組合を非難し、また、組合員に退職強要を行ったこと等が争われた事件で、初審宮崎
地労委は、(1)給与については、組合員X1ら5名が職能給の2格に格付けされていれば平成4年度及び同5年度(X2につい
ては同4年度のみ)に得たであろう給与相当額と既支払額との差額、賞与については、組合員X1ら5名が教諭に対する平均支給
月数で支給されていれば、平成4年度及び5年度(X2については同4年度のみ)の間に支給されたであろう賞与相当額と既支払
い額との差額の支払い(年5分加算)、(2)組合員であることを理由に交通指導係に選任してはならないこと、(3)X1に対
する出勤停止処分を取り消し、当該処分がなかったものとしての取扱い及び当該処分がなかったならば得たであろう給与・賞与相
当額と既支払額との差額の支払い(年5分加算)、(4)団体交渉において、給与表の提出要求を拒否してはならないこと、
(5)組合委員長の解雇に係る組合員の裁判活動を阻害する発言をすることなどによる支配介入の禁止、(6)救済申立てをした
ことを理由として組合員に退職を強要してはならないこと、(7)文書手交及び(8)履行報告を命じ、その余の申立てを却下な
いし棄却した。学園はこれを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、初審命令の一部を変更し、その余の本件再審査申立て
を棄却した。 |
命令主文 |
I 初審命令主文第1項ないし第8項を次のとおり変更する。
1 再審査申立人学校法人延岡学園(以下「学園」という。)は、再審査被申立人延岡学園教職員組合(以下「組合」とい
う。)の組合員X1、同X3、同X2、同X4及び元組合員X5に対し、給与については、平成4年度及び同5年度(元組合員
X5にあっては、同4年度)において、同人らが職能給の2格に格付けされていれば得たであろう給与相当額と既に支払われた額
との差額、賞与については、同4年7月ないし同6年3月(元組合員X5にあっては、同4年7月ないし同5年3月)の各支給月
において、同人らが教諭の平均支給月数で支給されていれば得たであろう賞与相当額と既に支払われた額との差額及びこれらに各
給与及び各賞与を支払うべきであった日の翌日から完済日まで年5分の割合による金員を支払わなければならない。
2 学園は、組合員であることを理由として交通指導係へ選任してはならない。
3 学園は、組合の組合員X1に対する平成5年12月25日付けの出勤停止処分及びそれに伴う給与上の措置を取り消し、そ
れがなかったものとして取り扱い、同人に対し、当該処分がなかったならば得たであろう給与及び賞与相当額と既に支払われた額
との差額及びこれらに各給与及び各賞与を支払うべきであった日の翌日から完済日まで年5分の割合による金員を支払わなければ
ならない。
4 学園は、団体交渉において、組合から給与表の提出要求があったときは、誠実に対応しなければならない。
5 学園は、組合の組合員に対し、組合員の裁判活動を阻害する言動をしたり、転職するよう求めたり、職員朝礼の場において
職員全員に対し、組合の組合活動を非難したり、組合の加入した上部団体を嫌悪する発言をしたり、非組合員である職員に対し、
組合の組合活動を非難する内容の文書に署名・捺印させたりして、組合の組合活動に支配介入してはならない。
6 学園は、組合に対し、本命令受領の日から7日以内に、下記の文書を手交しなければならない。
記
平成 年 月 日
延岡学園教職員組合
執行委員長 X6 殿
学校法人 延岡学園
理事長 Y1 印
当学園が行った貴組合及び記組合員に対する下記の行為は、中央労働委員会によって、労働組合法第7条第1号、第2号及び
第3号に該当する不当労働行為であると認定されましたので、今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
記
1 貴組合の組合員に対し、給与については、職能給の格付けを最低格の1格とし、また、賞与については、教諭の平均支給月
数を常に下回って支給したこと。
2 貴組合の組合員であることを理由として交通指導係へ選任したこと。
3 貴組合の組合員X1を平成5年12月25日付けで出勤停止処分とし、それに伴う給与上の措置をしたこと。
4 団体交渉において、貴組合からの給与表の提出要求に誠実に対応しなかったこと。
5 貴組合の組合員に対し、貴組合員の裁判活動を阻害する言動をしたり、転職するよう求めたり、職員朝礼等の場において職
員全員に対し、貴組合の組合活動を非難したり、貴組合の加入した上部団体を嫌悪する発言をしたり、非組合員である職員に対
し、貴組合の組合活動を非難する内容の文書に署名・捺印させたりして、組合活動に支配介入したこと。
II その余の本件再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
1202 考課査定による差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員らに対する考課査定結果及び給与・賞与の支給実態をみると、組合員らと組合員以外の者とに明白な格差が存在することは
明らかであり、また、個々の組合員の勤務実態と考課査定との具体的関連についての疎明はなく、組合員らの勤務成績が非組合員
らよりも格別劣っていたことは窺われず、これに本件労使事情を併せ考えれば、組合員らに対する給与・賞与の差別は、同人らの
勤務成績を理由とするものではなく、同人らが組合員であることを理由になされたものであるといわざるを得ず、これを不当労働
行為であるとした初審判断を維持した例。
1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
交通指導係の業務は、他の業務に従事する職員に比べ、一定の不利益を被ることは明らかであり 本件労使事情を併せ考えれば、
学園は、組合員であることを理由に、一定の不利益を被る同係に組合員のみを選任したものといわざるを得ず、これを不当労働行
為であるとした初審判断を維持した例。、
1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
本件盗難事件を理由として組合員X1を出勤停止処分及びそれに伴い昇給延伸1年としたことは、同人が5年間副執行委員長を務
めていたことと本件労使事情を併せ考えれば、学園内における組合の実質的リーダーであった同人に対し、本件盗難事件を口実に
して過大な処分を行ったものといわざるを得ず、これを不当労働行為であるとした初審判断を維持した例。
2240 説明・説得の程度
2300 賃金・労働時間
学園は、給与表を職員室内に掲示するだけではなく、団交において給与表のどの範囲を提出できるのか、また、提出できないので
あればその理由を、組合に対し誠意をもって説明すべきであり、また、給与表の情宣活動への利用など、学園にとって不都合な事
情があれば、その取扱いについて組合と協議すべきであるのに、このような協議や説明をせずに給与表の提出要求に応じなかった
ものであり、このような学園の態度を不当労働行為であるとした初審判断を維持した例。
2620 反組合的言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
学園の管理職らの組合に対する言動は、組合員に心理的圧迫を加えて組合員の組合活動の抑圧を意図したり、職員の大多数を占め
る非組合員に対して組合の活動について好ましくない印象を与え、組合の活動にもっと目を向けさせて組合活動を非難するように
しむけたりして、組合の弱体化を企図したものであるといわざるを得ず、これを不当労働行為であるとした初審判断を維持した
例。
3201 不当労働行為とされなかった例
初審命令は、本件救済申立て後になされた学園の部長の発言を労働組合法第7条第4号の報復的不利益取扱いにも該当すると判断
したが、中労委は同条第3号の支配介入のみに該当すると判断した例。
3106 その他の行為
使用者だからといって言論の自由が否定されるいわれはないが、その言論が組合の結成、運営に対する支配介入にわたる場合は不
当労働行為として禁止の対象となるのであり、組合に対する使用者の言論が不当労働行為に該当するかどうかは、言論の内容、発
表の手段、方法、発表の時期、発表者の地位、身分、言論発表の与える影響などを総合して判断し、当該言論が組合員に対し威嚇
的効果を与え、組合の組織、運営に影響を及ぼすような場合は支配介入になるとされた例。
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業種・規模 |
教育(自動車教習所を含む) |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集119集1002頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 2001年4月 982号 13頁
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