労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  商大八戸ノ里ドライビングスクール(残業差別) 
事件番号  中労委 平成 6年(不再)第15号 
中労委 平成 6年(不再)第18号 
再審査申立人  株式会社八戸ノ里ドライビングスクール 
再審査被申立人  全国一般労働組合大阪府本部・大阪自動車教習所労働組合 
命令年月日  平成11年 7月21日 
命令区分  全部変更(初審命令を全部取消し) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)組合の商大分会が平成3年11月19日及び同月20日に行ったストライキを理由に、分会の、組合員に対し時間外労働を指示しなかったこと、(2)分会及び職員組合が同4年5月2日に行ったストライキを理由に、両組合員に対し時間外労働を指示しなかったことが争われた事件で、大阪地労委は、(1)分会の組合員に対し、同3年11月20日から同4年2月25日まで及び同年5月3日から同月26日までについて、同人らが時間外労働の指示を受けたならば得たであろう時間外労働手当額(年5分加算)の支払い、(2)職員組合の組合員に対し、同月2日から同月26日までについて、同人らが時間外労働の指示を受けたならば得たであろう時間外労働手当相当額(年5分加算)の支払い、(3)文書掲示を命じた。会社及び組合はこれを不服としてそれぞれ再審査を申し立てたが、中労委は初審命令を変更し、各再審査申立てを棄却した。 
命令主文  I 初審命令主文を次のとおり変更する。
 1 株式会社八戸ノ里ドライビングスクールは、全国一般労働組合大阪府本部・
大阪自動車教習所労働組合商大分会の組合員に対し、別表1に掲げる金額、また、
元商大八戸ノ里ドライビングスクール職員組合の組合員に対し、別表2に掲げる
金額及びこれらに平成6年4月1日から支払いに至るまで年率5分を乗じた金額
を支払わなければならない。
 2 株式会社八戸ノ里ドライビングスクールは、本命令交付後、全国一般労働
組合大阪府本部・大阪自動車教習所労働組合に対し、下記の文書を速やかに交付
しなければならない。
                 記
                        平成  年  月  日
全国一般労働組合大阪府本部・大阪自動車教習所労働組合
  執行委員長    X1      殿
                 株式会社八戸ノ里ドライビングスクール
                  代表取締役     Y1
 当社が、(1)全国一般労働組合大阪府本部・大阪自動車教習所労働組合商大
分会の組合員に対し、平成3年11月20日から同4年2月25日まで及び同年
5月3日から同月26日までの時間外労働の指示において差別して取り扱ったこ
と、(2)元商大八戸ノ里ドライビングスクール職員組合の組合員に対し、平成
4年5月2日から同月26日までの時間外労働の指示において差別して取り扱っ
たことは、中央労働委員会において労働組合法第七条第三号に該当する不当労働
行為であると認められましたので、今後このような行為を繰り返さないようにい
たします。
 3 全国一般労働組合大阪府本部・大阪自動車教習所労働組合のその余の救済
申立てを棄却する。
II その余の本件各再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  0417 法令・協約・信義則違反
対面教習の同乗観察の実施に当たっての細目については会社と分会との間では未だ合意には達していなかったものと見るのが相当であり、すでに労使間に合意が成立したといえる範囲を超えて、対面教習の同乗観察実施に関する部分についてまでも、本件協定の締結によって平和義務が生じたこととなるとはいえないとされた例。

0417 法令・協約・信義則違反
会社の両組合への対応は著しく均衡を欠くものであるから、分会がこのような会社の対応に抗議しストライキを行ったことについて会社がこれを団交を経ないストライキとして非難することは当を得ないものとされた例。

0417 法令・協約・信義則違反
分会の実施直前のスト通告及び職組の前日の夕刻になされたスト通告は、会社の業務に相当の影響を与えており、予約制度により技能教習を実施している会社の業務形態からすれば、この当時会社と分会及び職組との間に争議予告に関する労働協約は締結されていなかったとしても、労使関係の信義則上問題のあるところであるとされた例。

2901 組合無視
3102 争議対抗手段
本件時間外労働の不指示は、分会員及び職組員に相当の経済的打撃を与える結果となること、また、分会員及び職組員を非組合員と差別的に取り扱うものであり、会社が本件ストの対抗措置をとるに至った経過その他諸般の事情を考慮すると、争議対抗手段としては相当性の程度を超えるものとされた例。

2901 組合無視
3102 争議対抗手段
会社が本件ストに対抗して分会員及び職組員の時間外労働の指示において差別して取り扱ったことは、分会及び職組の本件ストに対する対抗措置としては行き過ぎであり、分会員及び職組員に経済的打撃を与えることにより分会及び職組の弱体化を図ったものであるといわざるを得ず、これを労働組合法第七条第三号に該当する不当労働行為であるとした初審判断が維持された例。

2901 組合無視
3103 労働協約締結をめぐる行為
会社は三六協定失効中の期間、非組合員を含む全従業員に対し時間外労働を指示していないのであるから、分会員及び職組員をことさら差別的に取り扱ったものであるとはいえず、さらに、三六協定が締結されていないのに従業員に時間外労働を指示することは労働基準法第三十六条に違反するものであることもまた明らかであるから、三六協定失効中の期間の時間外労働不指示については不当労働行為とは認められないとされた例。

4407 バックペイの支払い方法
組合は初審命令が組合の主張する時間外労働手当単価を認めなかったことは不当であると主張するが、初審命令の時間外労働手当単価の算定方法を覆すに足る疎明はないので、組合の主張は採用できないとされた例。

4407 バックペイの支払い方法
会社の作成した年間カレンダーでは、時間外労働は、1日の所定労働時間を超えて勤務した場合のほかに休日労働を含むこととされており、また、会社と職組との間で締結された三六協定においても、所定労働時間を延長されることができる時間のほかに、必要があれば休日労働を指示することができる旨定められていることからすれば、分会員及び職組員の時間外労働実績には1か月50時間及び3か月150時間を超えるものを含むこととするのが相当であるとされた例。

4408 バックペイが認められなかった例
4603 その他
4612 P.Nに替えて他の措置を命じた例
(1)分会員及び職組員が時間外労働の指示において差別して取り扱われなければ得たであろう時間外労働手当相当額の金額、(2)分会及び職組の実施直前のスト通告は労使関係の信義則上問題があること、(3)今後の正常な労使関係秩序の形成を図る必要があることを総合的に考慮すると、分会員及び職組員に対し、上記(1)の金額の半額に相当する額を支払うこと及び文書手交を命ずることが相当であるとされた例。

5123 審査中の組合脱退・退職等の取扱い
「請求取下書」を提出している職組員の一部の者は、職組ないしは組合を通じて本件の救済を受けることを放棄する旨の積極的な意思表示をしていることは明らかであるから本件救済対象者に含むこととするのが相当であるが、既に退職している分会員の一部の者は、組合を通じて本件の救済を受けることを放棄する旨の特段の意思表示をしていないのであるから、本件救済対象者に含むこととするのが相当であるとされた例。

4838 申立ての承継
本件初審申立人である職組は組合との組織統一を決議して解散しているが、組合は、職組と組合の組織統一により職組員は組合員となったため、職組の本件救済申立てについては組合が承継する旨の上申書を提出しており、職組の本件救済申立てについては組合が承継したものとみるのが相当であるとされた例。

業種・規模  教育(自動車教習所を含む) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集114集604頁 
評釈等情報  中央労働時報 1999年11月 959号 16頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地労委 平成 4年(不)第34号 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  平成 6年 3月31日 決定 
 
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