労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  延岡学園 
事件番号  宮崎地労委 平成 5年(不)第2号 
申立人  延岡学園教職員組合 
被申立人  学校法人延岡学園 
命令年月日  平成 9年 3月 6日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  学園が、申立人組合の組合員に対し、<1>組合員の職能給部分を各号俸とも最低格扱いにしていること、<2>組合員だけを時間内外に交通指導に立たせたりして、教育業務から排除していること、<3>授業中における盗難事件の責めを組合員に負わせ、もって出勤停止処分にしたこと、<4>執行委員長を解雇し、地位保全の仮処分命令が出た後も校内立入りを妨害していること、<5>団体交渉に不誠実な態度で臨んでいること、<6>職場内での組合機関紙配布、集会及び組合費徴収を禁止していること、<7>救済申立てを理由に退職を強要したこと、<8>執行委員長の職場復帰に反対する文書等に一般職員の記名捺印を強要するなど、<9>組合活動に対する誹謗中傷や干渉発言等を行っていること等がそれぞれ不当労働行為に当たるとして争われた事件で、<1>については組合員5名に対する職能給の2格に格付けし、バックペイ(年5分加算)、<2>については交通指導係への選任の禁止、<3>については出勤停止処分の取消しとバックペイ(年5分加算)、<5>については団体交渉において組合からの給与表の提出要求拒否の禁止、<7>については退職の強要の禁止、<9>誹謗・中傷発言の禁止並びにこれらに関する文書手交及び履行報告を命じ、<4>、<6>及び<8>については申立期間徒過により却下し、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合の組合員X1、X2、X3およびX4に対して、給与については、平成4年度から平成5年度の間において、同人らが職能給の2格に格づけされていれば得たであろう給与相当額と、現実に支払われた額との差額を、賞与については、平成4年7月、同年12月、平成5年3月、同年7月、同年12月および平成6年3月の各支給月において、同人らが被申立人学園の教諭に対する平均的支給月数で支給されていれば得たであろう賞与相当額と、現実に支払われた額との差額を各人に支払わなければならない。
 また、申立人組合の元組合員X5に対しては、給与については、平成4年度において、同人が職能給の2格に格づけされていれば得たであろう給与相当額と、現実に支払われた額との差額を、賞与については、平成4年7月、同年12月および平成5年3月の各支給月において、同人が被申立人学園の教諭に対する平均的支給月数で支給されていれば得たであろう賞与相当額と、現実に支払われた額との差額を同人に支払わなければならない。
 なお、被申立人は、上記の各人に対し、各給与および各賞与のそれぞれの差額について、各給与および各賞与を支払うべきであった日の翌日から完済日まで、年5分の割合による金員を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人組合の組合員を、組合員であることを理由に、交通指導係に選任してはならない。
3 被申立人は、申立人組合の組合員X1に対する平成5年12月25日付け出勤停止処分を取り消し、当該処分がなかったものとして同人を取り扱い、同人に対し、当該処分がなかったならば得られたであろう給与および賞与の相当額と、現実に支払われた額との差額を支払わなければならない。
 なお、被申立人は、各給与および各賞与のそれぞれの差額について、各給与および各賞与を支払うべきであった日の翌日から完済日まで、年5分の割合による金員を支払わなければならない。
4 被申立人は、団体交渉において、申立人からの給与表の提出要求を拒否してはならない。
5 被申立人は、申立人に対して次のような支配介入をしてはならない。
 (1) 申立人組合の組合員に対し、申立人組合の執行委員長X6の解雇にかかる組合員の裁判活動を阻害する言動をすること。
 (2) 被申立人学園の非組合員である職員に対して、申立人組合の執行委員長X6および申立人の組合活動を非難するような発言をすること。
 (3) 被申立人学園の非組合員である職員に対して、暗に申立人が被申立人にとって好ましい存在ではないことを印象づけるような発言をすること。
 (4) 被申立人学園の非組合員である職員に対して、申立人組合の組合員の活動を非難する内容の文書に署名・捺印を強要すること。
 (5) 被申立人学園の非組合員である職員および申立人組合の組合員に対して、申立人が加入した上部団体を嫌悪する発言をすること。
6 被申立人は、申立人が当委員会に不当労働行為救済申立てをしたことを理由に、申立人組合の組合員に対し退職を強要してはならない。
7 被申立人は、申立人に対し、本命令書受領の日から7日以内に下記文書を手交しなければならない。
                 記
                             年  月  日
延岡学園教職員組合
 執行委員長 X6 様
                      学校法人 延岡学園
                       理事長 Y1
 当学園が行った貴組合および貴組合の組合員に対する下記の行為は、宮崎県地方労働委員会によって、労働組合法第7条第1号、第2号、第3号および第4号に該当する不当労働行為であると認定されましたので、今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
                 記
1 貴組合の組合員にかかる給与および賞与の支給について、不利益な取扱をしたこと。
2 貴組合の組合員だけを交通指導係に選任したこと。
3 貴組合の組合員X1を平成5年12月25日付けで出勤停止処分にしたこと。
4 団体交渉において、貴組合からの給与表の提出要求を拒否したこと。
5 貴組合の組合員に対し、貴組合の執行委員長X6の解雇にかかる組合員の裁判活動を阻害する言動をしたこと。
6 学園の非組合員である職員に対して、貴組合の執行委員長堀田孝一および貴組合の組合活動を非難するような発言をしたこと。
7 学園の非組合員である職員に対して、暗に貴組合が学園にとって好ましい存在ではないことを印象づけるような発言をしたこと。
8 学園の非組合員である職員に対して、貴組合の組合員の活動を非難する内容の文書に署名・捺印を強要したこと。
9 学園の非組合員である職員および貴組合の組合員に対して、貴組合が加入した上部団体を嫌悪する発言をしたこと。
10 貴組合が宮崎県地方労働委員会に不当労働行為救済申立てをしたことを理由に、貴組合の組合員に対し退職を強要したこと。
8 被申立人は前記第1項、第3項および第7項を履行した時は、当委員会に速やかに文書で報告しなければならない。
9 申立人の、委員長X6の校内立入許可申立て、X1に対する譴責処分取消申立て、職場内での組合機関紙等配布許可申立て、組合職場会のための校舎使用許可申立ておよび勤務時間中の職場内での組合費の徴収許可申立ては、これを却下する。
10 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
考課査定制度の評価基準、評価方法、その結果に基づく賃金の支給状況等から組合員に対する考課査定は学園の反組合的意思により行われたものと推認され、かつ、学園が考課査定の合理性についての具体的立証を行おうとしなかったことから組合員に対する査定は、組合員であること及び組合活動を理由とした不利益取扱であると同時に、組合の弱体化を図った支配介入であるとされた例

1302 就業上の差別
交通指導係の選任をみると、組合員だけが選任されていることから組合員を職員朝礼などから排除することが目的と認められ、組合員だけを交通指導係に選任したことは、不利益取扱いであり、組合の団結を阻害する支配介入であるとされた例

1401 労務の受領拒否
組合員X1が同一年度内に譴責及び減給の処分を受けていたことを考慮しても、本件の事実経過からみて同人に対する出勤停止処分は行き過ぎた処分であるとされた例

2249 その他使用者の態度
賃金体系を議題とした話し合いで企業秘密を理由として給与表を組合に示すことを拒否したことは、団体交渉拒否に当たるとされた例

2700 威嚇・暴力行為
組合委員長X6の裁判での証言の訂正を組合員に求めたことは、組合活動に心理的な圧迫を加える目的でなされたものであり、組合に対する支配介入であるとされた例

3200 不当労働行為とされた例
不当労働行為救済申立を契機になされた組合員X1への転職示唆は、同人に対し、精神的圧迫を加えるものであることから、労組法7条4号の報復的不利益取扱いに当たるとされた例

4421 文書掲示等を命じた例
教育の場であることを考慮し、誓約文の手交が相当であるとされた例

1400 制裁処分
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
<1>組合委員長の校内立入許可申立て、<2>組合員X1に対する譴責処分取消申立て、<3>職場内での組合機関紙等配布許可申立て、<4>組合職場集会のための校舎使用許可申立て、<5>勤務時間中の職場内での組合費の徴収許可申立ては、それぞれ申立期間を徒過したものとして却下された例

1200 降格・不昇格
1302 就業上の差別
組合員X7の昇給申立て等その他の申立ては、疎明が不十分であること等の理由により棄却された例

業種・規模  教育(自動車教習所を含む) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集107集228頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委 平成 9年(不再)第15号 一部変更(初審命令を一部取消し)  平成13年 1月10日 決定 
 
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