事件名 |
岩井金属工業 |
事件番号 |
大阪地労委 平成 4年(不)第58号
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申立人 |
岩井金属労働組合 |
被申立人 |
岩井金属工業株式会社 |
命令年月日 |
平成13年 3月 5日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含
む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、組合員4名に対して、加工不良の発生、会社敷地内での組合
活動、暴言等を理由として懲戒処分等を行ったこと、賃上げ・一時金について非組合員と差別して支給したこと及び組合との労働
協約を一方的に破棄したことが、不当労働行為であるとして争われた事件で、(1)組合員に対する加工不良の発生、会社敷地内
での組合活動、暴言等を理由とする減給処分、出勤停止処分、譴責処分、帰宅命令及び班長としての職務を解いたことがなかった
ものとしての取扱い及び減給又は賃金カットした額の支払い、(2)労働協約の解約がなかったものとしての取扱い、(3)組合
員に対する平成4年から平成9年の賃上げ及び夏季一時金並びに平成3年から平成8年(平成7年を除く)の年末一時金の是正額
の支払い(年率5分の金員付加)、(4)謝罪文の手交及び掲示を命じ、その余の申立て(損害賠償請求)については却下し
た。 |
命令主文 |
1 被申立人は、業務上の不良発生等を理由とする下記の処分をな
かったものと
して取扱い、下記の各組合員に対して、減給し又は賃金カットした額をそれぞ
れ支払わなければならない。
(1)平成4年5月12日付け申立人組合員X1及び同X2に対する減給処分(平
成4年(不)第58号事件)
(2)平成4年5月27日付け申立人組合員X2に対する出勤停止処分(平成4
年(不)第58号事件)
(3)平成4年7月1日付け申立人組合員X1に対する出勤停止処分(平成4年
(不)第58号事件)
(4)平成4年7月13日付け申立人組合員X2に対する出勤停止処分(平成4
年(不)第58号事件)
(5)平成4年7月20日付け申立人組合員X1に対する出勤停止処分(平成4
年(不)第58号事件)
(6)平成4年8月18日付け申立人組合員X1に対する譴責処分(平成4年(
不)第58号事件)
(7)平成4年8月27日付け申立人組合員X2に対する譴責処分(平成4年(
不)第58号事件)
2 被申立人は、申立人との労働協約の平成4年9月9日をもっての解約をなか
ったものとして取り扱わなければならない。
3 被申立人は、会社敷地内での組合活動等を理由とする下記の処分をなかった
ものとして取り扱い、下記の各組合員に対して、賃金カットした額をそれぞれ
支払わなければならない。
(1)平成4年10月12日付け申立人組合員X1及び同X2に対する譴責処分(
平成4年(不)第58号事件)
(2)平成4年10月26日付け申立人組合員X1に対する出勤停止処分(平成
4年(不)第58号事件)
(3)平成4年10月27日付け申立人組合員X2に対する出勤停止処分(平成
4年(不)第58号事件)
(4)平成5年9月29日付け申立人組合員X2に対する出勤停止処分(平成6
年(不)第64号事件)
(5)平成6年11月5日付け申立人組合員X3、同X2及び同X4に対する出勤停
止処分(平成7年(不)第52号事件)
(6)平成6年11月24日付け申立人組合員X2に対する出勤停止処分(平成
7年(不)第52号事件)
(7)平成7年4月10日付け申立人組合員X1、同X2、同X3及び同X4に対する
出勤停止処分(平成7年(不)第52号事件)
4 被申立人は、下記の帰宅命令をなかったものとして取り扱い、下記の各組合
員に対して、賃金カットした額をそれぞれ支払わなければならない。
(1)平成4年12月3日付け申立人組合員X1及び同X2に対する帰宅命令(平
成4年(不)第58号事件)
(2)平成5年2月18日付け申立人組合員X1及び同X2に対する帰宅命令(平
成5年(不)第33号事件)
(3)平成5年4月2日付け申立人組合員X1及び同X2に対する帰宅命令(平成
5年(不)第33号事件)
(4)平成5年9月22日付け申立人組合員X1、同X2及び同X4に対する帰宅命
令(平成6年(不)第62号事件)
5 被申立人は、暴言を理由とする申立人組合員X1に対する平成4年12月28
日付け出勤停止処分をなかったものとして取り扱い、同人に対し、賃金カット
した額を支払わなければならない。(平成5年(不)第83号事件)
6 被申立人は、平成7年5月20日付けで申立人組合員Tの班長としての職務
を解いたことをなかったものとして取り扱わなければならない。
7 被申立人は、下記の申立人組合員に対し、下記の各一時金及び各賃上げに関
して、平成8年年末一時金を除き、査定率が100%を下回る場合には、各組
合員の基本給(平成6年以降は基準内賃金)に総原資を従業員の基本給(平成
6年以降は基準内賃金)の総計で除して得られる数値を乗じて算出される金額
に、査定率が100%以上の場合には、上記より算出される金額に査定率を乗
じて算出される金額に、また、平成8年年末一時金については、各組合員の基
準内賃金に総原資を従業員の基準内賃金の総計で除して得られる数値を乗じて
算出される金額に1万円を加えた金額に、それぞれ是正し、是正後の金額と既
に支払った額との差額及びこれらに各支払期以降年率5分を乗じた金額を支払
わなければならない。
(1)申立人組合員X1及び同X2に対する平成3年年末から平成7年夏季及び平
成8年夏季から平成9年夏季の各一時金並びに平成4年から平成9年の各
賃上げ
(2)申立人組合員X3及び同X4に対する平成6年年末から平成7年夏季及び平
成8年夏季から平成9年夏季の各一時金並びに平成7年から平成9年の各
賃上げ
8 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、1メ
ートル×2メートル大の白色板に同文を明瞭に記載して、被申立人会社の大阪
府東大阪市中野41番地の2の工場の玄関付近の従業員の見やすい場所に10
日間掲示しなければならない。
記
年 月 日
岩井金属労働組合
執行委員長 X3 殿
岩井金属工業株式会社
代表取締役 Y1
当社が行った下記の行為は、大阪府地方労働委員会において、労働組合法第7
条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。今後この
ような行為を繰り返さないようにいたします。
記
1 貴組合員に対して、平成4年5月12日付け以降、業務上の不良発生、敷
地内の組合活動等を理由として延べ22件の懲戒処分をしたこと。
2 貴組合との労働協約を平成4年9月9日を持って解約したこと。
3 貴組合員に対して、平成4年12月3日付け以降、延べ9回の帰宅命令を
発したこと。
4 平成7年5月20日付けで貴組合員X4氏に対して班長の職務を解いたこと
。
5 平成3年年末から平成7年夏季及び平成8年夏季から平成9年夏季の各一
時金並びに平成4年から平成9年の各賃上げに関して貴組合員を差別したこ
と。
9 申立人のその他の申立は却下する。 |
判定の要旨 |
1400 制裁処分
(1)組合副委員長及び組合書記長に対し、不良品発生等を理由とする第1次から第4次の懲戒処分は、合理的な企業秩序の維持
という目的や業務上の必要に基づいたものとみることはできず、これら一連の処分は、組合員の業務上のミスや会社の一方的な対
応への組合の抗議等を口実として、同人らに不利益を課し、もって、組合の弱体化を図ったものというべきであって、労働組合法
第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。
3103 労働協約締結をめぐる行為
(2)本件労働協約破棄は、労働組合法の定める90日以上の予告期間をもってなされているが、合理的理由や必要性に基づいて
いたものとは到底解されず、会社が、組合活動を制限し、組合を弱体化する目的から、組合活動の拠りどころとなっている協定を
意図的に破棄したものとみるべきであって、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。
1400 制裁処分
(3)組合員に対する組合の就業時間外の会社施設内での組合活動又は会社掲示板への組合ビラの貼付を理由とする第1次から第
6次の懲戒処分は、何ら法的根拠はなく、組合活動として不当なものとは認められないことから、処分の理由としては相当ではな
く、会社が組合の組合活動を嫌悪して、組合員を不利益に取り扱い、もって組合の弱体化を図るためになされたものであり、労働
組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。
1400 制裁処分
(4)東京総行動に参加した組合員に対する第1次から第4次の帰宅命令は、合理性に乏しいといわざるを得ず、当時の労使関係
を考慮すれば、東京での要請活動に対する報復としてなされたものであって、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当
労働行為であるとされた例。
1400 制裁処分
(5)組合副委員長に対する課長への暴言を理由とした懲戒処分は、課長が巧みに口論を誘導したとみるのが相当であり、会社の
処分手続き等にも不適切な点があることは明かであるから、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為とされた
例。
1200 降格・不昇格
(6)組合青年部長の班長解職は、解職の合理的な理由及び慎重な手続を欠いたまま、業務上の問題の発生を口実として行われた
とみるべきで、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為とされた例。
1202 考課査定による差別
(7)本件賃上げ及び一時金に関して、査定、欠勤控除ともに組合嫌悪に基づいた恣意的、差別的な運用がなされていたものと判
断されることから、組合員を非組合員に比べ、差別的に取り扱ったものとみるべきで、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当
する不当労働行為とされた例。
5005 損害賠償の請求
(8)労働委員会による救済は、直接にかつ事実上、団結権に対する侵害そのものを除去し、もって正常な労使関係の回復を図ろ
うとするものであるので、損害賠償の観点からする金銭面の請求は、不当労働行為救済制度になじまないとして、労働委員会規則
第34条により却下された例。
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業種・規模 |
金属製品製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集119集434頁 |
評釈等情報 |
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