事件名 |
共同交通 |
事件番号 |
北海道地労委 平成13年(不)第12号
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申立人 |
共同タクシー労働組合 |
申立人 |
労働組合共同交通行動委員会 |
申立人 |
共同交通労働組合 |
被申立人 |
共同交通株式会社 |
命令年月日 |
平成14年 7月 9日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、(1)平成13年度の新賃金体系及び新勤務体系・
勤務時間に関する団体交渉において、導入の根拠・理由を具体的に説明しなかったこと、(2)新賃金体系等に関し、組合員の個
別に意思確認したこと、(3)組合員に対し、新賃金体系等について同意しないことを理由として夏季一時金を支給しないこと及
び(4)組合員の一部に対し、新賃金体系等に基づいて計算した賃金を支払ったことが、それぞれ不当労働行為であるとして申立
てがあった事件で、会社に対して、(1)新賃金体系等についての提案理由を具体的に説明すること、(2)個別協定破棄通告組
合員に対する個別意思確認などをしないこと、(3)新賃金体系等について同意しないことを理由として夏季一時金の提案及び支
給しないという不利益取扱いをしてはならないこと、(4)従前の勤務体系・勤務時間に基づいて就労している所属組合員に従前
の賃金体系に基づく賃金を支給せず、新賃金体系等に基づいて計算した賃金を支払うという不利益取扱いをしてはならないこと等
及び(5)文書掲示を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人らが平成13年5月14日付け及び同月15
日付けで申し入れた新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間に関する団体交渉について、提案理由を具体的に説明するなどして誠実
に応じなければならない。
2 被申立人は、新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間に関し、いったん個別協定を締結した後、申立人労働組合共同交通行動委
員会に加入して、当該申立人から破棄通告がなされた組合員に対し、個別に意思確認などをして、当該申立人の運営に支配介入し
てはならない。
3 被申立人は、申立人らに所属する組合員に対し、新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間について同意しないことを理由として
夏季一時金の提案及び支給しないという不利益取扱いをしてはならない。また、これを手段として申立人らの組合運営に支配介入
してはならない。
4 被申立人は、申立人らに所属する組合員のうち、従前の勤務体系・勤務時間に基づいて就労している者に対し、従前の賃金体
系に基づく賃金を支給せず、新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間に基づいて計算した賃金を支払うという不利益取扱いをしては
ならない。また、これを手段として申立人らの組合運営に支配介入してはならない。
5 被申立人は、次の内容の文書を縦1メートル、横1.5メートルの大きさの白紙にかい書で明瞭に記載し、被申立人の正面玄
関の見やすい場所に、本命令書写しの交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。
記
当社が行った次の行為は、北海道地方労働委員会において、労働組合法第七条第一号、第二号及び第三号に該当する不当労働
行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないようにします。
記
1 平成13年度の新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間に関する団体交渉において、提案理由を具体的に説明しなかったこ
と。
2 新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間に関し、いったん個別協定を締結した後、労働組合共同交通行動委員会に加入して、
当該組合から破棄通告がなされた組合員に対し、個別に意思確認などをしたこと。
3 貴組合に所属する組合員に対し、新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間について同意しないことを理由として夏季一時金の
提案及び支給しないという取扱いをしたこと。
4 貴組合に所属する組合員のうち、従前の勤務体系・勤務時間に基づいて就労している者に対し、従前の賃金体系に基づく賃
金を支給せず、新賃金体系及び新勤務体系・勤務時間に基づいて計算した賃金を支払うという取扱いをしたこと。
平成 年 月 日(掲示する初日を記入すること。)
労働組合共同交通行動委員会
執行委員長 X1 様
共同交通労働組合
執行委員長 X2 様
共同タクシー労働組合
執行委員長 X3 様
共同交通株式会社
代表取締役 Y1
代表取締役 Y2 |
判定の要旨 |
2240 説明・説得の程度
4500 交渉拒否理由または交渉条件に関する指示に触れた例
基本給の大幅引下げ、勤続給の廃止、家族手当の廃止、有給休暇補償における足切りスライドの廃止などにみられるように、労働
条件の重大な低下をもたらすものであるにもかかわらず、そのような新賃金体系等の導入を必要とする根拠・理由などについては
何ら説明していない。そのため、申立人らは、実質的な交渉ができない状況にあった。よって、このような会社の対応は不誠実な
団体交渉であり、労働組合法第七条第二号に該当する不当労働行為である。
2622 組合員調査
2901 組合無視
会社が新組合の反対を押し切って、頭越しに直接破棄通告者に対してなした意思確認作業は、破棄通告者の意思確認というより
も、むしろ個別協定は有効であるとする会社の考え方を一方的に伝えるために行われており、新賃金体系等の導入に反対する新組
合の活動として行った個別協定破棄通告を無視ないし否定するものである。このような会社の行為は、結成されたばかりの新組合
の弱体化を企図した組合運営に対する支配介入であり、労働組合法第七条第三号に該当する不当労働行為である。
1201 支払い遅延・給付差別
2901 組合無視
新賃金体系等に同意しないことを理由として夏季一時金の提案をせず、その結果として夏季一時金を支給しないことは、新賃金体
系等の導入に反対している新組合の組合員を嫌悪して行った不利益取扱いであり、新組合の弱体化を企図した組合運営に対する支
配介入であって、労働組合法第七条第一号及び第三号に該当する不当労働行為である。
3103 労働協約締結をめぐる行為
従前の賃金体系等を内容とする平成12年度労働協約があるが、平成13年度分の賃金に関する労働協約が存在しないことから、
同13年度は無協約状態であるかのごとく解されないでもない。しかし、前記第1の2の(20)で認定してとおり、この労働協
約にその有効期間が定められていないので、これは個別協定に優先して適用されるものである。
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業種・規模 |
道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集123集279頁 |
評釈等情報 |
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