労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本石油化学 
事件番号  中労委平成 9年(不再)第23号 
再審査申立人  日本石油化学株式会社 
再審査被申立人  X1 ほか3名 
命令年月日  平成11年11月17日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  会社が、労使協調的な方針を取る組合執行部を批判して、独自の組合活動を行った組合員4名に対し、基本給昇給、賞与等及び昇進について差別的な取扱いを行ったことが、それぞれ不当労働行為であるとして争われた事件で、神奈川地労委は、組合員4名の平成5年以降の基本給昇給、賞与等の是正及びバックペイ、組合員4名の平成5年以降の役職の是正、文書掲示を命じ、その余の申立てについては棄却した。
 会社はこれを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令の一部を変更したほかはその余の再審査申立てを棄却した。 
命令主文  I 初審命令主文を次のとおり変更する。
 1 初審命令主文第一項中「平成5年3月21日に遡って、それ以降」を「平成5年度」に、「モデル賃金」を「平成5年度のモデル賃金」に、「是正し」を「昇給させ」に改め、「同日から」を削る。
 2 初審命令主文第二項中「平成5年5月21日以降」を「平成5年度の昇進について」に、「係長又は係長相当職の職」を「係長相当職」に、「班長又は班長相当職の職」を「班長相当職」に改める。
 3 初審命令主文第三項中「の是正」を「の昇給及び昇進」に、「平成5年度前期賞与以降の賞与」を「平成5年度前期賞与」に改める。
 4 初審命令主文第四項中「第一項及び第二項の是正に伴う付加給、役付手当その他の賃金における差額に相当する金額」を「第一項の基本給昇給に伴う平成5年度の付加給及び勤務地手当並びに第二項の昇進に伴う平成5年度の役付手当について、既支給額との差額に相当する金額」に改める。
 5 初審命令主文第五項中「賃金、賞与及び昇進」を「平成5年度の基本給、付加給、勤務地手当及び前期賞与並びに同年度の昇進及び役付手当」に、「神奈川県地方労働委員会」を「中央労働委員会」に改める。
 6 初審命令主文第六項の末尾に次の段落を加える。
 但し、昭和59年度ないし平成4年度に、会社が行った基本給の昇給査定とそれに伴う基本給、付加給、勤務地手当の低額支給及び賞与の査定とその低額支給並びに昇進及び役付手当不支給に係る救済申立てについては、これを却下する。
II その余の本件再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  5200 除斥期間
5201 継続する行為
賃金決定行為とこれに基づく賃金の支払いとは、一体として一個の不当労働行為を構成するというべきであり、同決定行為とこれに基づく賃金が支払われている限り不当労働行為は継続することになるから、会社の平成5年度基本昇給査定により決定された同年度基本給について、その最後の賃金支払日である同6年3月25日より1年以内の同年12月22日になされた救済申立ては、労組法二七条二項の申立て期間内になされているので、審査の対象となるとされた例。

5200 除斥期間
平成5年度前期賞与について、同年9月20日現在の基本給、付加給を計算の基礎としているため、同年度基本給が反映されていること、また、同年度基本給の最後の支払日から1年以内に申立てがなされていることから、同賞与に係る救済申立ては審査の対象となるとされた例。

5200 除斥期間
5201 継続する行為
昇進決定行為とこれに基づく格付けとは、一体として一個の不当労働行為を構成するというべきであり、平成5年度の昇進について、同年5月21日付けで行われた昇進決定行為は、平成6年度の昇進決定行為に基づく格付けの最初の日の前日の同6年5月20日まで継続することになるから、同日から1年以内の同年12月22日になされた本件昇進に係る救済申立てについては、労組法二七条二項の申立て期間内になされているので、審査の対象となるとされた例。

5200 除斥期間
昭和59年度ないし平成4年度の各年度の基本給昇給決定行為とそれに基づく基本給等及び賞与の支給並びに昭和59年度ないし平成4年度における各年度の昇進決定及びこれに伴う役付手当に係る救済申立ては、いずれも労組法二七条二項に定める救済申立期間内になされたものでないので、同法27条二項、労働委員会規則三四条一項三号及び五六条一項の規定により、却下するのが相当であるとされた例。

1200 降格・不昇格
1201 支払い遅延・給付差別
組合員X1らが行った「はんどる」の発行、支部執行委員選挙への立候補などの活動は、労働組合の正式な機関決定に基づくものではないが、労働組合の運営に関し組合員として意見を表明するとともに、役員として活動するべく立候補したものであるから、組合員が行う正当な行為を評価されるものであるところ、会社は、X1らの活動について、会社の施策と対立するX1ら独自の組合活動として嫌悪し、X1らに対し、基本給等、昇進及び賞与において不利益な取扱いをなしたものであり、同時に労働組合内部の活動に対して支配介入を行ったものであって、このことを労組法第七条一号及び三号に該当する不当労働行為であるとした初審命令は相当であるとされた例。

4415 賃金是正を命じた例
4421 文書掲示等を命じた例
組合員X1らに対する平成5年度の基本給昇給査定及びそれに伴う基本給等及び賞与の査定・低額支給並びに同年度昇進及びそれに伴う役付手当の不支給が不当労働行為と認定されるのであるから、その救済措置としては、同年度の基本給等、同前期賞与、同昇進及び役付手当について是正させることが適当であり、平成6年度以降の賃金等の決定においても会社はこのような不当労働行為を行ってはならないことはいうまでもないところであるが、このことについては、文書掲示において、会社が明らかにすることが適当であるとされた例。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
賃金上の不利益取扱いについては、救済対象となる期間において、会社による不利益取扱いの事実が認められ、かつ、現に存する差別について救済を求めているときには、その差別の是正を命じることは、労組法二七条二項に何ら抵触するものではなく、X1らは、同人らの基本給昇給について現に存する差別について救済を求めていると認められるのであるから、平成5年度基本給をモデル賃金額に是正することを命じた初審命令は相当であるとされた例。

業種・規模   
掲載文献  不当労働行為事件命令集115集895頁 
評釈等情報  中央労働時報 2000年2月 962号 35頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川地労委平成 6年(不)第13号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 9年 6月10日 決定 
東京地裁平成12年(行ウ)第11号 請求の棄却  平成14年 9月26日 判決 
 
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